韓国では13日以降、チュンチョンナムド(忠州南道)から東部のキョサンサンプクド(慶尚北道)にかけての広い範囲で雨が降り続け、川の氾濫や土砂崩れが各地で発生した。17日午後6時までに40人が死亡、9人が行方不明になっている。これまでに、忠清南道と慶尚北道を中心に、公共施設789件と、住宅などの私有施設352件の被害が確認されている。
清州市では地下道に、付近を流れる川の水が流れ込み、路線バスなど15台が取り残され、これまでに13人が死亡、今も数人の行方が分かっていない。
豪雨によって世界遺産や史跡、天然記念物などの文化財にも被害が出ている。韓国文化財庁は16日午後5時までに、豪雨による国家遺産への被害は計34件に上ることを明らかにした。ユネスコ世界遺産に登録されている「百済歴史地域」の一つで、中部のコンジュ(公州)市にある山城「公山城」では楼閣の「マンハル(挽河楼)」が一時浸水した。また、別の楼閣「公山亭」付近の城壁の一部が流失したほか、西側の門楼「錦西楼」の下段でも土砂が流出したという。
リトアニア、ポーランド、ウクライナ歴訪を終えて17日朝に帰国した尹大統領は、中央災難(災害)安全対策本部を立ち上げた後、大きな被害が出た慶尚北道のイェチェン郡を訪れ、被害状況を視察した。また、与野党は予定した日程を取りやめるなどし、対応にあたっている。与党「国民の力」のキム・ギヒョン代表は17日、党の最高委員会議を取りやめ、忠清南道の被災地を訪れた。最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)代表は最高委員会議で、「復旧に積極的に協力する」と表明した。
また、今回、清州市にある地下道で発生した浸水事故で多数の人的被害が発生したことを受け、警察が捜査に着手した。現地メディアによると、水があふれ出た川に洪水警報が出されていたにも関わらず、地下道に交通規制が取られていなかった。また、現場周辺で行われていた工事の影響で、川の堤防も本来より低い、仮設のものだったという。警察はこうした実態が大きな被害につながったとみて、業務上過失致死傷の疑いで調べている。
韓国では昨年8月、首都圏を中心に大雨となり、首都・ソウルでは、115年の観測史上、最大規模の記録的豪雨となった。半地下の住宅では4人が死亡し、ソウル市は大々的な「半地下解消」対策を発表した。
約1年前の惨事を繰り返すまいと、先月25日の梅雨入りを受けて、政府は「先制的かつ体系的な水害対応をする」と表明した。しかし、韓国紙の東亜日報は先月、「政府の約束とは異なり、梅雨が始まるまで短期的な浸水対策さえできていない所が多い」と指摘した。昨年8月の豪雨でクローズアップされた半地下について、同紙は「半地下から抜け出した世帯は全21万世帯のうち1%に過ぎない」と問題視した。
今回の豪雨でも行政などの対応の不手際が指摘されており、清州市の地下道で発生した浸水事故は「人災」との声も出ている。中央日報は、17日付の社説で、「もちろん雨が多く降った。それでも防ぐことのできない天災事変ではなかった」と指摘。清州の浸水事故については「官が主導した工事での安全無視、地方自治体の安易さ、政府の災害管理監督不良が招いた公共災害だ」と批判した。
さらに同紙は「気候変動の影響のためなのか、記録的集中豪雨が毎年繰り返されている。被害様相も似ている。わかっていても被害を受ける後進国型災害だ」と指摘した上で、「慣行的対応から離れた科学的で体系的な大雨対策の刷新が必要だ」と主張した。
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