韓国の場合、本格的に産業化したのは1960年代からということもあり、創業100年以上の企業は斗山、同和薬品、新韓銀行、京紡など10社にとどまる。では、「60年企業」はどうかというと、2018年現在で569社にとどまり、長寿企業が少ない理由が、必ずしも産業化から日が浅いことが理由ではないようだ。
韓国の中小企業の関係者は、朝鮮日報の取材に「韓国も日本やドイツのように中小のメーカーが産業基盤だが、実業家が会社を代々受け継ぎつつ、責任経営・革新経営を行うことが難しく、100年企業が生まれにくい構造」とし「相続・贈与関連の規制を最小化して中小企業の育成に乗り出すべき」と話した。中小ベンチャー企業研究院のノ・ミンソン研究委員も規制緩和の必要性を指摘。「韓国も果敢に規制を緩和し、100年、200年企業が出るようにしなければならない」と話した。
また、中小企業中央会経済政策本部のチュ・ムンガブ本部長は同紙の取材に、100年企業を生み出すためには、中小企業の育成が重要と指摘し、「長時間耐えて『産業の根』の役割を果たした企業が、また別の企業や産業を発展させる土台となる」とした。
KB金融HD経営研究所は「100年企業の育成のためには、政府と銀行が単純な家業継承や事業継承を越えて、その企業が中長期的な競争力を引き継げるよう、企業継承のための支援が必要」と指摘。「企業継承における多様な懸案に対応できるよう、顧客企業に対する十分な理解をベースに、カスタマイズサービスを提供する必要がある」としている。
一方、前述のように日本は「100年企業」が世界で最も多い「企業長寿国」だ。日本最古の企業とされているのは建築工事業の金剛組(大阪)で、創業は飛鳥時代の578年。聖徳太子が朝鮮半島の百済から招いた工匠の1人が金剛組初代にあたるという。
かつて韓国の中央銀行、韓国銀行は「日本企業の長寿要因及び示唆点」と題する報告書で、日本に長寿企業が多い理由を分析。報告書は、日本企業が1980年代の円高や1990年代の長期不況も乗り越え、事業を継続できたのは▲本業重視▲信頼経営▲職人精神▲血縁を越えた後継者選び▲保守的な企業運営などによるものだとした。このほか、外国からの侵略が少なかったことや、職人を尊重する社会的雰囲気など、外的要因も影響を与えたと分析した。また、とりわけ、素材や部品分野で先端技術を保有する長寿企業の役割が大きかったとしている。
この報告書にも挙げられているように、日本の長寿企業の多くが経営において「信頼」「信用」を大事にしてきた。顧客の信用を大切にする日本的源流の一つが、江戸時代中期の思想家、石田梅岩が創始した庶民のための生活哲学「石門心学」だ。石田は無料で開いた講席で「商人として正しい道を知らないものは、利を貪(むさぼ)ることにのめり込み、かえって家をつぶしてしまう。それに対し、商人としての道を悟れば、欲得ではなく『仁』を心がけて仕事に励むので家は栄える」と説いた。武士がその働きによって君主から俸禄を受けるように、商人はその働きで顧客から儲けを得る、すなわち儲けは世の中に提供した価値への対価であるという近代経済学に通ずる考え方を伝えた。
その上で石田は「武士たるものは主君のために命を惜しんではサムライとは言われまい。商人もそのことが分かれば自分の道はおのずと明らかになる。自分を養ってくれる顧客を粗末にすることなく、心を尽くせば、十中八九は先方の心に訴えるはずだ。先方の気持ちに沿うような形で商売に精魂込めて努めるなら、世渡りする上で何も案じることなどない」とした。
前述のように韓国は「100年企業」から「60年企業」に基準を緩めても、2018年現在、569社にとどまる。これらの企業が仮に全て40年後まで存続したとしても、韓国の「100年企業」は600社に満たない。とかくスピード感を重視し、すぐに結果を出すことを求める傾向にある韓国企業だが、長い社歴で培った技術やノウハウは、世界市場で競争する上で強力な武器になることは言うまでもない。
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