記者会見に出席したキム・ギドク監督(中央)=11日、ソウル(聯合ニュース)
記者会見に出席したキム・ギドク監督(中央)=11日、ソウル(聯合ニュース)
「受賞の瞬間、重い荷物を背負って行き来していた15歳の自分の姿が思い出された」――。「第69回ベネチア国際映画祭」でコンペティション部門最高賞の金獅子賞を受賞したキム・ギドク監督が11日、ソウル市内で開かれた記者会見で、受賞の瞬間の感想を語った。
 
 受賞作の「ピエタ」は、貧しさから進学を諦めたキム監督が15歳から働いていた、当時工場などが密集していたソウルの清渓川を背景にしている。韓国人の監督として初めて同賞を受賞した輝かしし瞬間に、人生で最も悲しかった瞬間が思い浮かんだという。
 
 キム監督は現地の雰囲気について、「メディア向け試写会で10分間スタンディングオベーションが続き、(映画祭)ディレクターのアルベルト・バルベラ氏がこんなことは初めてだと話していて、妙な気分だった」と振り返った。受賞作発表前に現地や韓国メディアでの評価が高く、受賞を予想する声が多かったため、「こんなに持ち上げられて落とされたら本当に痛いだろう」と考えていたと当時の心境を明かした。
 
 韓国内で「ピエタ」を上映する映画館が少ない状況については、「これを機に韓国でも良い反応があればうれしい」と話し、大作に集中するシネマコンプレックス(複合型映画館)の弊害を指摘した。また、現在観客動員1000万人を突破した韓国映画「泥棒たち」(原題)について苦言を呈し、「無数の平凡と独占、無数のマーケティングと不利なゲームの中では、私がいくら善良でも怒りがこみ上げる」と批判した。
 
 また、話題となっている独特なファッションについても語った。今日の服装について「上は150万ウォン(約10万円)、下は60万ウォン」と明かし、時間がない中で服を買いにいき、10万~20万ウォンくらいだろうと見当をつけた服が150万だったとのエピソードを話した。財閥の夫人らがこれよりも高い服を着てディナーに出かけるのに比べ、「私は1年間来て歩くのだから許されるのではないか」と述べた。
 
 大企業から投資の提案があったら受けるかとの質問には、米国や中国の富豪も投資を提案してきたと明かした上で、制作費に見合った価値を返さなければならないと考えており、「いつかそのような責任がとれるようになったらすること」と否定的に答えた。
 
 低予算での映画制作については「最も重要なのはシナリオと作家の世界観」と述べた。ただ、自分の映画は大企業の資金やシネマコンプレックスとも無関係でありながら成功したという点で、「『ピエタ』がこのような(成功)モデルになれば良い」と語った。
 
 「『ピエタ』は美味しく食べた食事が消化された排泄物だと考えている」と語るキム監督は、排泄物が肥やしになり、また別のものを育てるように同作が影響を与えていくことを期待した。今後はシナリオ執筆に専念する。

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