青瓦台(大統領府)で閣議を主宰する文大統領=20日、ソウル(聯合ニュース)
青瓦台(大統領府)で閣議を主宰する文大統領=20日、ソウル(聯合ニュース)
【ソウル聯合ニュース】韓国監査院が発表した2018年の月城原子力発電所1号機(慶尚北道・慶州)の早期閉鎖決定を巡る監査結果で、主要争点の一つだった同機の経済性について「過小評価された」との判断が示されたことで、文在寅(ムン・ジェイン)政権の脱原発政策の行方に関心が集まっている。  監査院は脱原発政策の推進過程に一部問題があったと判断したが、早期閉鎖の妥当性に対する判断は示さなかったため、脱原発政策の推進に及ぼす影響は限定的とみられる。 脱原発政策は文大統領が2012年と17年の大統領選で一貫して公約に掲げた産業分野政策の中核であり、これを修正するのは容易ではないというのが大方の見方だ。 文大統領は12年の大統領選で、原発に依存する電力生産を60年ごろから完全に脱却するとの計画を発表。月城原発1号機の寿命延長も当時の公約に含まれていた。17年の大統領選でも原発の新規建設を全面的に中止し、全ての原発の設計寿命が満了する40年後に「原発ゼロ」国家になると公言した。 12年の大統領選での敗退後、与党「共に民主党」の前身である「新政治民主連合」の所属時代にも、文大統領は党原発対策特別委員会の委員長を務めるなど脱原発政策推進のために活発に活動した。 一部では、文大統領が弁護士と国会議員時代に活動した南部・釜山の地域的特性を脱原発推進の背景に挙げている。 釜山と周辺地域には古里、新古里、月城原発が密集しており、日本の福島原発事故以降、安全性が問題視されている。文大統領は16年、世界で最も原発が密集する古里地域の半径30キロ以内に340万人が住んでいるとして、新たな原発の建設を阻止するべきだと強調した。  一方、文大統領の脱原発政策は単純にエネルギー政策にとどまらず、原発解体による電力の不足分を太陽光や海上風力などの再生可能エネルギーで代替する新産業の育成と、これによる雇用創出効果も狙っている。 文大統領は17年10月、国民の意見を取りまとめながら原発建設の是非を議論する「公論化委員会」が新古里原発5・6号機の建設再開を勧告した際にも脱原発の政策基調を引き続き推進するとの意志を表明した。 文大統領は公論化委員会の勧告を受け入れた上で「原発の新規建設計画を全面中止し、エネルギー需給の安定性が確認され次第設計寿命を延長し、稼働中の月城原発1号機を停止する」と述べた。 大統領選で公約した新古里原発5・6号機の建設中止は履行できなくとも、脱原発の基本精神は守るとの趣旨だ。 ただ、監査院は月城1号機の閉鎖決定の土台に問題があったと指摘しており、文大統領にとっては野党の反発などが負担になるとみられる。 脱原発政策に反対する市民団体なども、今回の監査結果は月城原発1号機閉鎖の決定的根拠である経済性評価を無効化するものだと主張し、政策の根本的な再検討を求めている。 最終的には監査結果に対する政治的・社会的波紋にどのように対処するかがもう一つの課題になりそうだ。
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