2011年の東京電力福島第1原発事故や、原発が集中する韓国南東部での2016年の地震発生を受け、韓国では原発の安全性への不安が高まり、2017年6月、文氏は「原発政策を全面的に再検討し、原発中心の発電政策を廃止する」と宣言。当時、韓国は原発が発電量の3割を占める主力電源だったが、文氏は「準備中の新規原発建設計画を全面白紙化し、原発の設計寿命を延長しない。脱原発は逆らえない時代の流れ」と述べた。
文氏の脱原発宣言後、原発業界は危機に直面し、優れた技術力を持つ人材が次々と離れていった。また、原発設計・施工会社は相次いで廃業したほか、大学の原発関連学科の学生数も急減した。
前政権の脱原発政策は、炭素中立社会の実現に向けて原発を積極的に活用する国際社会の流れに逆行しているとの批判もあった。国連の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)は特別報告書で、炭素中立社会の実現のためには2050年までに原子力を2010年比2.5~6倍に増やすべきだとする意見を出している。
その後、文氏は政権末期の今年3月、大統領府で開かれた「グローバルエネルギー供給網の懸案点検会議」の席で「原発の世界的な先導技術を確保することが重要だ」などと述べ、一転、これまでの脱原発基調とは異なる見解を示した。突如として見解を転換させたことに、当時、批判が相次いだ。前政権では野党で、現与党の「国民の力」の議員からは「正直に国民の前で脱原発政策の失敗を認め、頼れるのは原発しかないと言え」と非難の声が上がった。
一方、尹氏は大統領選でも原発推進を主張し当選。政権発足前に組織された政権引き継ぎ委員会は、新政権の110の国政課題のうち、脱原発政策の廃棄を3番目の課題として掲げた。
今年6月、尹氏は南東部のチャンウォン(昌原)にある原子炉メーカーのトゥサン(斗山)エナビリティーを視察。「5年間、ばかげたことをせず原子力発電のエコシステムをより強固に構築していれば、今頃はおそらく競合がいなかったはずだ。より一層育てなければならない原発産業が、この数年間、困難に直面してきたことが非常に残念で、今からでも正さなければならない」と述べ、文前政権の脱原発政策を改めて批判した。
新ハヌル1号機は2010年の着工から12年を経て、今月7日に営業運転を開始した。出力1400メガワットで、年間発電量は1万424ギガワット時(GWh)を見込む。産業通商資源部(部は省に相当)は、同機の稼働は電力需要が増える冬場の電力の安定供給に寄与すると説明した。また、同機は原子炉冷却材ポンプや計測制御システムなどのコア技術を国産化した。韓国が独自の技術で開発した次世代型原子炉「APR1400」を採用しており、聯合ニュースは「今後、チェコなどに輸出されるAPR1400は、韓国を代表する原子炉モデルとして、尹政権が国政課題の一つに掲げる『2030年までに10基の原発輸出』の達成に貢献する見通しだ」と伝えた。
14日に行われた完工式は、全国的な大雪と寒波を受け、尹氏は出席を見合わせた。このため、産業通商資源部のイ・チャンヤン(李昌洋)長官が尹氏の祝辞を代読。尹氏は祝辞で「新ハヌル1号機の完工は新たな始まり。脱原発で委縮した韓国の原発産業は活力を帯び、再び飛躍するだろう」と期待を示した。
前政権で建設が白紙になった新ハヌル3、4号機についても、2024年の着工を目標に建設再開を推進している。産業通商資源部は、同機の運転開始をきっかけに、韓国の原発産業の再復活に向け、エコシステム回復と競争力強化を推進する計画だ。
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