5月10日の就任式で演説する尹大統領(資料写真)=(聯合ニュース)
5月10日の就任式で演説する尹大統領(資料写真)=(聯合ニュース)
【ソウル聯合ニュース】聯合ニュースは2022年の韓国10大ニュースとして、尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏の大統領就任、多数の死傷者が出たソウル・梨泰院の雑踏事故などを選んだ。10大ニュースは次の通り。◇尹錫悦大統領が就任 「竜山時代」幕開け 22年3月9日に実施された大統領選は、国会議員経験のない保守系の尹錫悦氏が検事総長を辞任してからわずか1年にして当選するという劇的な結果となった。朴槿恵(パク・クネ)元大統領の弾劾後、全国規模の選挙で惨敗を続け、壊滅の危機にあった保守陣営の救援投手として、「公正と常識」を時代精神に掲げて政権交代を果たした。 政界の慣例を破って政権を手にした尹大統領は、5月10日の就任後も型破りな動きをみせた。「帝王的な大統領制の克服」を理由に、執務室をそれまでの青瓦台から数キロ離れた竜山の国防部庁舎に移し、青瓦台を国民に開放した。また、漢南洞にある外交部長官の公邸を改築して大統領公邸とした。 執務室のある建物の1階には記者室を設け、就任翌日から11月18日まで61回にわたり記者団のぶら下がり取材に応じた。 尹大統領は就任から11日という異例の早さでバイデン米大統領と韓米首脳会談を開いたのに続き、自由と連帯の価値観同盟を強調し、グローバルサプライチェーン(供給網)の構築など経済安全保障に力を入れた。 北朝鮮の非核化の取り組みに応じて経済支援などを行う「大胆な構想」を打ち出す半面、北朝鮮の核武力政策の法制化に対抗し、対北朝鮮で拡大抑止を画期的に強化する姿勢を鮮明にした。 内政面では労働・年金・教育改革を尹政権の3大改革課題に掲げる一方、財政健全性を高めるため厳しい支出の見直しを行い、民間主導の成長へ経済のパラダイム(枠組み)を転換させた。◇雑踏事故で多くの死傷者 対策・対応の不備明らかに 10月29日夜、ソウル市竜山区の繁華街・梨泰院の路地で158人が圧死し196人が負傷する大規模な雑踏事故が起き、社会に衝撃を与えた。 ハロウィーンを控えた週末とあって梨泰院一帯には10万人以上が集まっており、ハミルトンホテル横の狭い坂道で密集した人々が折り重なるように転倒して多数の死傷者が出た。犠牲者の約9割が20代、30代の若者だった。事故現場は長さ45メートル、幅4メートルほどと狭く、傾斜の大きい坂道だったため、人が密集すれば事故が起きる恐れが大きかった。 事故原因の捜査で、ソウル市と警察、消防がハロウィーンで多くの人出が予想されたにもかかわらず適切な安全対策を立てていなかったことが判明。警察の特別捜査本部は朴熙英(パク・ヒヨン)竜山区長や李林宰(イ・イムジェ)前竜山警察署長、チェ・ソンボム竜山消防署長を業務上過失致死傷容疑で立件して捜査した。 同本部はハロウィーンの人出への対策を設けていなかった竜山区庁と竜山警察署、竜山消防署の過失が合わさり、惨事が起きたと判断している。警察と消防が事故収拾措置を怠り、事故の責任を逃れる目的で関連の報告書を削除または改ざんした疑惑も捜査の対象になった。 報告ラインがきちんと機能せず、警察上層部の事故の把握が遅れたことも明らかになった。また、事故発生の4時間ほど前から現場の危険な状況を伝える通報が10件余り寄せられていたが、警察は人の流れを整理するといった積極的な対応を取らず批判を浴びた。 革新系最大野党「共に民主党」は事故の総責任者として警察を所管する李祥敏(イ・サンミン)行政安全部長官を挙げ、同氏の解任建議案を強行採決し、可決させた。だが法的強制力はなく、尹大統領は応じなかった。