全国の中小企業社長に直接Zoomでオンライン営業を行い驚異の売り上げを叩き出している営業マンがいる。3月25日発売の「30分の面談だけで売上140%達成!社長ダイレクトZoom営業」(ぱる出版)の著者・峯村昌志氏だ。日経メディアプロモーション株式会社(東京都千代田区)のセールスユニット次長兼セミナー講師で現役バリバリのトップセールスマンに、新型コロナウイルスの影響で対面営業ができなくなった窮地からWeb会議ツール「Zoom」を使った「社長ダイレクト営業」で起死回生を果たしたノウハウを聞いた。

──日経メディアプロモーションでは全国の営業社員中、2017、19、20年の新規開拓数全国 1 位、21年の研修セールス全国 1位だとか。本書を執筆された峯村さんの経歴をお聞かせください

峯村昌志氏(以下=峯村氏):私は大学卒業後、広告代理店・東急エージェンシーに長く勤め、いくつかの広告会社や広告メディア会社を経験したのち会社経営もやったことがあります。7年ほどで失敗しているのですけども(笑)。それまで一貫して対面営業を行っていました。現在、日経メディアプロモーションで社員研修商品のセールスを行っております。同社の営業パーソンは200人ほどいて、それぞれ担当企業があるわけです。入社当時の私には入るスキがなかったので、営業先を中小企業の社長に特化しようと思って全国に出張して社長に直談判して仕事決めるという営業で徐々に成果も出していました。ところが、2020年初頭にコロナ禍になってしまって(汗)。あれは青くなりましたね。対面営業ができなければどうしようもなくて、半年近くは毎日パソコン開いてメールを眺めたりウェブを眺めていました。

──営業職にとってコロナ禍は死活問題だった

峯村氏:どうしようかなと悩んでいた時に、それまで知らなかったオンライン会議ツール「Zoom」にたどり着きまして、「これを突破口にできないかな」と半年ほど試行錯誤し、やっと自分なりのやり方、営業メソッドができあがったのです。それが、まさに本書の内容です。

──Zoomを使った社長ダイレクト営業が誕生したと

峯村氏:会わなくても新規開拓とクロージング(商談を契約に結びつける最終段階)がZoomで社長相手にできると!しかし、普通オンライン会議に出てくるのは社長ではなく担当者レベル、せいぜい役員クラスなのです。社長に直接テレアポを取って時間とってもらってZoomですべて完結するという営業は、いわゆる「非常識」な、ありえない世界だと言われました。その常識を覆したいなと思っています。

──オンライン営業の極意というものは?

峯村氏:相手が社長だと、こちらがへりくだったり、恐縮して対応するのが常識だとすると、私は全く逆で、最初から対等な関係で堂々と対応します。若い方もぜひやってほしいのですが、社長でも堂々と立ち向かってZoomを「自分の劇場」のように使えば(商談は)決まるときは決まるものです。あえて言うと、リアルで会うよりもZoomの方が決まりやすい側面もあります。テレアポさえ突破してZoomで社長と向き合えれば、契約できる確率は対面するよりも高いのかなと思っています。

──社長ダイレクト営業のノウハウとは?

峯村氏:テレアポの段階で、どういう内容の話をするか匂わせておきます。「社長、〇〇についてなんですが、どうですか?」と、ひとことふたことです。そこで社長に峯村の話を聴きたいと思わせるわけです。そうすればZoomでは向こうは聴く気満々なわけですよ、何を話してくれるのだろうと。そこからはアイスブレイク(雑談)一切なしでドンとぶつけるわけです。

──本書にはZoom営業の「虎の巻」が書かれている?

