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石油は産業化の核心原料になるだけでなく、都市を支えるエネルギー源でもある。ソウルを維持するためには、どうしても大量の石油を溜めておくしかない。大きな石油備蓄タンクを建設する計画が始まった。
しかし、韓国は平和な日本と違う事情があった。ここから30kmほどの距離には朝鮮戦争の敵「北朝鮮」があるのだ。東京駅から横浜駅までぐらいの距離だ。いざという時には、在来式の砲弾が飛んできて引火性の高い石油タンクを直撃する可能性がある。しかも、この時代は韓国映画「シルミド」が描いているように、南北がお互いに相手の首脳を暗殺する特殊部隊を準備していた時代だった。
悩んでいたソウルは麻浦(マポ)の天然要塞を活用することとした。山の谷を削り、高さ15m、直径最大38mの巨大な円筒型のタンクが5つ建設された。そして、当時のソウル市民が1か月の間は使える量の石油を備蓄しはじめた。北からは山に絶妙に隠れたこの石油備蓄基地は、一般市民に対してはその存在すら知られないまま、韓国の産業化とソウルの都市化を陰で支えていた。
それから25年が過ぎた2002年、この施設も終わりを迎える。郊外だったこの地域に、日韓共催のワールドカップの競技場が建てられたからだ。6万人以上の人が集まるサッカーの競技場に隣接したこの施設は、大都市になったソウルではもういられなくなった。安全と安心を求める意見で、早速の閉鎖が決められたのだ。
その後、この施設はまたもソウル市民に忘れられ、寂しくソウルの成長を見守っているだけだった。
また10年が過ぎた。2013年、ソウル市は市民を対象にアイディアを公募する。この場所をこれからどのように活用するのか?「ダイナミック・コリア」のスローガンとおりの韓国。やはり答えは意外なものだった。「石油」の代わりに「文化」を備蓄しよう、とのことだった。
5つの巨大なタンクは解体され、その分厚に鉄板は新しい施設の外壁にリサイクルされる。公演場や展示室、カフェや会議室、講義室やコミュニティーセンターが作られた。過去を記憶するため、石油タンクの形をそのまま保つこの「文化備蓄基地」はこうして2017年、市民に開放される。
それから2年あまり、ここは既に有名な場所となった。ソウル市民が自ら選ぶ「ソウル新名所」の第2位となり、「防弾少年団」 (BTS)のファンが1万人余り集結して「ARMY UNITED in SEOUL」の行事が開かれたりもした。
この施設の事を聞いた時、頭によぎった疑問があった。「石油の備蓄」はよく分かった。しかし、「文化の備蓄」は何だろう?公演場が作られるだけで文化が備蓄できるのか?その疑問に対しては、予想より遥かに早いうち、答えが出てしまった。
ここを訪問したのは真夏の日。晴天の空からは強烈な太陽光線が注いでくる。風もあまり吹かないこの日の午後、石油を溜めていた巨大なタンクの跡地。少しの日陰に3人組の女性が汗をだくだくと垂らしながら舞台を行っていた。演劇なのか、ミュージカルなのか、良く分からない舞台だった。3人の女性の他にはスタッフも観客もいない。まさに「草の根」の舞台だ。
「時間割」が書いてあり、多分その時間が過ぎると次の若者が舞台を行うようだ。我々の一行が近づくと、3人の顔には薄い微笑みが浮かぶ。そうだ、韓国にはこの3人のように夢を求め、汗を流しながら自分を表現したい沢山の若者がいるのだ。大衆文化の華「芸能人」になれる保証はそもそもないし、成功の確率も宝くじのようなものなのに、才能のある若者がその夢を追い続ける。当然失敗もあるが、その沢山の失敗の経験を「備蓄」しながら、新たに生まれてくる文化は韓国の強みである。新たな文化が生まれるためには、試行錯誤を恐れず、青春を惜しまず夢に捧げる若者の汗の「供給」と「備蓄」が必要だからだ。
彼女たち3人の表情を見ながら、日本から韓国に渡りアジアや世界を目指している3人の日本人女性を思い出した。そう、「TWICE」の日本人メンバー3人のことだ。国境の壁も言葉の壁も恐れずに海を渡った勇気ある彼女たちは今、まさにアジアを越え、世界を目指している段階に来ている。そして、彼女たちに刺激を受けたかのようにもう3人の日本人女性がソウルをベースに活動している。「IZ*ONE」の日本人メンバー3人だ。
ソウルの旅は続く。
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