◇「Kカルチャー」に世界が注目 「イカゲーム」は米エミー賞で6冠 22年は韓国の映画やドラマ、音楽などいわゆる「Kカルチャー」が世界の舞台で数々の賞を獲得し、注目を集めた1年だった。 米動画配信大手ネットフリックスの韓国ドラマ「イカゲーム」は9月に開かれた米テレビ界最高峰の栄誉とされるエミー賞の授賞式で監督賞と主演男優賞(イ・ジョンジェ)をはじめ6冠に輝いた。 ドラマをヒットに導いたイ・ジョンジェとチョン・ホヨンは、2月に全米映画俳優組合(SAG)賞ドラマ部門の男優賞と女優賞をそれぞれ受賞した。両賞とも韓国の俳優が受賞するのは初めてだった。1月には、同ドラマに出演したオ・ヨンスがゴールデン・グローブ賞テレビ部門の助演男優賞に輝いた。 映画界からも朗報が続いた。5月に開催されたカンヌ国際映画祭で、パク・チャヌク監督は映画「別れる決心」で監督賞を、日本の是枝裕和監督の韓国映画「ベイビー・ブローカー」に主演したソン・ガンホは男優賞をそれぞれ受賞した。 K―POP人気も健在だ。BTS(防弾少年団)とStray Kids(ストレイキッズ)、BLACKPINK(ブラックピンク)は米ビルボードのメインアルバムチャート「ビルボード200」で1位を獲得した。BTSとBLACKPINKに加え、BTSメンバーのJIN(ジン)、RM(アールエム)、J-HOPE(ジェイホープ)、JUNG KOOK(ジョングク)、SUGA(シュガ)、V(ブイ)もビルボードのメインシングルチャート「ホット100」入りを果たした。 18歳のイム・ユンチャンが6月に米国のバン・クライバーン国際ピアノコンクールで最年少優勝を果たすなど、若手演奏家も世界の名だたるコンクールで成果を収めた。◇カカオで大規模通信障害 社会に甚大な影響 10月15日にソウル郊外のデータセンターで発生した火災によりIT(情報技術)大手・カカオが運営するアプリで大規模な通信障害が発生し、ユーザーが大きな不便を被った。 カカオはSKグループのSKC&Cが運営するこのデータセンターに3万2000台のサーバーを置いていたが、バックアップ体制に不備があったため完全復旧に時間がかかり、コミュニケーションアプリのカカオトークや決済のカカオペイ、配車などのカカオTといった主なサービスで長い場合は5日以上も不具合が続いた。 中でもカカオトークは「国民的メッセンジャー」と呼ばれるほど国民の生活に深く根付いていることから、社会的な波紋は大きかった。障害を受けてカカオの南宮燻(ナムグン・フン)共同代表取締役は辞任し、同社は非常対策委員会体制へ移行した。 カカオ創業者の金範洙(キム・ボムス)氏は国会による国政監査で「たこ足式の事業拡張」などと批判を浴びた経営路線を全面的に刷新すると約束した。同社は向こう5年間でサービス安定化に向けた投資を従来の3倍に増やし、専門組織も設置することを決めた。◇サッカーW杯 韓国が12年ぶり決勝T進出 11月に開幕したサッカーのワールドカップ(W杯)カタール大会で、ベント監督率いる韓国代表が決勝トーナメント(16強)進出の快挙を成し遂げた。16強入りは10年の南アフリカ大会以来、12年ぶりで、4強入りを果たした02年韓日大会を含め通算3回目。 10大会連続、通算11回目となるW杯本大会に臨んだ韓国は、1次リーグでウルグアイ、ガーナ、ポルトガルと対戦した。ウルグアイとは0―0で引き分け、ガーナ戦ではFW曺圭成(チョ・ギュソン)の連続ゴールにも2―3で敗れ、16強入りが危ぶまれた。 だが、ポルトガル戦で奇跡を起こした。前半5分に先制点を奪われたものの金英権(キム・ヨングォン)のゴールで同点に追いつき、黄喜燦(ファン・ヒチャン)が終了間際の後半46分に決勝点を挙げ2―1で逆転勝ちした。