韓国映画「デシベル」のキャスト、公開日、あらすじ
本作の舞台は多くの人々が密集する大都会。公園、プール、サッカー場といった場所に、周辺の騒音がある一定のデシベルを超えると、爆発までの時間が半減して爆発する特殊な時限爆弾が設置される。音に反応して作動する爆弾のアイデアは、監督が子供のころに行ったプールや、そこで耳にした笛の音を思いだしたことをきっかけに始まった。
「私が爆発物を通して伝えたかったことは、『統制できない』ということです。統制できず、主人公がいくら走りまわっても、プールのような騒音が制御できないところに爆発物が設置されたら、それを止めることはできません。しかもその爆発物は一つだけ設置してあるわけではなく、AでいくのかBでいくのかを主人公に選ばせます。『統制できない状況でお前ならどうする?』と、爆弾魔側が主人公をもてあそんでいるわけです。その理由はたぶん主人公が統制してはならない状況を、無理やり統制してしまった過去があるからだと思ったんです。この映画は、善が悪に勝つということではなく、一人の男が堕落する姿を描いています。」
舞台となった場所については、「物語は主人公を殺したり、人々を殺したりすることが目的ではなく、主人公を堕落させることが目的です。そういった制御しきれない状況で、『お前ならどうする?』という質問を投げかけていくもので、爆発物を置く場所はうるさい音がするような制御できない場所が必要でした。そういったことで、公園とかプール、サッカー場のような場所が浮かびました。主人公がいくらあがいてもそういった音はどうしようもないですよね。そういった状況に主人公を追い込みメンタルを崩壊させていきます。主人公を堕落させるということが目的なので、その統制できない混雑している空間が必要であり、プールや公園、サッカー場が浮かびました」と明かした。
本作は豪華なキャストが揃ったことでも話題となった。騒音反応型爆弾テロを防ぐために孤軍奮闘する元海軍副長カン・ドヨンを演じたのは、映画『江南ブルース』『最も普通の恋愛』をはじめ、作品ごとにロマンチックな雰囲気と圧倒的なカリスマ性を発揮してきたキム・レウォン。監督はキム・レウォンの背中で演じる姿にほれ込んだという。
「カン・ドヨン役を演じたキム・レウォンさんは頼もしいリーダーでした。映画の経歴も多いですし、現場での彼のリーダーシップというか、そういった姿が実際の将校のような感じでした。カン・ドヨンというキャラクターは何もかもうまくいくヒーローというよりは、内面から崩れていく男の姿を描いているので、キム・レウォンさんを見ているとそんな姿がぴったりだなと感じました。表には出さないけど、ものすごく思慮深くて、その内面の演技力が素晴らしい俳優です。ただじっとしている姿を見ただけでも、あの人は辛いんだなと感じられますし、そう感じたから劇中ではキム・レウォンさんの後ろ姿のシーンが結構入っています。キム・レウォンさんの後ろ姿はなんだかもの悲しくてやるせない気持ちになるんです。キム・レウォンさんは上手く主人公のキャラクターを表現してくれましたし、彼自身が持つオーラもとても気に入りました。」
高IQの凶悪テロリストを演じたのは、ドラマ「ビッグマウス」や「ロマンスは別冊付録」、映画『THE WITCH/魔女 ―増殖―』などジャンルを問わない演技力で、抜群の存在感を放つ若手実力派俳優イ・ジョンソク。悲しみを背負いながら狂気に満ちたテロリストを熱演している。
「イ・ジョンソクさんは恐ろしいテロリストになり、主人公を苦しめる役を演じます。この映画の骨組みとなる部分がキム・レウォンさんとイ・ジョンソクさんとの接点です。正反対の演技をするには、イ・ジョンソクさんくらいの演技力とオーラが必要となります。イ・ジョンソクさんの肌はとても白くて、目を見ると温かいけど、少し離れて見ると冷たい印象を受ける両面性のある俳優なので、テロリストの役を演じるのに一番理想的な俳優だと思いました。そして、実際に撮影に入ってみると、性格の違う2つのキャラクターを準備して完璧に演じてくれて本当に驚きました。」
信念のある海軍潜水艦音響探知下士官チョン・テリョンを演じたのは、ドラマ「私のIDはカンナム美人」「女神降臨」で主演を務め、その漫画から飛び出してきたような美しい顔で“顔の天才”“顔面国宝”と評され日本でも絶大な人気を誇るK-POPボーイズグループ「ASTRO」メンバーのチャウヌ。
