7日に行われた、岸田文雄首相とユン・ソギョル(尹錫悦)大統領との首脳会談は、岸田首相が就任以来初めて訪韓して行われた。会談で両首脳は、2011年12月のイ・ミョンバク(李明博)大統領の訪日を最後に途絶えていた日韓首脳同士の相互訪問「シャトル外交」が短期間で本格化していることを歓迎し、日韓関係の改善の動きが軌道に乗ったという認識で一致した。また、北朝鮮の核・ミサイル問題に対して、日韓両国や日米韓3か国のそれぞれの安全保障協力を強化していくことを確認した。
尹大統領は会談冒頭、「東京で首脳会談を開いてから2か月も経たないのに、韓日関係は本格的な改善が明確にあらわられている」と述べた。また、「シャトル外交の再開に12年かかったが、われわれ2人の相互往来は2か月もかからなかった。過去の両国関係が良かった時代を越えて、より良い時代を作らなければならないという責任を感じる」と語った。岸田首相は「シャトル外交を本格化できることを大変うれしく思っている。3月の会談から2か月足らずの間に、さまざまな対話がダイナミックに動き出しており、2国間関係の進展について意見を交わしたい。また、G7サミットも見据え、北朝鮮を含むインド太平洋地域の最新情勢やグローバルな課題における連携についても議論したい」と述べた。
会談で両首脳は、福島第一原発事故の処理水について、日本が韓国の専門家視察団の派遣を受け入れることで合意したほか、今月下旬のG7広島サミットに合わせ、広島の平和記念公園にある韓国人原爆犠牲者慰霊碑を共に訪れて参拝することでも一致した。
会談後には記者会見が開かれ、岸田首相は歴史認識に関し、「おわびと反省」が盛り込まれた1998年の日韓共同宣言も踏まえ、「歴代内閣の立場を引き継ぐことを明確にした。この立場は今後も揺るがない」と強調した。また、太平洋戦争中の徴用をめぐる問題について、岸田首相は「当時、厳しい環境の下で多数の方々が大変、苦しい、悲しい思いをされたことに心が痛む思いだ」とし、過去の歴史や経緯も踏まえ、未来に向けて韓国と協力していくことが日本の首相としての自らの責務だとした。これに対し、尹大統領は元徴用工問題について、韓国政府が発表した解決策を忠実に履行していく考えを示した。
韓国ギャラップは首脳会談後の9~11日、韓国の18歳以上の1000人を対象に調査を実施。会談の成果について聞いたところ、前述の結果となった。「成果がない」と答えた理由は「実益がなかった」が14%で最も多く、これに「歴史問題の無視、謝罪なし」(12%)、「韓国が譲歩しただけ」(11%)と続いた。一方、「成果があった」と答えた理由として最も多かったのは「韓日関係の改善」で32%だった。
また、尹大統領への肯定評価は35%、否定評価は59%で、いずれも前週より2ポイント上がった。理由は肯定・否定ともに「外交」がトップとなり、国内で割れる外交姿勢への評価が反映された結果となった。
尹大統領は会談後の9日の閣議で、日韓関係に言及し、「少し前までは想像もできなかったことが今、韓日間で行われている」とし、「自由民主主義の価値を共有する両国が交流・協力しながら信頼を築いていけば、韓日関係が最も良かった時代も超え、新しい未来を開拓できる」とさらなる友好的な関係構築に自信を示している。
尹大統領は今月10日に就任から丸1年を迎えた。大統領選候補者時代から日韓関係改善に意欲を示し、この1年の間に、日韓最大の懸案であった元徴用工訴訟問題の解決策を発表したほか、12年間滞っていた日韓シャトル外交も本格的に再開させる道筋をつけた。「戦後最悪」とまで言われた日韓関係を短期間でここまで改善させたことは大きな成果と言えるが、国民の評価にはあまりつながっていないことが、今回の調査結果で改めて浮き彫りとなった。
尹大統領はなぜ今、両国の関係改善を急ぐ必要があるのか、改善されるとどのような国益があるのかを国民により丁寧に説明する必要がある。また、評価につなげるには時間も必要で、批判はあってもブレずに意志を貫くことが就任2年目以降、さらに重要になってくるだろう。
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