「競争に追われる90年代生まれは地位と感覚の『脱感覚世代』」=韓国(画像提供:wowkorea)
「競争に追われる90年代生まれは地位と感覚の『脱感覚世代』」=韓国(画像提供:wowkorea)
「90年代生まれの大きな特徴は、公的価値だけでなくプライベート的な価値の追求にも積極的でなくなったということだ」

韓国のイム・ミョンムク(27)作家が書いた本「Kを考える」は、90年代生まれを「脱価値世代」と定義する。子供の頃から親の影響で競争に追い立てられ、それによる圧迫とストレスをSNSやYouTubeなどで解消する「地位と感覚の世代」ということだ。

90年代生まれについての論議は多いが、肝心の90年代生まれの目線で、この世代を語る言説は不足している。ソウル大のアジア言語文明学部で西アジア、中東地域を専攻している大学生のイム作家の今回の本が目を引く理由だ。「90年代生まれは、大韓民国をこう見ている」という本の副題がキャッチ―である。

イム作家によると、90年代生まれはIMFと2008年米国発の金融危機を経験し、階級世襲の欲望を自然に持った親世代の影響を受け、早くから社会・経済的に遅れてはいけないというプレッシャーを感じて育った。さらにスマートフォンとSNSの普及により、他人と自分を比較して認められ、競争を繰り広げることが自然な世代となったとイム作家は説明する。

もちろん、このような競争は90年代生まれだけの問題ではない。韓国社会全般で、より高い地位を得るための競争が行われているのが現実だからだ。ただしイム作家は20代が感じる上位層になりたい欲と競争が過去よりも激しくなったと見ている。イム作家は「以前は与えられた通りに生きていればいつかは上位層になることができるという信念があったが、今では下位層が存在せねばならないという圧力と、SNSを介して感じる剥奪が共存している」と説明した。

イム作家が挙げる90年代生まれのもう一つの重要な特徴は、「脱価値世代」と呼ばれるものである。達成感を得られるという確信もなく競争に没頭するよりも、すぐに感じられる感覚的満足感を求め、社会運動のような大義を追求するよりも「一度きりの人生」や「小さな幸せ」を追求し、現実に安住しようとしているのだ。これは、90年代生まれが政治活動に無関心な理由ともつながる。イム作家は「80年代生まれが20代だった2000年代には、政治勢力が20代の悩みと欲望、願望をキャッチしようとする試みがあったが、今は全くそうではない」とし、現政治の問題を指摘した。

本は90年代生まれのほか、K防疫の裏に隠された自由主義の問題、文化多様性のための論議、チョ・グク事態に現れた386世代の問題、今の20代を作った入試制度を鋭く暴き、90年代生まれが感じる韓国社会について話をする。イム作家は「90年代生まれを理解するためには、彼らが何を見て楽しむのかをまず見て理解する試みが必要である」とし「この本が韓国社会に『こう考えてみてもいいのではないか』という1つの質問を投げかけることを願う」と述べた。
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