「映画に出てくる分量は多くないのですが、彼が持っているコアコンピタンスはすごいと思いました。劇中のすべてのことがチョン・テリョンによって起こることなので、『チョン・テリョンという人物がどんなキャラクターでなければならないのかを理解した上で演じることで、これから恐ろしい惨事が起きると観客たちを納得させなくてはいけない』というプレッシャーもあったと思います。私もチャウヌさんが持っている最大限の姿を引き出さなければならないですし、とても大変だったはずなのに、チャウヌさんはそういった部分をとても上手く演じていました。平凡で優しい姿から、恐怖からくる震えを我慢しなければならない表現。それから、上司が恐怖で倒れるシーンがあるのですが、上司に対して言うセリフが胸にグッときて、私はそのシーンで彼に惚れました。とてもかっこよかったです。本当にいい俳優で、現場の雰囲気もよく導いてくれたと思いますし、現場で彼はよく褒められていました。」
※ネタバレになるので、どんなセリフだったかは控えます。
副長と共に海軍潜水艦“ハルラ”の乗組員を率いる“海軍潜水艦大尉”を演じたのは、ファン・イノ監督作品の『恋は命がけ』『その怪物』に続き3作目となるイ・ミンギ。10年以上の親しい仲の2人だが、イ・ミンギの演技に何度も驚かされたそうだ。
「イ・ミンギさんは、プライベートでも親しい仲なんです。数日前にも私の地元でお酒を飲みました。お互いの家の近所でお酒を飲んだりする関係が10年以上続いています。そういった仲ということもあり今回の役を頼むことになったのですが、忙しい中でも快く引き受けてくれました。いざお願いしてみると、彼のことはよく知っている関係でありながら、現場では驚かされることがたくさんありました。実はミンギがあそこまでやってくれるとは思いませんでした。ほかのロマンチックコメディの作品を撮っている中で本作に出演してくれて、ロマンチックコメディのキャラクターの感情でいたので、この役を上手く表現できるかどうかちょっと心配していたんです。でも、潜水艦の撮影現場の雰囲気を見ていたら、ミンギはそこでわざと雰囲気を暗くして音楽を流していたんです。なぜなら、気が沈んでいる感情で演じなければいけないので、あえてそういった空間を作ることで感情をコントロールしていました。そして、その感情のまま素晴らしい演技をしてくれました。私が本当に好きなシーンで、カン・ドヨン副長を説得するシーンがあるのですが、私が求めていたものが100だとしたら、彼は200の演技を見せてくれました。その演技を見て、とても幸せでしたし、嬉しかったことを覚えています。本当に真面目で堅実でいい人です。とても好きな俳優さんです。」
劇中、キム・レウォンは海兵隊を率いる副長を演じているが、現場でもリーダーシップを発揮していたそうだ。
「私が考えるリーダーは、高い位置からじっくり眺めているような人がリーダーだと思います。例えば、群れの中で一人だけが遅れているとしたら、その遅れた人を慰めて一緒に連れていこうとするのがリーダーの役目だと思うんです。潜水艦のシーンの場合、端役の方々がたくさん出演していたのですが、演者同士もお互いに面識のない状態でした。でも、シチュエーションとしては一つの家族のような演技をしなければならない状況だったため、キム・レウォンさんがリーダーシップを発揮してくれました。キム・レウォンさんは先輩であり素晴らしい役者なので、出演者一人一人にアドバイスをしていました。例えば、チャウヌさんが初めて現場入りしたときはよそよそしい感じでしたが、そんな彼に近づいていって『おい、どうしてた? かっこいいね。兄さんって呼んで』など、気楽に接したことでチャウヌさんが笑っていたんですよ。そこから2人で座って話すようになっていたんです。チャウヌさんは言葉数が多いほうではないので、誰かが気楽に近づいていくことで打ち解けていくタイプなんです。キム・レウォンさんはそれを感じ取って、場を盛り上げてくれました。それだけでなく、端役の皆さんも近寄りづらくならないように、ビールパーティをしようと計画を立ててくれました。そのパーティは、監督もスタッフも招待されず、役者たちだけで開かれ、ビールやおつまみを買って一日を過ごしたそうです。そこが役者同士が話せる機会となり、端役の皆さんもキム・レウォンさんにだったり、チャウヌさんだったり、イ・ミンギさんだったり、一緒に演じる俳優たちと役についていろいろ話し合いながら楽しい時間を過ごしたようです。そういった時間を設けようとは私は考えもしなかったのですが、必要だと考え用意してくれたのがキム・レウォンさんでした。そういった面でもリーダーシップがすごい俳優だと言えますよね。」
リーダーシップによって共演者やスタッフからの信頼が“あつい”キム・レウォンだったが、もちろん演技に対する熱量も半端なかった。劇中のカーチェイスや格闘シーン、高層ビルから飛び降りるシーンなどは、スタントなしで自らこなしたそうだ。「スタントなしで演じる」と言われたときの監督はどんな気持ちだったのか。
