キム・ギドク、復活!カンヌ、ベルリン、ヴェネチアと世界三大映画祭の全てを制した鬼才が、長きにわたる沈黙を破って発表した傑作ドキュメンタリー、待望のDVDリリース!!
1996年、『鰐』でキム・ギドクは映画監督としての第一歩を踏み出す。以降、『魚と寝る女』などへの高評価をきっかけに世界的な名声を手に入れてからも、ほぼ1年に1作以上のペースで作品を撮り続けてきた。しかし、オダギリジョーを主演に迎えた話題作『悲夢』を最後に表舞台から姿を消してしまう。沈黙の3年―彼は山小屋で一匹の猫と隠遁生活を送っていた。本作は、その最中にキム・ギドク自身によって撮影されて
いたドキュメンタリー映画である。
撮影中の不幸な事故、仲間の裏切り、自作への韓国国内での評価の低さ、くすぶり続ける劣等感。栄光の影で人知れず傷を深めていった男の葛藤と悲痛な胸の内が、カメラに向かって語られる。しかし、本作は一映画監督の心情の吐露のみに終始しない。第二、第三のギドク、そして“影”までもが現れ、語り、ユーモラスに、サスペンスフルに展開していく物語は、“ドキュメンタリー”というジャンルを越えた、映画史上類を見ないエンタテインメントへと昇華していく。
世界中が待ち焦がれていた異端児の復帰作『アリラン』は、2011年のカンヌ国際映画祭〈ある視点〉部門で最優秀作品賞を受賞。根強いファンの多い日本でも、同年に開催された東京フィルメックスで観客賞に輝いている。『アリラン』というタイトルは、“自らを悟る”という意味を持つ朝鮮の代表的な民謡から取られた。坂道を上っては下る…人の生の在り様を表しているかのようなこの歌を、ギドクは作中で何度も口にする。その旋律と歌詞は監督自身の栄光と挫折だけではなく、それぞれの道の途上で困難を経験する私たち自身の人生を象徴しているかのように響いてくる。カンヌ国際映画祭の授賞式、登壇したキム・ギドクは「アリラン」を熱唱。会場は鳴り止まないスタンディングオベーションに包まれた。