韓国は昨年5月にソウルで開催された米韓首脳会談の後からインド太平洋戦略をまとめてきた。報告書は37ページで、9つの重点推進課題を提示。重点推進課題は△規範と規則(ルール)に基づいた秩序構築△法治主義と人権向上のための協力△不拡散・対テロ協力の強化△包括安保協力拡大△経済安保ネットワークの拡充△先端科学技術分野の協力強化と域内デジタル格差解消への寄与△気候変動・エネルギー安保関連での域内協力主導△開発協力パートナーシップ促進を通した積極的寄与外交△相互理解と文化・人的交流増進—だ。
北朝鮮など朝鮮半島と北東アジア問題に限定したり、経済・通称協力に限った地域構想はこれまで歴代の政権で打ち出されていたが、今回発表された戦略は、これまでの構想をベースに、インド太平洋地域に範囲を広げたことが特徴。グローバルレベルの課題などについても積極的かつ戦略的な協力を強化していく意思が示された形だ。
昨年5月に就任したユン・ソギョル(尹錫悦)大統領は、日米韓の3か国連携を外交・安保保障の軸とし、米国との同盟強化と日本との関係改善を進めてきた。尹大統領は昨年11月、カンボジアのプノンペンで開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)との首脳会議で、3大ビジョン(自由・平和・繁栄)と3大協力原則(包容・信頼・互恵)を骨子とするインド太平洋戦略の大枠を公開。連帯を訴え、その後の岸田文雄首相との会談でも説明した。
先月28日、インド太平洋戦略の最終報告書を発表した国家安保室のキム・ソンハン室長は「尹大統領が具体的に述べた自由と連帯の価値をインド太平洋に投影した。自由と連帯は大統領就任演説を含め、8月15日の慶祝(解放記念日)での演説、国連総会演説、ASEAN会議を通じて大統領が一貫して強調してきた核心価値」とし、「尹政権がインド太平洋地域をどのように眺め、我々の国益の最大化のためにどのような方向性で協力するかを詳細にまとめた」と説明した。
報告書は米韓同盟について「70年間にわたり、朝鮮半島と地域における平和と繁栄の核心軸だ。安保だけでなく、経済やサプライチェーンを網羅するグローバルな包括戦略同盟に発展している」と評価し、さらに強化していく方針を示した。
また、冷え込んだ日韓関係に改善については「普遍的価値を共有する域内国家間の協力と連携のために不可欠な要素だ」とし、信頼回復に向け外交努力を続けていることを強調した。また、「最も近い隣国である日本とは、共同の利益と価値を持つ未来志向的な協力関係を追求する」とも記されている。
一方、この戦略には中国をけん制する意図があるとの指摘もある。この指摘に対して韓国大統領室はインド太平洋戦略の重要な要素の一つは「包容」とし、中国排除と解釈されることに警戒感を示した。報告書には「インド太平洋地域の繁栄と平和を達成することにおいては主要協力国である中国と、国際規範と規則に立脚し、相互尊重と互恵の基盤位共同利益を追求し、より健全で成熟した関係を実現していく」との内容が盛り込まれた。大統領室の高官は「隣国である中国との協力を拒否するというのは現実と相当かけ離れている」とし、発表したこの戦略が、特定の国を排除したりけん制したりするものではないことを強調した。
大統領室は報道資料で「尹政権のインド太平洋戦略は自由、法治、人権など普遍的な価値を対外戦略の核心要素に取り入れ、こうした価値を共有する国との連帯・協力を強調している。規則に基づいた域内の秩序を強化するとともに、国益の確保に寄与すると考える」と強調した。自由と法治、人権などを中核としたことについて、韓国の聯合ニュースは「米国のインド太平洋戦略と歩調を合わせたものとみられる」と解説した。
Copyrights(C)wowkorea.jp 3