<W解説>「超学歴社会」の韓国で大学修学能力試験、今年は浪人受験者が多い理由とは?
<W解説>「超学歴社会」の韓国で大学修学能力試験、今年は浪人受験者が多い理由とは?
きょう16日、韓国では日本の大学入学共通テストに相当する、大学修学能力試験(修能)が行われている。「超学歴社会」として知られる韓国だが、受験生にとって、修能はその結果によって大学はもちろん、その後の将来も左右するとも言われる。ユン・ソギョル(尹錫悦)大統領も15日、自身のSNSで受験生に向け激励のメッセージを投稿した。今年は50万4588人が志願しており、「仮面浪人」を含む浪人受験者数が過去最大規模となるとみられている。その理由は、尹大統領が修能をめぐって今年6月に打ち出した方針と深く関係している。

修能は毎年11月に行われる。韓国の大学入試は随時募集と定時募集に分かれる。随時募集は学校生活記録簿、自己紹介書、教師推薦書、面接などの総合評価で選考される。一方、定時募集は修能の成績で選別される。

修能の日ばかりはさまざまな機関が協力し、あらゆる面で受験生が優先される。官公庁や一部企業は出勤時間を遅らせ、ソウルの公共交通機関は地下鉄やバスを増便する対応を取る。また、各地の空港では、リスニングの試験中、航空機の離発着が禁止される。

韓国社会は言わずと知れた「超学歴社会」。数ある大学の中でも、ソウル大学、ヨンセ(延世)大学、コリョ(高麗)大学の3校は名門難関大学として社会的評価が高く、アルファベット表記の頭文字を取って「SKY」と呼ばれる。大学卒業後、大企業に就職することを見据え、受験生たちは「SKY」に代表される難関大学を目指す。

修能では毎年、高校の学習範囲を超えた超難問「キラー問題」が出題される。厄介なことに、このキラー問題は配点が高めで、この問題のでき次第で入学できる大学も変わるとも言われている。高校の授業だけでは太刀打ちできない「キラー問題」への対策も必要となることもあって、受験生たちはこぞって塾・予備校に通う。こうした事情が親の過度な教育費支出を誘発する一因にもなっている。借金をしてでも子供の教育費を捻出(ねんしゅつ)する親も少なくないという。

「年金」「労働」「教育」の「3大改革」を国家的課題として掲げている尹大統領は、塾など学校外の教育機関に依存しすぎている状況を憂慮。今年6月、学校の授業で扱わない内容を修能の出題から除くよう教育相らに指示した。このことが報道されると、受験生や保護者らの間では「今年の修能は易しくなる」といった憶測が飛び交う事態となった。直後に教育部(部は省に相当)は「大統領の発言は『公正な修能』をめぐる指示だった」などと火消しに乗り出したが、最大野党「共に民主党」は当時、「尹大統領の軽口で、罪のない生徒と保護者だけが大混乱に陥った」などと批判した。

尹大統領の指示の意図するところは、私教育に偏重している韓国の教育を改め、公教育のさらなる充実を図ることを念頭に置いたものだった。尹大統領は今年の新年の辞で教育改革について「未来世代が望む教育が受けられるよう、教育課程を多様化し、誰にでも公正な機会が与えられるようにする」と語っている。

しかし、その後も混乱は収まりきらず、今年9月に行われた模擬試験では浪人受験者が急増した。昨年、思うように点数が取れず浪人を余儀なくされた生徒に加え、今春、第1志望校ではない別の大学に入学したものの、今年の修能は易化するとの期待感から「仮面浪人」に切り替え再チャレンジする受験生がいることも影響したとの見方が出ている。ちなみに今年の模擬試験では「キラー問題」はなく、全て高校の教育課程の範囲内から出題された。このことから、今年の修能は「易化」するとの見方がより強まっている。

尹大統領の指示から、韓国の受験事情が大転換しそうな雰囲気の中で始まった今年の修能。尹大統領は15日、自身のSNSで「これまで準備してきた力を最大限発揮して下さい」などと受験生を激励した。

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