<W解説>韓国で警察局の設置方針をめぐり、警察幹部が猛反発=「警察署長の乱」と韓国メディア(画像提供:wowkorea)
<W解説>韓国で警察局の設置方針をめぐり、警察幹部が猛反発=「警察署長の乱」と韓国メディア(画像提供:wowkorea)
韓国政府が先月、行政安全部(部は省に相当)に設置する方針を示した「警察局」をめぐり、警察が反発を強めている。今月23日には全国の警察署長による会議が開かれ、今後の対応を協議した。韓国メディアは「警察署長の乱」などと伝えている。

イ・サンミン の最新ニュースまとめ

 行政安全部の諮問機関、警察制度改善諮問委員会は先月21日、検察からの捜査権移管により肥大した警察の権限を統制するために警察を指揮する組織を新設し、警察庁長に対する行政安全部長官の指揮規則を制定することなどを柱とする勧告案を発表した。勧告を受けて同部のイ・サンミン(李祥敏)長官は27日、記者会見を開き、警察を指揮するための「警察局」を新設することを発表した。

 警察局を新設する政府の方針は、ムン・ジェイン(文在寅)前政権で、文大統領が退任する直前に検察法と刑事訴訟法を改正し、検察の捜査権が大幅に縮小されたことを受け、政権交代後の現政権が警察への統制を強化するために打ち出したもの。同部内に警察を指揮する組織ができれば、同部の前身の内務部の治安本部が1991年に外局の警察庁として独立して以来、31年ぶりのこととなる。

 しかし、警察側は中立性や独立性が損なわれる恐れがあるとして設置に強く反発。先月末には警察トップのキム・チャンリョン(金昌龍)庁長が辞意を表明する事態にまで発展した。

 23日には全国の警察署長集まって会議を開いた。オンラインでの参加を含め、日本の警視正に相当する「総警」クラスの警察幹部190人が出席。警察局の新設は「歴史的退行」だとした。また、行政安全部長官の警察庁長に対する指揮規則の制定について、「警察の中立性が揺らぎかねず、不適切だ」と指摘。その上で、「行政安全部の決定は国民の安全に大きな影響を及ぼすものであるにも関わらず、国民や現場の警察官の意見を聞く手続きが不十分だった」とし、政府に対し、法令制定を見合わせるよう求めた。

 総警は主に警察署長を務める階級で、13万人近い警察官を指揮する役割を担うため「警察の華」とも呼ばれている。全国から総警が集まって会議を開くのは今回が初めてで、韓国紙のハンギョレ新聞は「人事・昇進に敏感な警察組織で、警察高位職へ向かう出発点にいる総警クラスの集団行動がこれほどの規模になると予想した人は警察内でも多くなかった」と伝えている。会議に出席した総警の一人は同紙の取材に「この無力感をどうすればいいかと考えていたところ、警察署長会議の提案があり、これに共感した多くの総警がオンラインとオフラインで出席することになった」と話した。

 また、同紙は「警察署長らの反発の導火線になったのは、警察局をめぐる議論に決着をつける代わりに報酬引き上げなど処遇の改善を強調したユン・ヒグン警察庁長官候補の18日の発言だった」と指摘。記事によると、この発言直後、不快感を抱いた総警たちはグループチャットを立ち上げ、数日間で500人近くが集まったという。

 一方、警察庁は会議を主導した南東部ウルサン(蔚山)のウルサン中部警察署のリュ・サミョン署長を職務から外すなどの処分を下した。会議が開かれることを知るや「暇なのか?非常に不適切だ」と批判していた行政安全部のイ・サンミン長官は「クーデターに準じる状況」とし、改めて会議が開催されたことを非難した。

 警察局は、検察関連の重要政策や法令の閣議上程、総警以上の警察公務員に対する任用要請、自治体傘下の自治警察の支援などの業務を担う。政府は警察局について、検察から捜査権が移管されることになった警察の権限の肥大化をけん制することが狙いで、警察を指揮する組織ではないと説明している。

 しかし、警察内部の反発は激しさを増す一方で、30日には中間級や初級の幹部も警察局新設について対応を協議する会議を開く予定。警察の反発についてユン・ソギョル(尹錫悦)大統領は25日、記者団に対し「行政安全部と警察庁で必要な措置が講じられるものと承知している」と述べるにとどめた。

 警察局を新設する内容を盛り込んだ職制改正例は、26日の閣議で議決された。警察局は来月2日に発足する予定となっている。

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