ペ・ヨンジュン(提供:OSEN)
ペ・ヨンジュン(提供:OSEN)
「愛の挨拶」で一躍人気俳優となったペ・ヨンジュン。次の出演作に注目が集まったが、意外にも釜山(プサン)放送の開局記念として企画された単発ドラマの「海風」に出演した。このドラマでペ・ヨンジュンは、交通事故を起こして釜山に逃げ出した世間知らずの大学生を演じた。

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■大会社の御曹司を演じる
 ドラマ「海風」では、主人公が市場で働く人たちの生活力に影響されて少しずつ自立していく様子が描かれるのだが、ペ・ヨンジュンは年齢的にも雰囲気的にも等身大の青春像を演じることができた。

 まだまだ演技の経験は不足していたが、物思いにふける場面ではハッとするほど真摯な表情を見せて、彼なりの成長を示していた。

 単発ドラマの出演を終えて、いよいよ連続ドラマの二作目に注目が集まった。その中で発表されたのが、若者たちの野望と友情を赤裸々に描いた「若者のひなた」だった。

 このドラマの中でペ・ヨンジュンは、大会社の御曹司で、映画制作への夢を捨てきれない若者に扮した。

 御曹司というと、韓国ドラマの主役設定の定番だが、ペ・ヨンジュンは連続ドラマの二作目で早くも演じることなった。

 以後は貧しい生活の中で育った青年を演じることが多かったから、「若者のひなた」で扮したキャラクターは今から考えれば随分と異質に思える。それほど、ペ・ヨンジュンの役柄には多様性があるということだ。

 とはいえ、「若者のひなた」に出演した当時のペ・ヨンジュンは大変だった。緊張して夜も眠れない日をどれほど重ねたことだろうか。

■映画への情熱
 デビュー作は話題性で引っ張れる部分もあるし、周囲も一応は温かい目で見てくれる。しかし、二作目以降はそういうわけにはいかない。主役を演じる適性があるかどうかが厳しく問われるのである。

 しかも、「若者のひなた」はストーリーが複雑で、感情表現が難しい場面が多かった。まさに主役としての真価が問われるドラマだった。

 ペ・ヨンジュンも率直に告白する。「デビュー作の『愛の挨拶』は私を含めて主演クラスが新人ばかりでした。けれど、「若者のひなた」は状況がまったく異なっていました。新人クラスは私一人で、共演者のほとんどは熟練した演技力をもつ先輩たちでした。プレッシャーを感じないはずがありません。私がダメだと、その余波が先輩たちにまで及んでしまうんです。最初から緊張の連続でした」。

 プレッシャーの固まりだったペ・ヨンジュンを救ってくれたのが、共演のイ・ジョンウォンだった。彼が本当の兄のようになんでも面倒を見てくれた。

 演技のことはもちろん、社会人としても何から何まで教わった。そのおかげでペ・ヨンジュンは随分と救われた。

 また、彼が「若者のひなた」に出て有意義だったのは、映画の勉強に専念する若者の役だったことだ。

 「『若者のひなた』に出演中は、本当に映画の勉強ばかりしていました。特に、フランスの映画監督の話から学ぶことが多かったですね」。

 デビュー前には映画制作の現場を知りたくて映画会社でアルバイトした経験を持つペ・ヨンジュンは、このドラマを通してますます映画への情熱を高めたのである。

■映画会社からの出演要請
 後に「将来の夢は映画監督」と広言するようになったペ・ヨンジュン。彼が具体的に映画監督をめざすようになったのも、「若者のひなた」で演じた役が大きく影響しているのは間違いない。

 ペ・ヨンジュンもこう語っている。

 「ドラマで演技を磨いて歴史に残る映画俳優になるのは究極の夢です。けれど、俳優とともにいつかは映画の演出もしたいと考えています。『若者のひなた』で演じた映画監督のハ・ソクチュは、私の未来の姿であるかもしれません。演出の勉強をするために、大学に進学する計画も立てています。尊敬する映画監督は『タクシードライバー』のマーチン・スコセッシです」。

 この言葉からも、「若者のひなた」がペ・ヨンジュンに多くのものを残してくれた作品だったことがわかる。

 彼は連続ドラマの二作目でも高い評価を受けて、完全にスターダムに乗った。次にはどんな役に挑むのか。

 実は、早くもいくつかの映画会社から出演の要請を受けている。当時は映画がテレビドラマよりずっと格上と思われていたから、ペ・ヨンジュンの心も動かなかったわけではない。彼にとって魅力的な提案があったことも事実だった。

 けれど、ペ・ヨンジュンは最終的に申し出を断った。

 それは、なぜなのか。「迷いましたけれど、やっぱり、まだその時期ではないと思ったんです。今はテレビドラマの役柄を演じきることだけでも難しい状況ですから、映画に出るのは無理だと判断しました」。

■「パパ」で父親役に挑戦

 ペ・ヨンジュンは他の俳優以上に映画に特別な思い入れがあった。それだけに、もっとテレビドラマで演技を磨いてから映画に進出したいと考えた。人気だけを優先させて中途半端な状態で映画に出るのだけは避けたかったのだ。

 慎重なこの姿勢は大いに評価されていい。彼は常に一歩一歩大地を踏みしめながら、自分の行く道を決めていくタイプの人間なのである。

 映画への進出を見送ったペ・ヨンジュンが、次の連続ドラマに選んだのが、イ・ヨンエとの共演になった「パパ」だった。

 これは、完全にファンの意表をつく作品である。なにしろ、まだ23歳のペ・ヨンジュンが、離婚して子供を育てる役に扮することになった。10歳くらい上の俳優が演じるような役にペ・ヨンジュンは果敢に挑戦してみようと思った。このあたりの決断は、度胸がすわっていると言える。

このドラマが放送中だった1996年1月、「イルガンスポーツ」の紙面にペ・ヨンジュンのインタビュー記事が掲載されている。その中でペ・ヨンジュンは「パパ」の役柄について自らこう答えている。

 「離婚して娘を育てる大学の講師役です。『愛の挨拶』では大学一年生を演じましたし、『若者のひなた』では大学生から映画監督までを経験しました。今回は大学講師として出演するのですから、進級はかなり早いと思いますね」。

 演じる役の変化を「進級」と称するところがなんともおかしい。確かに、わずか2年で大学一年生から講師にまで変身しているのだから、その飛躍は驚くほど早い。いや、ちょっと早すぎたかもしれない……。

(次回に続く)

文=康 熙奉(カン ヒボン)
(ロコレ提供)

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