<W解説>韓国に急速に広がる麻薬、摘発者は過去最高の見通し=長らく「清浄国」と主張も、かけ離れた実態(画像提供:wowkorea)
<W解説>韓国に急速に広がる麻薬、摘発者は過去最高の見通し=長らく「清浄国」と主張も、かけ離れた実態(画像提供:wowkorea)
韓国で覚せい剤や大麻といった麻薬が急速に広がっている。今年1~7月に韓国で摘発された麻薬犯罪者は1万575人で、前年同期(9363人)比12.9%増加した。年間では過去最多を更新する見通し。韓国は長く「麻薬清浄国」と主張してきたが、麻薬の押収量は2017年の154.6キロから、昨年は1295.7キロと5年間で約8倍に増加した。

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 麻薬犯罪はとりわけ、若者の間で急増している。今年上半期の麻薬犯罪で摘発された人のうち、10代は292人、20代は2717人で全体の35.1%を占めた。

 米動画配信大手、ネットフィリックスは先月から韓国ドラマ「ナルコの神」(韓国タイトル「スリナム」)を配信している。同作品は、エイの輸出業のために南米・スリナムに行ったカン・イングが、コカイン運搬者という濡れ衣を晴らすために国家情報院と手を組み、麻薬王チョン・ヨファンを捕まえるために繰り広げる検挙作戦が描かれている。

 作品のプロット(構成)は実話がベースとなっており、チョン・ヨファンとして描かれているチョ・ボンヘンは、1994年に詐欺容疑で自身が捜査線上に上がっていると悟るや、犯罪者引き渡し条約が締結されていないスリナムへ逃亡。そこで南米最大の麻薬組織「カリ・カルテル」と手を組み、麻薬密売組織を構築した。韓国国家情報院は2007年にチョの本格的な捜査に乗り出し、2009年、チョは逮捕された。チョはその後2016年に獄中死している。

 また、今年7月には国際刑事警察機構(インターポール)によって国際指名手配されていた「東南アジア3大麻薬王」の一人である韓国人の男が、ベトナムのホーチミン市で逮捕された。男は2018年から東南アジアを中心に麻薬取引を行い、男が率いるルートは東南アジア最大規模の麻薬密売ルートの1つだったという。

 一般社会にも麻薬が入り込んでおり、ソウル・カンナム(江南)のある風俗店では、20代の男女が薬物の入った酒を飲んで死亡する事件が発生。陸軍では、インターネットで大麻の種を注文した副士官が、部隊内で大麻を栽培していたとして摘発される事件も起きている。

 韓国は長らく「麻薬清浄国」を主張してきたが、実際は清浄国とは真逆の、深刻な状況にあることがうかがえる。

 韓国の乳業大手「南陽乳業」の創業者の孫娘で、覚せい剤を使用した罪で実刑判決を受けて服役し、このほど出所したファン・ハナ氏は、雑誌インタビューで薬物の恐ろしさを吐露。ファン氏は「その気になりさえすれば(薬物使用を)やめられると思っていた。いつか警察に捕まるだろうと恐れながらも、使っていた。麻薬の最後は自殺か懲役、どちらかしかない」と語った。ファン氏はソウルの自宅などで覚せい剤を使用したとして2015年に逮捕起訴され、執行猶予付きの有罪判決を受けた。しかし、執行猶予中に再び麻薬を使用し、懲役1年8か月の実刑を言い渡され、このほど出所した。

 韓国紙の中央日報は今月9日付の社説で「韓国は誰でもその気になれば簡単に麻薬を手に入れることができる国になりつつある」と指摘。「麻薬がひとたび毒キノコのように広がれば、『麻薬との闘い』を宣言したところで効果はないという事実は各国の例が物語っている」とし、検察と警察が総体的な能力を発揮できるよう、捜査権を含めた全般的な対応体系の見直しを訴えた。

 韓国内で麻薬犯罪が増加していることを受け、韓国政府は国務総理室を中心に、麻薬犯罪予防や取り締まり、治療、社会復帰、教育、広報などを網羅する総合的な対策をまとめる方針だ。ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領は今月24日、「麻薬が管理可能な臨界点を超え、国家的なリスクに拡大する前に全社会的な麻薬との闘いが切実に求められる」と強調した。また、特に若者の間で麻薬犯罪が急増していることについて「未来世代を守るという使命感を持って特段の対策を講じてほしい」と指示した。

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