中国政府は新型コロナの感染が最初に拡大した2020年1月以降、国内の旅行会社に対して海外への団体旅行の取り扱いを制限してきた。しかし、今年2月に一部の国を対象に解禁したのに続き、先月10日、韓国や日本、インド、米国、豪州、英国、ドイツなどに解禁対象国を広げた。
中国から韓国への団体旅行が完全に自由化されたのは、コロナ禍前の2017年3月以来で、約6年5か月ぶりの解禁となった。中国は、在韓米軍による「THAAD(高高度防衛ミサイル)」の韓国配備に反発し、2017年3月に韓国への団体旅行商品の販売を禁止した。その後、2018年に上海や北京など中国国内の6地域を出発する訪韓団体旅行が許可され、同年11年にはオンライン旅行会社を通じた団体旅行商品の販売が認められた。2019年後半からは全国的に団体旅行が一部可能になったが、2020年1月の新型コロナの発生を受け、中国政府は韓国を含め、全世界への自国民の団体旅行を禁止した。
韓国・ソウルの代表的な観光スポット・ミョンドン(明洞)は、2004年頃の日本における韓流ブームが去ると、中国人観光客にターゲットをシフトさせ、誘客を図った。100人以上の単位で団体客が訪れていたが、前述のように、長い間そうした光景は見られなくなっていた。ようやく、個人旅行から団体旅行まで、中国人の韓国旅行が完全に自由化され、韓国の観光業界は活気を帯びている。中央日報によると、先月23日には中国人の団体客約150人が明洞のロッテ免税店を訪れ、ショッピングを楽しんだという。ロッテ免税店の関係者は同紙の取材に、「1週間の中国人観光客による売り上げは、前週比およそ16%増えた」と話した。
また、同紙によると、リゾート地としても有名な南部のチェジュ(済州)の観光公社は、年末までの4か月間に1万5000人~2万人が訪れると見込んでいる。観光公社の関係者は同紙に「中国人観光客が国慶節の連休(9月29日~10月6日)をピークに済州を訪問すると予想している」とし、「9月15~17日には中国・広東省の国際観光産業博覧会に行ってPRする」と話した。
韓国の中央銀行、韓国銀行が今年2月に公表した報告書によると、中国人観光客が100万人増加すると韓国のGDP(国内総生産)は0.08%増えると推定される。仮に、今年の訪韓中国人観光客がコロナ禍前の2019年の半分の300万人にとどまったとしても、GDPは0.2%以上になり、中央日報は「韓国銀行の今年の韓国経済成長見通し1.4%と比較しても少なくない水準だ」と解説した。
一方、中国の複数の大手メディアは先月29日、東京電力福島第1原発の処理水海洋放出後、日本への団体旅行のキャンセルが相次いでいると報じた。この報道を受け、日本メディアは「日本経済界は中国政府が(先月)10日に訪日団体旅行を解禁したことを歓迎したが、インバウンド(訪日客)回復は期待外れになる可能性がある」(共同通信)、「団体旅行が解禁され、日本で高まった観光需要拡大への期待がしぼみかねない」(日本経済新聞)などと懸念を伝えている。斎藤鉄夫国土国通相も29日の記者会見で中国からの訪日旅行に一部キャンセルが発生していることを明らかにし、今後の動向を注視する考えを示した。
中央日報は、2012年に日中間で領土をめぐる対立から、中国で反日感情が高まった際、韓国を訪れる中国人観光客が増えたと指摘。当時を思い起こさせるように、中国では現在、反日感情が急速に高まっており、同紙は、中国人の旅行先が日本から韓国に流れる可能性があるとの見方を伝えた。
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