「THE FIRST SLAM DUNK」は韓国では先月4日に封切られた。観客動員数は先月22日現在で338万人を突破した。とりわけ原作漫画「SLAM DUNK」が出版された当時学生だった30~40代を中心に関心を集めているという。「タイムマシーンに乗って学生時代に戻ったようだ」と懐かしむ声も聞かれる。
韓国でのヒットの理由について、韓国の映画・アニメーション文化に詳しいセジョン(世宗)大学のハン・チャンワン教授はNHKの取材に「原作が出版された90年代前半は韓国は経済成長を遂げた時期だったが90年代後半に入ると、経済危機が訪れた当時の学生たちにとっては希望を感じられない時代だった。そんな時期に主人公たちが強豪校に挑んで勝ち進んでいく姿に希望を感じた人も多いと思う。それから20年以上たって、その世代が再び作品に触れて感動した。自分も頑張っていこう、挑戦していこう、そんな気持ちにさせたのではないか」と分析した。
原作漫画は週刊少年ジャンプ(集英社)で1990年から1996年まで連載された。高校バスケットボール部で個性あふれる登場人物たちが全国制覇を目指す姿を描いた作品。日本国内でのシリーズ累計発行部数は1億2000万部以上に上っている。
韓国では1992年12月に翻訳版が発売され、2001年には完全版、2018年には新装再編版が発行された。絶大な人気を誇り、同作を読んでバスケットボールを始めた人も急増。ボールやシューズも飛ぶように売れた。「左手は添えるだけ」、「バスケがしたいです」などといった登場人物の名ゼリフは、かつて原作を夢中で読んだ30~40代の人たちの脳裏に焼き付いている。また、昨年の北京冬季五輪に、カーリング女子韓国代表チームの選手として出場したキム・ウンジョン選手は「メガネ先輩」の愛称で呼ばれるが、これはキム選手が競技中に特徴あるメガネをかけており、「SLAM DUNK」に出てくる「メガネ君」こと木暮公延に由来する。「メガネ先輩」という愛称が広く浸透したのも、「SLAM DUNK」という作品が韓国でなじみある作品だったからだろう。
「THE FIRST SLAM DUNK」公開に際し、漫画「SLAM DUNK」の原作者で映画の脚本・監督も手掛けた井上雅彦氏は「新たな角度と視点から見た『SLAM DUNK』を作った」とし、「結局根っこは全て同じで、『SLAM DUNK』を既に知っていても、こんなSLAM DUNKもあるんだという気分を感じてほしい」と話している。
韓国では、映画のヒットに続き漫画本の人気も再燃。「SLAM DUNK」の翻訳版を韓国に出版社、大元C.I.が発刊している。2018年に発刊された前出の「SLAM DUNK新装再編版」は先月14日までに販売部数が100万部を超えた。新装再編版は全31巻のオリジナルバーションを20巻にまとめたものだ。また、同社は1月からこれまでに「SLAM DUNKオリジナル」62万部、「SLAM DUNK完全版プレミアムボックス版」19万2000部、アニメーションの制作記録や単行本未収録の短編映画「ピアス」を収録した「THE SLAM DUNK re:SOURCE」8万部、雑誌サイズの「スラムダンク チャンプ」7万部を発注した。
聯合ニュースは「SLAM DUNK」の韓国人気の「仕掛け人」として大元C.I.のファン・ミンホ(黄敏浩)社長を紹介した。ファン氏は聯合のインタビューに「50日間で140万部を発注し、100万部を発行しました。入社して32年で初めてのことです。こんなに短期間に(漫画本を)これほど増刷したことはありません」と語った。
ファン氏は、映画が公開される前から注文量が増えることを予想して在庫をある程度確保していたというが、それを上回る人気ぶりとなった。
日本にはない前出のプレミアムボックス版は、2006年にファン氏が作者の井上氏に提案して韓国で発行した。その後、15年にオリジナル版を再発行、18年には全20巻の新装再編版を出版した。ファン氏は聯合の取材に「『SLAM DUNK』が過去の漫画にならず、現在進行形の漫画になるよう、新しいバーションを出し続けてきた」とその狙いを説明した。
ファン氏は「以前は2万セット(40万部)が最高だったが、今では7万セット売れるということは、これまで『SLAM DUNK』を見ていなかった新しい読者が流入したという意味」と分析した。ファン氏の狙い通り、SLAM DUNKは「現在進行形の漫画」となっている。劇場版も、公開当初はかつて原作を読みふけった30~40代が中心だったが、次第に10代・20代も関心を持ち、劇場に足を運んでいるという。
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