「ウリガ・ナミガ」は乾杯の席でよく使われる。(画像提供:wowkorea)
「ウリガ・ナミガ」は乾杯の席でよく使われる。(画像提供:wowkorea)
韓国では酒の席や場が盛り上がる場面で「ウリガ・ナミガ」と言う言葉をよく口にします。「われわれはもう赤の他人でなく家族のような関係だ」と親しさを前面に出して集いの結束や団結を図り、よしみを確認する為に使われます。

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 パロディー風に言えば「水戸黄門」で印籠を出し「この紋所が目に入らぬか」と言うと「ハァア~」と一同が平伏すように、「ウリガ・ナミガ」と言われたら「はぁ~恐れ入りました」「仰せの通り家族のように従います」と言う強制力が働きます。

 単なる友達でなく家族の一員だと宣言するのですから並大抵の関係ではなくなります。日本の皆さんも韓国人にこう言われたら感激するか、どう対処してよいか戸惑ったりするに違いありません。「親しき仲にも礼儀あり」「君子危うきに近寄らず」という言葉のようにどんなに親しくなっても一線を画し、他人を”家族”だと表現しないのが日本人の節度であり、すぐのめり込まず、様子見をするのが(冷たく感じますが)常とされています。(韓国人よりは)

 ですが、韓国では親しくなるとすぐ「ウリガ・ナミガ」と気勢を上げてグッと距離を詰め、家族のように接する付き合い方をします。

 古い話になりますが、日本で「ヨン様ブーム」が起きたのも俳優ペ・ヨンジュンの柔らかいルックスやすらっとした体型もさることながら、スターとして距離を置くのでなく、ファンを”家族”と呼んで親しみを込めて接したことも人気を得た一因だったと思います。
 
 手前みそで恐縮ですが、私にアシアナ航空からスカウト話があった時の話を…。

 アシアナの幹部らに食事に誘われ、その場で相互の事情や状況を話し合い、当然ながらお酒も進み酔いが回り始めた頃に、アシアナの専務から肩に手を回され「ウリガ・ナミガ」といわれてびっくりしました。日本生活が長かったため「ウリガ・ナミガ」というセリフが当時の流行語とは知らず、その言葉を額面通り素直に受け止め感激してしまいました。“何とアシアナは家族的な会社なんだろう”と。その言葉にはまってしまった私は、条件なども聞かず即座に移籍に同意しました。

 後になって「ウリガ・ナミガ」は韓国ではアシアナだけでなく、普段酒の席などでよく使われていることを知り、早まって決断した事を悔やみました。“後悔先に立たず!”

 まだこの話には尾ひれがありまして…。

 しばらくして本社で前出の専務に会い、「『ウリガ・ナミガ』と言われて入ってみたら、話と違って意外と冷たいですね」と冗談半分にツッコミを入れたところ、「権支店長、釣った魚に餌を与えるばかがいるか」と軽~くいなされてしまいました(笑)。

 話を元に戻しますが、韓国人は知らない人には全くと言って無関心ですが、一旦親しくなると手の平を返して、すぐ家族のように振る舞います。一つでも年上だと“ヒョン”(弟が兄貴に)、“オッパ”(妹が兄貴に)、”オンニ”(妹が姉に)、”ヌナ”(弟が姉に)と呼んで密着します。

 <余談>

 韓国ではどちらが“ヒョン”(または、オッパ・オンニ・ヌナ)か“ドンセン”(男女共通で弟妹のこと)かを見分ける時に「住民登録証」(韓国人が必帯する身分証明カード、日本のマイナンバーカードに該当)を見せ合い年齢を確認し、どっちが”ヒョン(オンニ)”かを決めます。

 この他によく使われているのが食堂の女主人や厨房のおばさんに”イモ”(義母/食べるイモではありませんので念のため)と呼び、親しさを表します。もちろん血は繋がっていませんが…。

 最近は若い夫婦の間でも夫を”オッパ”と呼び、ぐっと距離を詰めています。キャバレーやクラブ等で綺麗なホステスから”オッパ”と呼ばれたらゾクッとして思わず鼻の下を長~くして財布のひもを緩めたと、”友達”が話してくれました。絶対私の事ではありません。念の為に。こんな事を妻に知られたら何を言われるかわかりません。最近あまり使われませんが、“くわばら!! くわばら!! ”

 韓国人は日本人よりも情が厚く、その思いを心に秘めずあからさまに表現しますので、日本の人は一瞬戸惑いながらも、その心地良さにホロッとするのではないでしょうか!? 一度親しくなったら本当の家族のように分け隔てなく”情を浴びせます。

 情を「注ぐ」でなく「浴びせる」と表現したのは、情を「注ぐ」程度を超えてることを強調するためです。自分が親身になってすべて全力投球するから、その分あなたも目一杯に愛してくれと言うのが韓国式です。

 この熱さにほだされて日韓間で国際結婚するケースが多々ありますが、長く幸せな生活を送ってもらうためにも、このような国民性の違いを冷静に受け止めて結ばれることをお勧めします。

 日本の人にとって感情たっぷりに意思表示をされるとうれしくなってしまう人が多いようです。やがてその思い入れに慣れてくると負担になり距離を取ることもありますが、その態度が韓国人には冷たく感じ「日本人は情がない」と誤解されてしまいます。

<追伸>

 「ウリガ・ナミガ」は元々プサン(釜山)地方でよく使われていた言葉で、政治家たちが1992年の大統領選挙の時に団結を誓った言葉としてマスコミに吹聴され”全国区”になりました。

※権鎔大(ゴン・ヨンデ)韓日気質比較研究会代表の寄稿。ソウル大学史学科卒業、同新聞大学院修了。大韓航空訓練センター勤務。アシアナ航空の日本責任者・中国責任者として勤務。「あなたは本当に『韓国』を知っている?」の著者。

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