インフレ抑制法は、大企業や富裕層の課税強化などから財源を確保して財政赤字を削減し、EV購入やクリーンエネルギー導入といった気候変動対策と医療費負担軽減対策に4300億ドル(約59兆円)規模を投じるというもの。バイデン政権が最も力を入れている政策の一つだ。米国政府はEV1台当たり最大7500ドル(約103万円)の補助金を出し、2030年までに米国内の新車販売の半分をEVにする目標を掲げている。
しかし、同法に基づくEV補助金の対象になるのは北米内で最終的に組み立てられたEVのみ。EVに搭載するバッテリーも、北米または米国と自由貿易協定(FTA)を締結した国で調達されたリチウムなどの重要鉱物を一定割合以上含んでいることを条件に定めている。
韓国の自動車メーカー、現代自動車グループは韓国でEV車両を生産しているため、補助金の対象から外れる。このため、補助金対象となる他の自動車メーカーの同クラスEVよりも割高となることから、韓国側は販売上不利になるとして、同法の成立当初から懸念した。
韓国政府は今年4月、北米で生産設備への投資を計画している電池メーカーに対し、今後5年間で7兆ウォン(約7662億1500万円)規模の資金援助を行うと発表した。インフレ抑制法への対応を支援するためだ。同法に基づき1台当たり3750ドルの税額控除を受けるには、北米で電池部品の50%以上を製造・組み立てることが必要となる。韓国・産業通商資源部(部は省に相当)のイ・チャンヤン長官はこの方針を発表した際、「インフレ抑制法の施行以降、急速に変化する状況に効果的に対処するために、政府と産業界の双方が協力して解決策を見つける必要がある」と述べていた。
また、米国政府が昨年12月に発表した追加指針で、リース用として販売される商業用車両には条件をつけずに補助金を支給すると明らかにしたことを受けて、現代自動車グループはリース販売の割合を拡大する戦略に乗り出した。
これが功を奏し、韓国のシンクタンク、産業研究院が今月10日に明らかにしたところによると、韓国車は今年1~3月期の米国のエコカー輸入額が21億3000万ドルとなり、最も多かった。これに、日本(18億8000万ドル)、ドイツ(15億4000万ドル)、カナダ(12億ドル)、英国(4億3000万ドル)の順で続いた。韓国は2020年まで米国のエコカー輸入ランキングで4位だったが、2021年には2位に上昇。昨年から首位を維持している。
また、米国内メーカーも含む今年上半期(1~6月)の米EV市場で、現代自動車グループの現代・起亜自動車は販売台数がテスラ(33万6892台)に次いで3万8457台で2位となった。米CNBC放送は、インフレ抑制法による税額控除対象から除外された現代・起亜自動車が2位となったことについて「とりわけ注目に値する」と評した。
前述のように、リース用として販売される商業用車両は北米地域で生産されなくても補助金が支給されることから、現代自動車は米国内でのEVのリースの割合を年明けの2%から現在は30%以上に広げているという。
韓国のシンクタンク、産業研究院は、米国を中心に自動車の輸出好調を維持するためには、輸出市場の多角化政策の推進に加え、中長期的な自動車産業競争力の確保に向けて対策を講じる必要があると指摘した。
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