韓国ではこれまで年齢を数える際、数え年が一般的に用いられてきた。胎児が母親の子宮に宿った瞬間からが一つの命と捉える韓国古来の考え方に基づく。出生日に1歳となり、新年を迎えた1月1日になった時点で、誕生日に関係なく一斉に年をとるという年齢の数え方だ。そのため、12月31日生まれの赤ちゃんは生まれた時点で1歳、翌1月1日には既に2歳となる。一方、満年齢は出生時点では0歳で、生年月日を起点に1年経つたびに1歳ずつ増え年齢計算法で、日本を含めほとんどの国で用いられている。韓国でも、法律関係の書類などでは、1960年代初めころから満年齢が使われている。
韓国はコミュニケーションを取る際、年齢に関して、日本以上に重要となる。年齢で上下関係が決まるケースがしばしばあり、相手が自分より年上か年下かによって話し方や呼び方が変わったりする。そのため初対面の人にまず先に年齢を尋ねることが多い。相手の年齢を知らずして、その後の会話が成り立たないからだ。
現行法では、税金や医療、福祉に関する場面で満年齢を規定している。一方、徴兵制や飲酒・喫煙可能な年齢を計算する際には、生まれた時を0歳として、1月1日を1歳とする「年年齢」を用いているため混乱が発生していた。特にコロナ禍では、ワクチンの接種完了やPCR検査の陰性を証明する「防疫パス」は年年齢が基準である一方、ワクチンの接種年齢は満年齢を適用したため、国民に混乱が広がった。
数え年、年年齢、満年齢に加え、ニュースなどでは数え年から1歳をひいた「新聞年齢」が用いられ、現在、韓国社会ではさまざまな年齢の数え方が混在する状況となっている。
今年9月に実施された政府の調査では、回答者の約8割が数え年の廃止に賛成した。
今年5月に就任したユン・ソギョル(尹錫悦)大統領は、大統領選で、年齢の数え方の見直しを表明していた。今回の法改正により、すべての行政に関する年齢計算は、他の法令による特別規定がある場合を除き、満年齢を適用する。
大統領室は法案可決後、「修正法案の国会通過により、韓国のすべての市民が来年6月から1、2歳若くなる」とコメントした。
このニュースは日本でも報じられ、K-POPファンを中心にネット上では「お気に入りのアイドルの年齢が若返る」と話題になった。
一方、日本でもかつて満年齢とあわせて、「数え年」で年齢を表現する場面もしばしばあった。戦時中、配給される物資は満年齢を基準にしたものだったが、「数え年」を基準に、生後間もない赤ちゃんを2歳と申請して、食べられないキャラメルが配給されたり、満年齢で50代なのに、「数え年」を基準に申請したために60代の栄養計算に基づいた少ない量で物資が配給されたりするケースもあったという。
その後、1950年に「年齢のとなえ方に関する法律」が施行し、日本では満年齢での数え方が義務化された。正確な出生届の促進や、国際性の向上に加え、戦後の復興期の中、「若返る」ことで気持ちを明るくさせる効果を狙ったとも言われている。
韓国でもようやく年齢の数え方が「満年齢」に統一されることになった。国民からは歓迎の声が聞かれる一方、前述のように年齢によって言葉遣いを明確に分ける文化的背景から「同学年でも年齢に違いが出る満年齢は友人関係に影響する」などと懸念も出ている。
早ければ来年6月から満年齢に統一されるが、法制処の関係者は聯合ニュースの取材に「整備する可能性がある全ての法令を抽出し、省庁協議や改正に向けた各種手続きを経なければならず、すべて完了するには6か月以上かかるだろう」との見方を示した。仮に6月から施行されたとしても、国民が慣れるまでには時間もかかるとみられ、統一に伴う混乱も予想される。
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