峯村氏:事前準備の心構えだったりZoomの進め方だったり営業トークの進め方も執筆しました。また、社長と長いお付き合いをするうえでの関係構築法も余すところなく書きました。リモート営業の書籍は結構ありますよね。それらのほとんどが実務担当者レベルを相手にする本です。「社長のみ」に絞ったZoomダイレクト営業というのは新しいと思うのです。あくまで私の商談相手は社長なので、たとえば常務とか専務から話をしたいと言われても基本的にはお断りします。時間のムダなので(笑)。

──あくまでも社長が持つ裁量権にこだわる?

峯村氏:やっぱり(中小企業だと)専務や常務には裁量権がありません。結局、社長に連絡するだけなってしまいます。社長じゃないと決まらないのですよね。

──社長ダイレクト営業の経験から「これは伸びるな」と思える会社はありますか?

峯村氏:その判断は難しいですね(笑)。ただ、(最初にかける)電話の応対ひとつで、この会社がどうなのかは、だいたい分かります。電話の応対は、もう十人十色、百社百通りです。私のように外線で「社長に代わってくれ」なんて言う人はいないわけですよ(笑)。当然、向こうは退いてしまいますよね。その時に、おざなりに対応してしまう会社は、マズイのではないかなと捉えざるを得ないですよね。

──逆に言うと、本書は営業パーソンだけでなく社長にも読んでもらいたい?

峯村氏:そう意識して執筆しました。社長にも手に取ってほしいと思います。社長が普段分からない社員の様子を「こういう電話応対をしていることもあるのですよ。大丈夫?」という意味合いも込めています。電話の応対ひとつも非常に大事だということを社長に再認識してほしいですね。「こんな対応をしているのか」って。絶対知らないはずですよ(笑)。

──これまで会った社長のなかで「神対応」受けた経験は?

峯村氏:できる社長は、どこの会社で何の案件なのかを聞かないものです! 電話に出ると「いつがいいですか?」と、私の会社名も聞かずセールスの目的も聞かない「器の大きな社長」もいます。会いたいと言ってくれる人には門戸開けて待っている社長はけっこういて、とてもリスペクトします。そういう社長は、ど真ん中で営業して「いいな」と思ってくれたら契約してくれます。

──社長ダイレクト営業経験を踏まえて、峯村さんは社長時代の対応はどうでしたか?

峯村氏:もう思い出したくもないですね(笑)。それこそ営業電話の対応は今思えばお恥ずかしい限りです。白状すると「どこの会社、何の営業ですか」とか「何の用件ですか」「私じゃなきゃダメですか」と言っていましたね(汗)。社長時代の失敗があるので、いい意味でも悪い意味でも「社長の気持ち」「社長のつらさ」が分かります。社長が何を知りたいか、セールスでどういったものに興味を持つか、どういったところがポイントになるかは少なくとも分かっているつもりです。社長が商品を選ぶ基準はそれが「社員の成長」「会社の未来」にどう寄与するかというところだと思います。

──本書のキャッチフレーズは「社長ダイレクト営業による初めてのオンライン面談!30分だけで新規開拓とクロージングができる」ですが、短時間で契約につなげるのもユニークだ

峯村氏:30分のうち15分から20分が商品説明で、残りの10分は質疑応答です。その時間で商品説明を終わらせることができないと、社長は基本的にせっかちなので(笑)、途中で飽きてしまったら終わりです。20分で説明を終わるようにしなければ商品は売れないと思っています。無駄なところは全部そぎ落として20分間で社長が興味を持つポイントを押さえるのが大事です。Zoomで60分面談なんて社長はピンとこない。なので、Zoom面談が始まったら天気の話やゴルフの話は絶対にしません(笑)。ムダな会話はご法度です!

──最後に、こんな人に読んでもらいたいというのは?

峯村氏:先ほど社長に読んでもらいたいとも話しましたが、何よりもオンライン営業が苦手だと思っている営業パーソンに対して執筆しました。Zoomで社長ダイレクト営業なんて常識的にありえない、営業は対面が基本だと考えている人に、そうじゃない方法も厳然としてあるのだということを伝えたいですね。