韓国はウルグアイと勝ち点4で並び、得失点差でも並んだが、総得点で上回り劇的に決勝トーナメント進出を果たした。 決勝トーナメント1回戦で世界最強のブラジルに1―4で敗れ、8強入りはならなかったが、選手たちは大会で韓国サッカーの底力を存分に見せつけた。彼らの最後まで諦めない姿勢は国民に大きな感動を与えた。◇北朝鮮が弾道ミサイル60発超 韓国領海付近に着弾も 北朝鮮は22年の1年間に31回にわたり計63発の弾道ミサイルを発射した。過去最多の発射で、このうち大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射も8回に達した。 1月5日と11日の極超音速ミサイル試射を皮切りに、ロシア製短距離弾道ミサイル「イスカンデル」の北朝鮮版「KN23」、地対地ミサイル・ATACMSに似た「KN24」、北朝鮮が「超大型放射砲」と呼ぶ「KN25」をはじめ多様な種類のミサイルを相次いで撃った。 とりわけ、10月末から11月上旬にかけて韓米が実施した大規模な空軍合同訓練「ビジラント・ストーム」に強く反発し、11月2日の約25発を含め同期間に30発を超えるミサイルを発射した。うち1発が南北分断後で初めて、朝鮮半島東の東海上の南北軍事境界線にあたる北方限界線(NLL)南の韓国領海近くに着弾し、ミサイルの軌道の先にあった慶尚北道鬱陵郡一帯に空襲警報が発令された。 韓米・韓米日が合同訓練を行っていたころの10月4日には、中距離弾道ミサイル(IRBM)「火星12」を日本の上空を通過させる形で発射した。 ICBMは2月27日、3月5日と16日の3回にわたり新型の「火星17」を撃った。最後の発射は空中爆発に終わり、3月24日には既存の「火星15」を発射して火星17だったと主張した。 その後、ICBMをさらに3回発射した後、11月18日に火星17を発射し高度約6100キロまで上昇させた。北朝鮮は金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長(朝鮮労働党総書記)が娘と一緒に立ち会ったことも明らかにした。◇「3高」危機到来 低迷する不動産・金融市場 韓国経済は物価高、高金利、ウォン安ドル高という「3高」のショックで年初から厳しい状況に置かれた。新型コロナウイルス対応のための景気浮揚策の結果、国内の消費者物価上昇率が7月に6.3%と約23年ぶりの高水準を記録するなど物価が急騰した。 米連邦準備理事会(FRB)のハイペースの利上げに足並みをそろえ、韓国銀行(中央銀行)も5、7、8、10、11月に連続して政策金利を引き上げ、このうち7月と10月には通常の2倍の幅となる0.50%の引き上げを実施した。 急激な利上げは不動産市場や金融市場に衝撃を与えた。10月の銀行業界の家計向け融資の加重平均金利は年5.34%と10年ぶりの高水準を記録。家計の利子負担が重くなり、住宅の売買価格と伝貰(チョンセ、保証金預託による住宅賃貸)価格は下半期に入ると急落した。政府は不動産規制の緩和に動いたが、10月以降は住宅価格の下落に一層拍車がかかった。 急激な金融引き締め政策と不動産市場に対する懸念から低迷していた金融市場は、江原道が地元のテーマパーク「レゴランド」を巡り保証債務の不履行を宣言したことで混乱に陥った。政府が打ち出した50兆ウォン(約5兆2600億円)を超える規模の市場安定対策により市場の不安はやや落ち着いたものの、年末になるほど景気低迷の懸念は強まり、23年の経済見通しを暗くしている。◇国民の半分がコロナ感染 日常生活の回復加速 新型コロナの流行3年目となった22年は飲食店などの営業時間や集まりの人数を制限する措置が解除され、日常生活の回復が加速した。