先週、私が韓国の銀行窓口で言われた言い回しについて違和感を覚え、
これから観察していこうと思うと申し上げましたが、今井久美雄先生が、
韓国に住む韓国人のご友人に尋ねてくださいました。
今井先生ありがとうございます。そのご友人は国文専攻だそうで、
非常にためになるご回答をくださいました。ぜひ皆さまにもご紹介させていただきます。

まず、今井先生がご友人に以下のような質問をされました。
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知り合いが韓国の銀行で手続きをしようとしたところ窓口担当が次のように
言ったそうです。

1.비밀번호를 누를게요.

2.비밀번호를 누르시겠습니다.

3.비밀번호를 누르시는 겁니다 .

1.は窓口担当が言った言葉としては違和感を感じるのですが,いかがでしょうか。

2.の 비밀번호를 누르시겠습니다. は 비밀번호를 누르세요.
と言っているのではないでしょうか。

3.は,相手がどうやっていいか分からないのをみて
「暗証番号を押すのですよ!」と言っているように聞こえますが。
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こちらについてのご友人の回答は以下です。(例文以外はすべて幡野が
日本語に訳しています)

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ご質問の内容は、最近韓国でも問題になっている言語現象です。
まず、2,3の意味は、おっしゃるとおりです。

「-시겠습니다」は、式を進行するときなど、司会者が次の式次第を説明
する際よく使われる表現です。すなわち次の順序を知らせるということですね。
こちらは未来の表現として地下鉄で使われる、「열차가 곧 도착하겠습니다.
(列車がまもなく到着致します)」に似た表現だとお考えになられると良いでしょう。

実際のところ、「-ㄹ게요 」は話者の意思や約束事を表す表現で、他者に何かの
行動を依頼するときは使うことができない表現です。主語を高める「-시-」は、
「-ㄹ게요」に付けることができないというのが原則です。

しかし、「-으세요」「-어 주세요」が位置づけとしては命令形であるという理由
で、顧客に最大限の敬意を払わなければならない百貨店や美容室では
使うことに抵抗があるようなのです。

例えば、美容院でシャンプーをするため移動しないといけないとき、
実際は「이쪽으로 오시겠어요 ?(こちらにいらしていただけますか?)」
くらいで十分だと思うのですが、最近は「손님, 이쪽으로 오실게요」
(お客様、こちらにお越しになられます)」と表現することが多いのです。

「-ㄹ게요 」が主語に対し、最大限負担を感じさせない表現だと思っての
ことでしょうか?

文法的にはおかしい表現ではありますが、あまりにもたくさん使われるので
お笑い番組などで流行語のように使われたりもします。単に、親切心が
行き過ぎたことにより引き起こされた、非文法的な表現だとお考え
いただければと思います。
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と、あまりにも欲しい答えがいただけました。先週、「(~セヨ、~ジュセヨなどの
表現は)「命令口調」として接客業では避ける傾向が生じているのでしょうか」
と仮定しましたが、その仮説を裏付けしていただけた気がし、嬉しく思います。

実はこのご友人からのメールは続きがありますが、それは私が、
先週に引き続き続編を書こうと思っていた部分とリンクしますので、
また来週ご紹介させていただきます。お楽しみに!



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