<W解説>二大政党の激突の構図に新党も=韓国総選挙まで1か月切る
<W解説>二大政党の激突の構図に新党も=韓国総選挙まで1か月切る
4月10日投開票の韓国総選挙まで1か月を切った。ユン・ソギョル(尹錫悦)政権の「中間評価」と位置付けられており、保守系の少数与党「国民の力」が安定的な政権運営に向けて国会議席の過半数を確保できるかが焦点だ。一方、過半数維持を目指し最大野党「共に民主党」は、「政権審判の選挙だ」と訴えて攻勢を強めている。世論調査機関「韓国ギャラップ」が今月8日に発表した調査結果では、「国民の力」の支持率は37%で1か月前より3ポイント上昇した一方、「共に民主党」の支持率は31%で4ポイント減少した。

韓国国会(定数300)は一院制で、解散がなく、4年に1度の総選挙で議員を選ぶ。小選挙区で254議席、比例代表が46議席を決める。改選前は「共に民主党」が過半数の158議席を持ち、与党「国民の力」は114議席にとどまっている。

「国民の力」は次の大統領候補と目されるハン・ドンフン(韓東勲)氏をトップに据え、選挙に臨む。韓氏は党の支持率低迷などを受けて辞任したキム・ギヒョン前代表の後任として、昨年末に非常対策委員会の委員長に就任した。総選挙を前に、大衆に人気がある韓氏を党トップに起用することで若い世代や無党派層の支持拡大を図ることが狙いだった。韓氏はソウル市出身の50歳。ソウル大学在学中に司法試験に合格し、その後、検事となった。2003年に起きた財閥SKグループの系列会社の粉飾会計事件や、2016年に表面化したパク・クネ(朴槿恵)政権下での国政介入事件など、数々の大型事件を担当した。大検察庁(最高検)検事長など検察で要職を務めた「エリート検事」で、尹大統領の検察時代からの最側近とされる。それゆえに韓氏は「尹氏のアバター(分身)」のイメージがついたが、最近は尹氏と一定の距離を置くことで払しょくに成功した。

「国民の力」はこれまで少数与党であるがゆえに予算案や法案の成立に苦慮してきた。今回の総選挙で過半数を確保し、政権の求心力の維持につなげたい考えだ。

韓国では現在、政府が発表した大学医学部の入学定員増に反発し、研修医がこぞって職場を離脱する事態となり、各地の病院で手術が延期されたり、病棟が閉鎖されたりするなど、医療現場に混乱が生じている。尹大統領は「国民の健康と命を守るため、医師の拡大はもはや遅らせることのできない時代的課題」と強調し、医学部定員増の必要性を訴えている。これに対し、研修医らは医師の全体数が足りていないのではなく、原因は外科や産婦人科など、いわゆる必須診療科の医師のなり手が少ないことが結果的に医師不足を招いていると主張。必要なのは、必須医療分野の科の医師を増やすことだと反発し、約1万2000人の研修医が退職届を出して医療現場を離れた。しかし、医師としての責務を果たさない研修医の行動は国民の批判を招き、医療界の「エゴ」との見方が拡大。結果的に、医師拡大の必要性を訴える尹政権の支持率アップにもつながっている。

一方、最大野党の「共に民主党」は、公認候補選びでイ・ジェミョン(李在明)代表に近い人物ばかりが優遇されているとして党内の不協和音が指摘されている。党内からは「このままでは勝てない」との声も漏れる。

また、今回の総選挙では、両党の離党者たちが立ち上げた新党が情勢にどのような影響が与えるのかも注目ポイントとなっている。今年1月、「国民の力」のイ・ジュンソク(李俊錫)元代表が新党「改革新党」を立ち上げた。翌月には「共に民主党」のイ・ナギョン(李洛淵)元代表が「新しい未来」を結党。その後、両氏は「第三極」として合流する方針を発表したが、わずか11日で解消し、勢いを失った。こうした中、ムン・ジェイン(文在寅)前大統領の側近で、疑惑が絶えないことから、かつて「タマネギ男」とも揶揄されたチョ・グク(曺国)元法務部長官(法相)が先月、新党結成を表明した。党名は自身の名前「チョ・グク」と韓国語で同じ読み方の「祖国」を盛り込んだ「祖国革新党」に決め、総選挙での10議席確保することを目標に総選挙に挑む。聯合ニュースが今月2日から3日にかけて、18歳以上の男女1000人を対象に行った調査で、「祖国革新党」は、第3勢力と呼ばれる新党の中では「改革新党」や「新しい未来」を上回り、最も高い支持を得た。

二大政党の激突の構図に新党も絡んだ韓国総選挙の結果が注目される。
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