コメルサントによると、金正恩氏とロシアのプーチン大統領による会談前、北朝鮮の警護員が最も神経を尖らせたのは椅子だった。金正恩氏が座る予定の椅子をさまざまな方向に揺すってみると、顔をしかめ首を左右に振った。金正恩氏とプーチン氏の椅子は、後ろ側に座面をしっかり支える脚が付いていないデザインだった。
警護員は表情をこわばらせたまま、椅子に座ったり立ったりを繰り返した。コメルサントは「彼らの生死がかかった問題だった」と解説した。結局、金正恩氏が使う椅子は会場に同席する閣僚らの椅子の一つと取り替えられた。デザインは全く同じながら、警護員はより安定感があると判断したもようだ。
金正恩氏が座る椅子が決まると、警護員は白い手袋をはめ、丁寧に椅子を拭いて消毒した。
警護員は会談前日の12日夜、同基地内のアムールガス公社の職員宿舎で泊まった。会談当日は朝早くから、白いシャツと黒のスーツ姿で金正恩氏の到着を待った。
コメルサントは、金正恩氏を乗せた装甲列車が到着する駅のプラットホーム一帯で警護員が何かを持って走り回る姿に目を留めた。警護員が手にしていたのは、温度や風速、露点などを測る携帯式の気象観測機だった。
金正恩氏が装甲列車から降りると、「年季は入っているがよく整備された」リムジンが姿を現した。メルセデス・ベンツの最高級車「マイバッハ」だ。
いよいよ金正恩氏とプーチン氏と対面するという場面では、北朝鮮とロシアとカメラマンの場所取り争いが見られた。北朝鮮のカメラマンは絶対に譲るまいとするように動かず、自分たちの場所を守った。この様子にコメルサントの記者は「私なら無条件で北朝鮮の同僚(記者)に譲るだろう。彼らにとっては生死の問題だったからだ」と記した。
北朝鮮とロシアの報道陣が競り合う姿に、プーチン氏からは軽くたしなめるような言葉もあった。
この日、金正恩氏とプーチン氏は基地内で、ロシア製ロケット「アンガラ」「ソユーズ2」をはじめ主要施設を一緒に見て回った。ミサイルの周りにはハングルで書かれた説明文が用意されており、金正恩氏はじっくり読んでいたという。
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