今年初めのオミクロン変異株の大流行により統計上は国民の半分程度(12月14日時点の累計感染者数2792万5572人)が感染したことも、逆説的に日常回復を早める一因となった。 新型コロナに感染しても検査を受けなかった人、感染したことに気づかなかった人も含めると、実際の感染者数は統計をはるかに上回るとの分析もある。防疫当局が8~9月に国民1万人を対象に実施した新型コロナの抗体陽性率調査では、97%が感染やワクチン接種により抗体を保有しているとの結果が出た。 感染対策の規制は解除または緩和された。飲食店など不特定多数が利用する施設の営業時間制限と私的な集まりの人数制限が4月半ばに解除され、4月末からは映画館などでの飲食も可能になった。同じころ、新型コロナの感染症等級が最も強力な隔離義務がある第1級から第2級に引き下げられた。 5月には、50人以上が集まる集会への参加時や公演、スポーツ試合の観覧・観戦時などを除き、屋外でのマスク着用義務がなくなった。9月下旬からは屋外マスク着用義務が全面解除された。 屋内でのマスク着用と感染者の7日間の隔離義務は今も維持されている。政府は冬の流行状況を見極めたうえで屋内マスク着用義務も一部施設を除いて解除する計画だ。◇国産ロケットでの実用衛星打ち上げに成功 世界7番目 韓国初の国産ロケット「ヌリ」が6月21日、初めて打ち上げに成功した。21年10月の1回目打ち上げに失敗してから8カ月にしての再挑戦で、人工衛星を目標軌道に投入した。 ヌリは南部の全羅南道・高興の羅老宇宙センターから打ち上げられ、約13分後に高度700キロに到達して性能検証衛星(162.5キロ)とダミー衛星(1.3トン)を軌道に乗せた。検証衛星は南極にある韓国の世宗基地、中部・大田の地上局との交信に成功した。 韓国は米国、ロシア、欧州連合(EU)、インド、日本、中国に続き、重量1トン以上の実用衛星を自力で打ち上げた世界7番目の国となった。10年3月に開発に着手して以来、12年3カ月にしての成果だ。 ヌリは重量1.5トン級の実用衛星を地球低軌道(高度600~800キロ)に投入することができる。75トン級の液体燃料エンジンや衛星を保護するフェアリングなど、中核技術・装置を全て韓国の研究陣が開発した。 21年の1回目の打ち上げではロケットの1段目とフェアリング、2段目の分離には成功したが、3段目のエンジンの燃焼が予定より早く終わり、ダミー衛星を目標軌道に乗せられなかった。 政府は27年にかけて衛星を搭載したヌリをさらに4回打ち上げて技術向上を図り、32年に月着陸、45年には無人宇宙船の火星着陸を実現する計画を立てている。◇事故や災害相次ぐ マンション外壁崩落・山火事に豪雨も 大型の事故や災害が相次いだ1年だった。1月11日、南西部の光州市で建設中だったマンションの外壁などが崩れ落ち、作業員6人が死亡する事故が起きた。施工会社の建設大手・HDC現代産業開発は、建物を完全に撤去して新しく建て直すよう求めた入居予定者の要求を受け入れた。 3月には、東海岸で4日から13日まで大規模な山火事が続いた。山火事の継続時間は213時間と、韓国で史上最長となった。山林の被害面積は計2万523ヘクタールでソウルの面積(6万500ヘクタール)の3分の1に達した。 8月には8日のソウル市を皮切りに13日にかけて京畿道、仁川市などの首都圏と江原道、忠清道、慶尚北道、全羅北道が1日100~300ミリの集中豪雨に見舞われた。ソウルの一部では1時間当たりの降水量が100ミリを超え、記録的大雨となった。政府の中央災難(災害)安全対策本部のまとめによると、ソウルの8人を含め14人が死亡し、2280人の被災者と約1万件の施設被害が発生した。
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