この問題の発端は2019年7月、当時の安倍晋三政権が韓国向け半導体素材3品目の輸出管理厳格化を発動し、さらに同年8月、貿易上の優遇措置を適用する「ホワイト国」から韓国を除外する政令改正を閣議決定したことだった。経済産業省は当時、韓国を除外した理由について、貿易管理に関する審査などの体制が不十分なことや、問題解決に向けて情報を交換するための局長級の政策対話が長期間開かれていないことなどを挙げた。しかし、これまで日韓の懸案となってきた元徴用工問題をめぐり、当時のムン・ジェイン(文在寅)政権が具体的な対応を示さないことへの事実上の対抗措置だったとの見方もあった。しかし、日本政府はこれを一貫して否定している。
日本政府が輸出管理を厳格化した3品目はフッ化水素、フッ化ポリイミド、レジストで、いずれも韓国の主力産業である半導体の生産に不可欠でありながら、日本企業が世界的に大きなシェアを握っている素材だった。
韓国は2019年9月、日本の輸出規制に対抗し、日本を「ホワイト国」から除外した。また、日本の措置は不当だとしてWTO(世界貿易機関)に提訴した。さらに、半導体素材の国産化に着手した。当時の文大統領は2021年7月、「素材・部品設備産業成果懇談会」で日本の対韓輸出規制について言及し、「(規制によって)かえって主要品目の国内生産を増やし、輸入先を多角化して、材料・部品・設備産業の自立度を画期的に高める契機となった」と成果を強調。韓国メディアからも「自前で生産できるようになった」「日本の依存度が低下した」などといった報道が相次いだ。しかし、その後、一時は減少した日本からの関連輸入額が増加に転じ、国産化の動きは足踏み状態となっているとの指摘も出ていた。
日本政府による輸出規制措置をめぐっては、韓国の一般の国民も激しく反発した。措置に抗議する目的で日本製品の不買運動が勃発。次第に激化し、反日感情は急速に高まった。不買運動は「ノージャパン運動」という名の下、「買わない、売らない、行かない」を合言葉に韓国全土で展開された。不買運動の影響で、コンビニなどでは日本メーカーの商品が一時、陳列棚から消えたほか、日本ブランドの店などは客足が遠のいた。しかし、一連の不買運動は韓国製品に代替品がなければ日本製を買う「選択的不買運動」ともからかわれた。その後、コロナ禍を機に、半ばなし崩し的に不買運動は下火になり、打撃を受けた日本の各製品の売り上げは回復に向かった。
潮目が変わったのは韓国政府が先月、元徴用工問題の解決策を示したことだ。これを受け、先月、日韓首脳会談が行われ、直後に日本は半導体素材など3品目の対韓輸出規制を解除。一方、韓国は同措置についてWTOへの提訴を取り下げた。そして今回、韓国は優遇対象国に日本を再指定した。日本が優遇対象国となったことで、規制対象である物質などの輸出の審査期間が15日から5日短縮され、提出書類も5点から3点に減る。
韓国政府としては、今回、先に日本を優遇対象国に戻すことで、日本側も同様の対応を取るよう促す狙いがあるとみられる。韓国紙の朝鮮日報は「韓国政府が日本をホワイト国(現・グループA)に再指定したことを受け、日本側の同様の手続きも早まる見通しだ」と伝えた。一方、ハンギョレ新聞は「日本国内の手続きは時間がかかる見通しだ」と予測した。産業通商資源部の関係者は同紙の取材に「輸出入の告示で終わる韓国の手続きとは異なり、日本が韓国をグループAに再び引き上げるためには閣議を経なければならず、韓国より時間がかかる可能性がある」と指摘した。
その上でこの関係者は「どちらが先にグループAへの復帰措置を取ったかは関係なく、共にこの問題を解決することを決めており、韓国は先に取りうる措置を取って(日本側の)反応を促すことにしたものだ」と話した。
今後、日本も韓国を優遇対象国に戻せば、二国間貿易の本格的な回復が期待できる。
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