<W解説>韓国、全出生児に占める第1子の割合「6割超」が意味すること(画像提供:wowkorea)
<W解説>韓国、全出生児に占める第1子の割合「6割超」が意味すること(画像提供:wowkorea)
韓国の少子化が深刻化していることを裏付けるデータが今月26日までに、韓国統計庁から発表された。2022年の韓国の出生・死亡統計(暫定)によると、出生児のうち第1子は1万6000人で全体の62.7%を占め、1981年の統計開始以降、最も高くなった。第1子の割合が60%を超えるのは初めてで、第2子を産む世帯が少なかったことを意味するものだ。

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第1子は前年に比べて5.5%(8000人)増え、2015年に1.4%(3000人)増加して以降、7年ぶりのプラスとなった。この結果について韓国の聯合ニュースは「新型コロナウイルスの流行などで見送っていた出産が行われたとみられる」と分析した。一方、第2子は16.7%(1万5000人)、第3子以上は20.9%(4000人)の大幅な減少となった。

第2子を産まない背景として、出産の時期が遅くなる晩産と、育児に対する経済的負担などが挙げられる。

韓国女性政策研究院の調査(2019年)によると、「子供がいると就業やキャリアに制約を受ける」と答えた女性は、日本が35.6%だったのに対し、韓国は77.2%に上った。実際、韓国では既婚女性の5人に1人が結婚、妊娠、出産、幼い子供の育児と教育のために職場を離れたというデータもある。また、韓国の就職情報サイト「サラムイン」が行った調査では、ブランクを持つ女性を雇用することについて「負担を感じる」と答えた企業が約6割に上り、一度職場を離れると復帰が難しい現実があることがうかがえる。こうしたことから、妊娠・出産をためらう女性も少なくないとみられる。

20~30代の女性の意識そのものも変わってきている。先月、ソウル大学社会福祉学科のパク・チョンミン教授が発表した調査結果では、韓国の20~30代の未婚女性のうち「結婚と出産は必須」と答えた人は4.0%にとどまった。

こうした状況下、政府の少子化対策は迷走している。与党「国民の力」はこのほど、3人以上の子どもを持つ20代の父親に対して兵役を免除する策を打ち出し、大統領室に伝達した。だが、「20代で子供3人いる世帯がどれほどいるのか」と批判が高まり、現実的でないとして結局、全面撤回した。現実的か否かの議論はもとより、こうした対策が打ち出されたのは、兵役に抵抗を感じる対象年齢の男性も多い中、「兵役免除」の恩恵を与えれば、子供をたくさん持とうという動機につながると踏んだのではと勘ぐってしまう。何が何でも出生率を上げたいと焦るあまり、政府・与党が迷走しているのではないかと危惧する。批判が高まるや「国民の力」の報道官は「党で公式に検討されたものではなく、推進する計画はない」と火消しに追われた。一方、この政策について野党「共に民主党」のコ・ミンジョン最高委員は「子供は女性が産むのにどうして男性が恩恵を受けるのか」と批判した。

少子化をもはや避けられない現実として受け止め、その流れに沿って制度を変更する自治体も出てきている。ソウル市は多子世帯の定義をこれまでの3人から2人に変更した、これに伴い、これまで子供の数が3人でなければ受けることのできなかった多子世帯の支援対象基準を2人以上に緩和。同市が多子世帯を対象に行っている支援策である公営駐車場の料金の50%減免対象や、市内にある子供の遊び場「ソウル想像の国」の入場料の減免対象を子ども2人以上の世帯から適用する。廃校施設などを活用した同市のキャンプ場「家族自然体験施設」の利用料減免も、同じく対象世帯を子ども2人以上に広げることとした。同市はこうした内容を盛り込んだ条例を審議・議決し、27日に公布した。

同市の昨年の出生率は0.59人で全国最低だった。市の関係者は「オ・セフン(呉世勲)市長は少子化の問題に破格的な案を講じると市民と約束しており、直ちにできる部分から着実に進めていく計画だ。他の対策も準備ができ次第、発表する」としている。

昨年、米ノースウェスタン大学経済学科のマティアス・ドゥプケ教授の研究チームが、全米経済研究所(HBER)を通じて公開した報告書は、少子化克服のためには柔軟な労働市場、協力的な夫、友好的な社会規範、優秀な家族政策などが重要だと指摘した。報告書は、男性による育児や家事が少ない国で出生率が低い傾向にあると分析した。韓国も育児休業を取得する男性が増加傾向にあるが、取得者は大企業に勤める社員がほとんどだという。少子化対策に「兵役免除」といった小手先の対応策を掲げるのではなく、スウェーデンのように「男性育児休業の義務づけ」といった実効性ある大胆な少子化策が求められている。

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