金総書記は専用列車を利用してロシア入りした。北朝鮮の最高指導者が外国訪問で専用列車を利用するのは、金総書記の祖父、キム・イルソン(金日成)主席からの伝統となっている。ボストーチヌイ宇宙基地で金総書記を出迎えたプーチン大統領は、握手を交わした後、金総書記を基地内に案内。展示されている宇宙船などを説明した。
その後、両首脳は会談し、プーチン大統領は「経済協力や地域情勢などを話し合う必要がある」と述べた。これに金総書記は「帝国主義と対抗していくために結束を維持できると確信している。両国関係を最重視して発展させていく」と強調。また、ロシアによるウクライナ侵攻を念頭に「ロシアは自らの権利と安全などを守るために正義の偉業を進めている」と支持する考えを示した。
会談を終えたプーチン大統領は、国営テレビなどの取材に応じ、北朝鮮との軍事技術協力について「展望がある」と述べ、金総書記と協議したことを示唆した。ただ、具体的な内容は明らかにしなかったが、韓国の聯合ニュースは「双方は利害関係により、ウクライナ侵攻のためにロシアが必要としている砲弾などの通常兵器を北朝鮮が提供し、その見返りにロシアが北朝鮮に偵察衛星をはじめとする先端軍事技術を与える取引をした可能性がある」と伝えた。
ロシアは昨年2月末にウクライナを侵攻して以降、1年半以上戦争を続けている。激しい戦闘が続き、弾薬の在庫が消費量に追いつかず、北朝鮮から弾薬を確保しようとしているとみられる。また、北朝鮮は今回の金総書記の訪露に、軍部の実力者や軍需産業の責任者を多数同行させていたことが確認されている。韓国紙のハンギョレは「北朝鮮の訪露団の面々を見ると、砲弾と先端軍事技術を交換する形の朝ロ兵器取引の意図がうかがえる」と指摘した。同紙によると、同行者の一人、パク・テソン労働党書記は、北朝鮮が軍事偵察衛星を打ち上げるために設置した国家非常設宇宙科学技術委員会の委員長を務めている人物だという。また、キム・ミョンシク海軍司令官は、北朝鮮がロシアからの技術提供を望んでいる原子力潜水艦の関連業務を担当しているという。
約4年半ぶりにロ朝首脳会談が開かれたことに、日米韓は警戒を強めている。松野博一官房長官は「(日本政府は)第三者に対し、ロシア軍等への支援は行わないよう求めており、関連する動向を懸念を持って注視する」と語った。内閣改造で新たに外相に就任した上川陽子氏は、ロ朝首脳会談で、プーチン大統領が北朝鮮の「人工衛星」の発射技術支援を表明したことについて「国連安全保障理事会決議違反につながる可能性がある」と懸念を示した。
米国のバイデン政権はロ朝が武器供与で合意した場合、両国に追加制裁を科す方針を示している。米ホワイトハウスは13日(現地時間)、「北朝鮮の軍事力を強化させるいかなる合意にも重大な懸念を持っている」などとした。
韓国政府は北朝鮮とロシアが軍事面で協力し、兵器の供与などを行わないよう一貫して求めており、ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領も「国際社会の平和を害する北朝鮮との軍事協力の試みは、直ちに中断されるべきだ」と強調している。キム・ヨンホ統一部長官は14日、前日の首脳会談に関し、「軍事協力と兵器取引を深く憂慮せざるを得ない」と述べた。
韓国の聯合ニュースは「ロシアの先端軍事技術が実際に北朝鮮に移転されるまでには多くの時間を要し、今回の首脳会談自体が米国に対するけん制である可能性もあるものの、北朝鮮とロシアの軍事的な密着がこれまでとは違うレベルで進む可能性が高いのは明白だ」と解説した。
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