<W解説>「IT大国」の呼び声高い韓国、2026年までに「デジタル人材100万人養成」は可能か?(画像提供:wowkorea)
<W解説>「IT大国」の呼び声高い韓国、2026年までに「デジタル人材100万人養成」は可能か?(画像提供:wowkorea)
韓国政府は22日、小学校と中学校の情報教科の時間を2倍に増やし、コンピュータープログラミング教育を強化するなど、デジタル人材100万人を養成する計画を発表した。しかし、教育現場は教員確保の課題を指摘。今回発表された計画には、この点についての説明が不十分で、現状のままで踏み切ることに懸念の声が高まっている。

 韓国教育部は22日、科学技術情報通信部や雇用労働部、産業通商資源部、中小ベンチャー企業部(いずれも部は省に相当)など関係省庁ともに「デジタル人材養成総合案」を発表した。同案によると、小中学校でソフトウェア(SW)、人工知能(AI)教育を必修化するなどデジタル人材を育成するための政策を今年下半期から推進する。2025年からは情報教育の授業時間を小学校で34時間、中学校で68時間以上と、現在の倍に増やす。

 高校では、デジタル分野の産業界における需要に合わせた高校(マイスター高校)を増やし、専門学科がある高校の生徒を対象とした採用連携型の教育課程も新設する。さらに、英才教育を目的とした高校などで、ソフトウェアやAIに特化した教育課程を今年から試験運用する。

 大学では、学士以上のデジタル専門の人材を養成するため、現在半導体分野に適用していた大学規制改革などをデジタル分野にも適用する。これにより、学科の新設や増設、定員増の基準が緩和される。首都圏の大学では、一定の条件の下、最大8000人まで定員を増やすことができるものとみられている。また、デジタル分野の大学院も増やす計画。

 そのほか、成人対象には2024年方3年ごとにデジタル能力の診断調査を実施する計画。

 韓国政府はこうした政策を進め2026年までにデジタル人材を100万人養成する計画。政府が思い描くデジタル人材は、AIやインタネット上の仮想空間「メタバース」、モノのインターネット(IoT)など、デジタル新技術を開発・活用するのに必要な知識と能力を兼ね備えた人材だ。具体的には、産業界に限らず、自身の専門分野にデジタル技術を融合できる人材や日常生活でデジタル技術を駆使することができる人材を想定している。

 教育部は「多様な人材がデジタルの専門性を備えられるよう支援し、すべての国民が基礎的な素養としてデジタル能力を十分に持つことができるよう、生涯にわたる教育システムを整備する」としている。

 政府がこのような大規模政策を打ち出したのは、今後、関連産業のみならず社会の全領域でデジタル能力を持つ人材が必要となることが予想され、それを見据えてということに加え、デジタル人材の不足が国家間競争力の低下につながることへの危機感があるためとみられる。

 日本の総合人材サービス会社のヒューマンリソシアが、国際労働機関(ILO)や各国の統計データをベースに独自分析し、昨年9月に発表したまとめによると、IT技術者数を国・地域別にみると米国がトップで409万3000人、2位はインドで231万6000人と推計される。IT大国と呼ばれる韓国は72万5000人で9位。4位の日本(122万人)にも大きく離された。総人口が違うと片付けてしまえばそれまでだが、デジタル人材の育成を怠れば、優秀な人材はこぞって海外に出てしまい、その結果、国内のデジタル環境の劣化、ひいては国家競争力の低下を招きかねない。今回、政府が打ち出した「100万人デジタル養成」の計画は、ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領が掲げた国政課題にも盛り込まれている。

 しかし、教育現場からは、公教育におけるデジタル教育の強化という方向性には賛同するものの、教員確保など懸念される課題への備えがないまま踏み切れば、教育現場に混乱を与えかねないとの声が出ている。韓国紙の朝鮮日報は、教育関係者への取材から「今回の発表では、情報科目の教員をどれだけ、また、どのように増やすかについての説明が不十分だったという」と伝えている。これに対し、教育部は同紙の取材に「生徒数の減少などを考慮すると、すべての学校に1人以上の情報科目担当の教師を配置するのは現実的に難しいと思われるが、できるだけ教員数を増やすため、他の省庁とも協議したい」とコメントした。

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