「2つの要素があるのですが、1つはキム・レウォンさんがフィジカルが強くて運動神経が良いことです。ゴルフのレベルも高いですし、釣りもしていて運動も好きな方なので、運動神経はスタントマンに劣らないくらい良いです。そして、自らアクションシーンをするという欲望と意志がひときわ強くて、彼は時間が経つにつれて役にどんどん入っていくスタイルなので、アクションシーンを撮影した後半の時には、完全にカン・ドヨンとキム・レウォンを引き離せないくらい役に入っていました。なので、私が彼にアクションを止めさせようとしても私の言うことを聞くはずもなかったので、私は快くそうしようと言いました。でも、怪我をしないように最善を尽くして、スタントマンたちとも一緒に準備をして、祈る気持ちで見守っていました。最悪、大変なことが起きるかもしれないですから。でも単純に運動神経が良いだけでなく、非常に頭が切れる俳優なので、どうしたら怪我をせずに演じることができるかを知っているんです。なので、怪我することなく自分の役をこなしていました。」
監督はスタントなしの演技だけでなく、映画全般的にキム・レウォンのアイデアが入っていると話していた。
「衣装に関しては一着で最後までいくので、私はこの映画が善と悪の対決で善が勝つという話というよりは、堕落した男の姿を見せたかったので、白い制服が時間が経つにつれてボロボロになって破れて、血や汚れがついて、最後は雑巾のようになってしまう、そういったものを見せたかったんです。なので、最初から最後まで海軍の制服を脱がすことをしませんでした。キム・レウォンさんとは役についてたくさんのことを話し合いました。『ここではこういったセリフが合う』とか『ここではこういった動線が合う』など、アイデアをたくさん出してくれました。特定の場面でアイデアが入ったというよりは、全般的に彼のアイデアが入っていたと思います。だからアクションシーンも直接されましたし、カン・ドヨンというキャラクターはキム・レウォンさんでなければ上手く演じきれなかったと思います。本当に完璧に演じてくれました。」
本作は緊迫感あふれるアクションシーンだけでなく、テロ事件を追うことになった特ダネ記者のオ・デオを演じたチョン・サンフンが加わることで、コミカルなシーンも織り交ぜられている。本作でもファン・イノ監督らしい独自の演出力で観客を楽しませてくれる。そんな監督の次の作品も気になるところ。
「今回はとても重厚な作品でちょっと大変だったので(笑)、次はライトな感じのコメディとかロマンスとか、SFヒューマンドラマなど、子供たちが出てくるようなもっと楽しい作品を作ってみたいです。」
最後に監督は、日本の観客に「日本には何度が行ったことがあるのですが、行くたびに思うことは、街並みは韓国と近いものがあるのですが、まったく違う感じがするんです。なので、この映画が日本の観客の皆さんにどのように見えるのかとても気になります。楽しんでもらえたら本当にうれしいです。この映画はヒーローとして崇められた一人の男が堕落していく様が見どころだといえます。なので、善が悪に勝つ話ではありますが、その中でなぜ悪役があんなことをしたのか、なぜ悪役が主人公を制御不可能な状況に追い込んだのか、という観点から見ると楽しめる作品です。楽しんで見ていていただければと思います」とメッセージを伝えた。
『デシベル』
大都市に仕掛けられた“騒音反応型爆弾”。高IQ爆弾魔の標的は、元海軍副長。人質は釜山市民。連続爆弾テロ事件に隠された悲しい過去とはー。
STORY
大都市・釜山。ある一軒家で起こった爆破事件のニュースを目にした元海軍副長カン・ドヨンにかかってきた一本の電話。「次のターゲットは、サッカースタジアムだ。通報したり観客を避難させたら爆発する」。それはテロリストからの脅迫だった。仕掛けられたのは普通の爆弾とは違い、騒音が一定のデシベルを超えると制限時間が半減して爆発する特殊爆弾だ。ドヨンは事態を把握する間もなく、5万人の観衆で埋め尽くされた釜山アシアード競技場に向かうが…。
監督: ファン・イノ
出演:キム・レウォン、イ・ジョンソク、チョン・サンフン、パク・ビョンウン、チャウヌ(ASTRO)
イ・サンヒ、チョ・ダルファン、イ・ミンギ
2022|韓国|110分|シネスコ|5.1ch|原題:デシベル|英題:DECIBEL|字幕翻訳:福留友子|G
配給:クロックワークス
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公式HP:https://klockworx-asia.com/decibel/ X:@decibelmovie #デシベル
11月10日(金)新宿バルト9ほか全国公開
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