<W解説>アサヒの「生ジョッキ缶」、韓国で早くも品薄=ノージャパン運動からわずか4年、状況は一変(画像提供:wowkorea)
<W解説>アサヒの「生ジョッキ缶」、韓国で早くも品薄=ノージャパン運動からわずか4年、状況は一変(画像提供:wowkorea)
今月1日から韓国で販売が始まったアサヒビールの「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」が早くも品薄状態となっている。韓国の聯合ニュースは「(販売開始から)30分で8缶しか残っていない」などとするコンビニオーナーの声を伝えた。かつては韓国で日本製品の不買運動が起き、アサヒビールの「スーパードライ」も不買の対象となった。当時は「売れなくて」店の陳列棚から消えたが、現在は「売れ過ぎて」棚から商品がない状況となっている。

「アサヒスーパードライ 生ジョッキ缶」は2021年4月に日本で発売された。フルオープンするフタを開栓すると泡が発生し、飲食店のジョッキで飲む樽生ビールのような味わいが楽しめる商品で、発売されるや品切れが相次ぐ大ヒットとなった。缶ビールで泡を含んだビールが飲めるという斬新さはさることながら、当時、コロナ禍真っただ中で、居酒屋や飲食店でジョッキのビールを存分に味わうことができにくかったことも追い風となり、消費者の同商品への購買意欲をかき立てた。供給が追い付かず一時休売。再開後もしばらく、数量限定での販売が続いた。

スーパードライは韓国人消費者にも認知度が高い商品の一つだ。しかし、韓国では2019年、日本政府による対韓輸出管理強化に抗議する目的で日本製品の不買運動が始まった。「ノージャパン運動」という名の下、「買わない、売らない、行かない」を合言葉に韓国全土に広がった。それまで人気だったアサヒやキリン、サッポロなど日本メーカーのビールも不買の対象となり、一時、コンビニなどから商品が消えた。アサヒはかつて輸入ビール1位だったが、「ノージャパン運動」で、一時、圏外に沈んだ。

しかし、一連の不買運動は当初から「選択的不買運動」とも揶揄(やゆ)された。不買運動真っただ中の2020年には、任天堂のゲーム機「ニンテンドースイッチ」の人気ソフト「あつまれ どうぶつの森(あつ森)」が韓国で大ヒット。発売日前日から大勢の人が販売店に並ぶ様子が見られた。日本製であっても代替となる韓国製品が存在しなければ飛びつく状況に、ネット上では「不買運動をしていても、『あつ森』は買うんだなあ」と一貫性がない消費行動を指摘する声もあった。

日増しにエスカレートした不買運動だったが、コロナ禍で半ばなし崩し的に下火となり、韓国での日本製品の売り上げは徐々に回復を見せた。

韓国のコンビニ業界は昨年5月、日本製ビールの割引キャンペーンを再開した。CUやGS25、イーマート24など韓国コンビニ4社は、輸入ビールのキャンペーン品目にアサヒ、キリン、サッポロなどの日本製ビールを追加。コンビニ業界が割引キャンペーンに日本製ビールを含めたのは2019年8月以来のことだった。また、アサヒビールは昨年6月、不買運動の勃発以降初めて韓国人消費者に向けたスーパードライの宣伝広告を再開。同商品のグローバルキャンペーンの一環として、「Beyond Expected(期待以上)」をスローガンに掲げた広告を動画投稿サイト「ユーチューブ」で配信するなどした。

その後も日本のビールの売り上げは伸び、韓国・関税庁の輸出入貿易統計によると、今年1~2月の韓国における日本のビールの輸入額は368万ドル(約4億9475万円)で、前年同期(116万ドル)の3.16倍となった。

こうした状況の中、先月24日、アサヒグループホールディングスは、韓国で「スーパードライ 生ジョッキ缶」を発売すると発表した。アサヒがビール類の家庭向け新商品を韓国で出すのは4年ぶりという。今月1日から販売が始まり、コンビニのGS25では1日からの同商品の発注量が50万缶に上る。韓国紙の中央日報は「GS25で販売中のビール缶(小)のカテゴリー商品のうち、歴代最大の物量だ」と伝えている。発売初日から品薄状態となる人気ぶりで、一部店舗では既に完売しているという。

約4年でこれほど状況が変わるとは、不買運動で打撃を受けたアサヒも想像もしていなかったことだろう。

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