<W解説>表現の自由か人権か=またも物議を醸している、韓国の尹大統領夫妻の風刺画(画像提供:wowkorea)
<W解説>表現の自由か人権か=またも物議を醸している、韓国の尹大統領夫妻の風刺画(画像提供:wowkorea)
韓国の国会事務処(所)が、韓国の議員会館に展示する予定だった政治風刺画などの美術作品を撤去した。展示予定だった作品にはユン・ソギョル(尹錫悦)大統領とキム・ゴンヒ(金建希)夫人の風刺画などが含まれ、国会事務処は「『特定の人物・団体の誹謗など、他人の権利を侵害する場合、会場の使用を制限できる』との国会の内規に沿って作品を撤去した」と説明している。これに対し、最大野党「共に民主党」の議員らは記者会見し、作品の撤去は主催側との協議を経ていないとして国会事務処を糾弾した。政権に批判的な韓国紙・ハンギョレ新聞は「(事務処側は)内規を理由に、主催者側に作品の撤去を要請したと説明したが、規定があいまいで解釈が恣意的である上、『表現の自由』の侵害をめぐり波紋を呼ぶものとみられる」と指摘している。

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展示会はソウル民族芸術団体総連合とグッバイ展示組織委員会が主催し、9日から5日間、国会議員会館で開かれる予定だった。国会議員も12人参画している。尹政権の政治勢力などを風刺の対象とするという趣旨で企画され、倒れた尹大統領のそばに韓国焼酎の瓶が転がり、その上に金夫人が座っている姿を描いた作品など、尹大統領夫妻の批判に焦点が合わされた。金夫人が「論文盗作46%でも博士に合格します」と語る姿を描いた作品などもあった。金夫人をめぐっては、大学院で博士号を取得した論文の盗作疑惑が取り沙汰されたことがある。

韓国では、昨年にも尹大統領を風刺した、高校生による漫画作品が物議を醸した。作品は全国学生漫画公募展に出品され、金賞を受賞したが、公募展を後援する文化体育観光部(部は省に相当)は、「公募展の趣旨に合わない作品を(受賞作として)選定した」として、公募展を主催した漫画映像振興院を厳重に警告した。

この時、物議を醸した作品は、尹大統領の顔をした列車が走り、運転席には金夫人を表現したと思われる女性がいて、大統領を「操っている」かのような印象を与えていると指摘された。

「ユン・ソクヨルチャ」というタイトルのこの作品は、「第23回全国学生漫画コンテスト」で最高賞の金賞を受賞した。「ヨルチャ」は韓国語で「列車」を意味し、尹氏の名「ソクヨル」と掛け合わせている。

作品について報道されるや、文化体育観光部は声明を発表。「振興院が中高生を対象に主催した全国学生漫画公募展において、政治的なテーマを露骨に含めた作品を賞に選定し、展示したことは、学生の漫画の創作意欲をかきたてようとする行事の趣旨に反しており、遺憾。厳重注意する」とした。公募展は韓国政府から後援を受けており、文化体育観光部は今後、後援を取り消すこともあり得ると警告した。

当時、この作品は物議を醸したが、その一方で、政府の対応に「表現の自由の抑圧」だという批判も上がり、作品を描いた生徒の高校には激励のメッセージも多数寄せられたとされる。

そして今回、再び風刺画が議論を呼ぶこととなった。事務処側は主催者側に8日から3回にわたって作品の自主撤去を求める文書を送付。「憲法が保障する表現の自由が十分尊重されなければならないが、『国会議員会館会議室及びロビー使用内規』第6条及び第7条に基づき、展示作品を8日午後11時までに自主撤去することを要請する」とした。しかし、主催者側がこれに応じず、9日未明に作品は事務処によって強制撤去された。

これに、展示会の運営に関わった無所属のミン・ヒョンンベ議員や、野党「共に民主党」のカン・ミンジョン議員らは記者会見を開き抗議。ミン議員は「今回の展覧会は不当な権力にこれ以上市民が圧死されないという約束でもある。国会事務処はこのような約束を無断撤去という野蛮な行為で踏みにじった。国会でさえ表現の自由が容認されない現実が恥ずかしい」と批判した。

また、展示作品の作者らは、撤去について国会事務総長の謝罪を求めるとともに、国会を相手に訴訟を起こすことを明らかにした。

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