半世紀の間、韓国映画と共に生きてきたイム監督が102作目となる作品「ファジャン」のメガホンを取る。イム監督は4日、釜山で開かれた「ファジャン」の製作報告会で楽しみな気持ちと、難しいと思う気持ちが交差すると話した。
「ファジャン」は化粧と火葬(ともに韓国語でファジャン)の二つの素材を扱った金薫(キム・フン)の同名の小説が土台になっている。社会的に成功した50代半ばの中年男性の、脳腫瘍を患う妻と有能な女子社員の間で揺れる心理を描く。
「金薫先生の文章があたえる途方もない力、迫力、それを映像で表現する作業はやりがいがあると考えました。ですが同時にその力や迫力、主人公の心理を映画で表現するのは難しいとも考えました」
原作者として製作報告会に参加した金薫は「主人公は世俗的な日常に埋没し堕落した人間です。組織では有能だと認められますが、落ちるに任せて堕落しました。韓国社会の典型的な人物で、私たちの周りにはこのような人が多くいます。ですが純粋な美を求めていて、美しさを知れば知るほど不幸になっていく複雑な性格を持っています」と紹介した。
そして小説の映像化について「女性の華やかで美しい生命を描写しようという気持ちで始めました。人間の生老病死は独立しているのではなく、一つの塊になること。また美しさに対する渇望が生老病死とともに展開する状況を描こうとしました。結局、『ファジャン』は目に見えるものより、目に見えないものが重要な小説です。この見えないものをどうのように見せるかが映像化の鍵だと考えます」と語った。
原作者の言葉に対しイム監督は「女に向けた主人公の心の移ろい、心に浮かぶ像、これらを映像化できれば私が今まで撮った映画とは違う映画になると思いました。小説が持つ途方もない力を映像で表わさなければなりませんが、主人公の心の流れを繊細にたどっていき、感情を引き出したいです。普段暮らしていて見せるのが恥ずかしくて、隠していたいそのような気持ちを映像に収めることができれば、映画的な成果も大きいだろうと考えました。失敗すればののしられ、うまくできれば称賛されると思いますが、がんばってみます」と答えて笑顔をみせた。
主人公はイム監督の作品に多数出演しているアン・ソンギが演じる。アン・ソンギは「原作は文学賞を受賞した当時(2004年)に読みました。その時この作品を映像にするのは難しいが、映像化してほしいと考えました。主人公の年齢が私と近くて、私が主人公を演じることができればといい想像しました。その想像が現実になって胸がいっぱいです」と話した。
「ファジャン」は現在シナリオを制作中で、今年中にキャスティングを終えて撮影に入り、来年3月には完成する予定だ。
イム監督と原作者の話を合わせると「ファジャン」は主人公の心に沿っていく作品になりそうだ。それでは102作目の映画を撮る巨匠の心にはどのような像が映っているのだろうか。
「映画には生きてきた歳月の経験が映像に現れるようです。『ファジャン』は年齢にふさわしい映画を撮ることができると教えてくれる作品だと思います。若かった時の瞬発力や勢いはありませんが、生きていくことに対する思慮深さは描くことができます。私にとって102作目の映画というのは、そんなことを示すことができる映画を作るという意味です」
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