<W解説>元徴用工問題解決へ、韓国政府が最有力案で「強行か」と韓国メディア(画像提供:wowkorea)
<W解説>元徴用工問題解決へ、韓国政府が最有力案で「強行か」と韓国メディア(画像提供:wowkorea)
韓国紙のハンギョレ新聞は24日、日韓最大の懸案である元徴用工問題をめぐり、韓国政府が有力な解決策の一つとして検討してきた「併存的債務引き受け案」を実現するための準備手続きが開始されたとの見方が出ていると報じた。「併存的債務引き受け案」とは、公益法人「日帝強制動員被害者支援財団」が日韓両国の企業から自主的に寄付を集め、その金を元徴用工訴訟の被告企業である日本製鉄や三菱重工業に代わって原告に支給するというもの。元徴用工問題について、韓国の外交部は先月29日と今月13日に相次いで「(解決策は)以前よりも絞られた」との見解を示している。日韓関係改善に意欲を見せるユン・ソギョル(尹錫悦)大統領は、元徴用工問題の解決を急ぎたい考えで、年明けは、長年停滞してきたこの問題が解決にこぎつけることができるのか注目される。

 元徴用工訴訟をめぐっては、大法院が2018年11月に三菱重工業に対し、原告への賠償を命じた。しかし、賠償問題に関し、日本としては1965年の日韓請求権協定で解決済みとの立場で、同社は履行を拒んだ。このため、原告側は2019年1月に韓国内にある同社の資産の差し押さえと売却(現金化)に向けた手続きに踏み切った。2019年3月、中部のテジョン(大田)地裁は同社の韓国内資産である商標権2件と特許権6件の差し押さえを決定した。同社側は差し押さえ命令を不服として即時抗告したが、同地裁がこれを棄却。同社は地裁の判断を不服として大法院に再抗告したが棄却された。

 これに伴い、同地裁は昨年9月、原告2人が求めていた計約5億ウォン(約5200万円)相当の同社の商標権と特許権の売却命令を決定した。同社側はこれに対しても抗告したが、棄却され、今年4月、大法院に再抗告した。一方、大法院は再抗告についての判断を下していない。

 仮に現金化されれば日本政府は制裁措置を取る構えで、そうなれば日韓関係は破綻するとさえ言われている。そのため、現金化は絶対に避けなければならないという認識では日韓両政府とも一致している。

 今年5月に就任した尹大統領は日韓関係改善に意欲を見せ、日韓最大の懸案である元徴用工問題の解決に向けても、これまで精力的にアクションを起こしてきた。

 早期の解決を目指す中で、韓国政府は当初、解決策として韓国政府の予算を使った代位弁済案を検討したが、原告側が反対し実現は難しいと判断。他の方策を模索する過程で、韓国の元徴用工を支援する前述の「日帝強制動員被害者支援財団」が両国の企業などから寄付金を募り、賠償金を肩代わりする案が浮上した。

 元徴用工を支援することを目的に2014年に設立した同財団には、日韓請求権協定を踏まえた日本の経済支援で恩恵を受けた韓国鉄鋼大手のポスコが、60億ウォン(約6億1000万円)を出資している。当初、ポスコの出資金は補償金として元徴用工に分配されるはずだったが、理事の間で反発が上がり、ポスコが出資の60億ウォンは結局、銀行預金として保管され、財団は利子で活動する方針が決められたという経緯がある。

 韓国国会は現在、尹政権の対日政策を「弱腰外交」などと批判を強める最大野党「共に民主党」が多数を占めていることが問題解決を難しくしている側面もあるが、既存の財団を使ったこの方法ならば、新たな法整備が不要なため、国会審議で苦慮する心配はない。

 ハンギョレ新聞によると同財団はこのほど理事会を開催し、定款に「被害者への賠償」に関する文言を追加することを決めた。財団は近く上級機関である行政安全部(部は省に相当)に定款の承認を申請する予定という。現在の同財団の定款には、被害者への賠償に関する記載はない。ハンギョレ新聞は「財団の理事会は定款の変更によって財団が『併存的債務引き受け』を実施する法的根拠を確立しようとしているものとみられる」と伝えている。

 しかし、原告側は従来から、日本側からの誠意ある謝罪を導き出すことに固執しており、寄付を募るにしても被告企業が関わることを求めている。原告側代理人と支援団体は26日、外交部から「併存的債務引き受け」について説明を受けたことを明らかにした。原告側は強く反発している。ハンギョレ新聞は「政府の動きは『被害者優先主義』とは多少距離があるため、今後も難航が予想される」と伝えている。

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