この当局者は、北朝鮮へのぜいたく品供給が国連安全保障理事会の北朝鮮制裁違反に当たる上、金正恩一族に関する情報は極秘扱いとされているため、正確な数値を把握することができないとしながらも、脱北者の証言と情報当局が得た情報を基にこのように推定したと説明した。北朝鮮が新型コロナウイルス対策として国境を閉ざしていた時期はぜいたく品の搬入規模も一時的に縮小したが、2022年後半から回復傾向にあるという。
貴金属・時計、高級ブランド品といったぜいたく品は国連安保理による制裁対象品目だ。統一部によると、金正恩一族が使うぜいたく品の調達には、書記室の下で金正恩氏の秘密資金を管理する「党39号室」が関わっており、実際の購入は北朝鮮と友好的な国や欧州に派遣された公館関係者や商社員らが担う。
各国で買い集めたぜいたく品を中朝境界地域に集めた後、陸・海・空路で輸送する。何カ所も経由させることで最終目的地を分かりづらくして密輸するという。新型コロナ下では陸路での搬入が難しかったため、貨物船にひそかに積んで持ち込んだ。国境封鎖の緩和に伴い中国・丹東と向かい合う新義州の陸路利用が再開され、近ごろは貨物列車と車両を使う割合が拡大していると統一部は分析した。
公の場でぜいたく品を身に着けた金正恩一族の様子も確認されている。金正恩氏はスイスの高級ブランド、IWCの腕時計をはめている姿が何度か見られた。妻の李雪主(リ・ソルジュ)氏はスイスの高級腕時計モバードを、娘の金ジュエ氏はフランスの高級ブランド、クリスチャン・ディオールのコートを着用していたことがある。
金正恩氏は先月半ばのロシア極東訪問時にもIWCをはめ、独モンブランのペンを使った。妹の金与正(キム・ヨジョン)党副部長はディオールのバッグを持っていた。
統一部当局者は「一般住民の目を気にせず、ぜいたく品消費を誇示しているようだ」と指摘した。
エリート層だった脱北者の証言から、金正恩氏が党と政府の高官、軍幹部らにぜいたく品をたびたび贈っていたことも分かった。金正恩氏は日ごろから目をかけたり、軍事分野で特別な成果を挙げたりした幹部に高級車を与え、一族の誕生日や党大会などの行事記念にオメガなどスイス製高級腕時計や最新の電子製品を贈ったこともあったという。
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