昨年のチュソク(秋夕/旧暦の8月15日)を前に、デパートで「ブランドぶどう」として有名なシャインマスカットを抜いて品切れ騒動を起こしたぶどうがあった。キョンサンプクト(慶尚北道)農業技術院が開発した「レッドクラレット」だ。シャインマスカットのように一粒一粒が大きくシャキシャキとした食感を持つが、糖度はシャインマスカットよりも高い。しかも美しい赤い色は食欲を刺激する。

慶尚北道のサンジュ(尚州)でインタビューに応じた慶尚北道農業技術院のクォン・ミンギョン農業研究士は「昨年は試験的に生産した9000房を全てデパートで販売した」と語り、「1房3万ウォン(3480円)を超える価格でも秋夕の贈り物用として売り切れるほど人気が高かった」と話した。

尚州はぶどうの生産が盛んで、広々とした高い山に囲まれた平野部のあちこちにぶどう農場が広がっている。あるぶどう農場のビニールハウスの中に入ると、ぶどうの木がきれいに1列に並んでいた。糖度を高めるためにぶどうは枝ごとに1房ずつつけられていた。6月にもかかわらず、すでに赤みがかっているぶどうは見ただけでも美味しそうなことがわかる。

このレッドクラレットは、ぶどうの品種を多様化するために開発された。2004年に韓国とチリの間でFTAが締結され、ぶどう農家の栽培面積と生産量が大幅に減少した。全てのぶどう農家が廃業するのではないかとの懸念とは異なり、日本からシャインマスカットが持ち込まれてから雰囲気が一変した。美味しくて高く売れるぶどうとしてシャインマスカットが有名になり、栽培面積が7年間で7倍も増加したのだ。

問題は、ひとつの品種に人気が集中し、特定の時期に過剰供給による価格の急落が発生する可能性があるという点だ。輸出を行うことで国内価格はある程度安定するが、近年は国際市場で日本や中国などとの競争も激しくなっている。日本産のシャインマスカットは相対的に価格が高いが非常に高品質で、反対に中国産は安い価格で大量に流通するという特徴がある。

クォン研究士は「競争力を確保するためには新しい品種を開拓しなければならないとの思いでシャインマスカットが導入された2014年から人工交配と特性調査・研究を始めた」と語り「2021年の品種保護出願を経て、2022年から試験生産を行っている」という。

実際にレッドクラレットはぶどうの実が大きく、21ブリックス(Brix)と糖度が高いうえ、ほのかなマスカットの香りがすることで消費者の間で人気が高い。ぶどうは1ブリックスの違いだけでも糖度が大きく変わる。シャインマスカットの平均糖度は18から20ブリックスで、一般的なぶどうよりもはるかに高いが、レッドクラレットはこれよりもさらに高い。

シャインマスカットと収穫時期が異なるため、過剰供給を防ぐことができるという長所もある。レッドクラレットは9月の初めには収穫が可能で、シャインマスカットより3週間も早い。レッドクラレットを栽培しているドントゥ面営農組合法人のイ・ウンヒ事務長は「シャインマスカットと一緒に栽培すればぶどうの出荷時期が分散して価格の暴落を防ぐことができ、ぶどう全体が赤く栽培管理が容易だという特徴がある」と語り、「秋夕の贈り物用としても競争力があるだろう」と話した。

国産の品種のためロイヤリティーを削減することができ、価格競争力もある。海外から品種を輸入する場合、苗木を買うたびにロイヤルティがかかる。国産の品種は苗木1株当りの価格が1万5000ウォン(約1738円)程度だが、海外の品種の場合は5万ウォン(約5795円)から6万ウォン(約6855円)に達する。イ事務長は「生産単価自体が高くなるので、その分ぶどうの価格も高く設定せざるを得ない」と語る。ただしレッドクラレットはプレミアム市場を狙っているため、まだテスト生産時期で生産量が多くないこともあって、価格は高く形成されている。

レッドクラレットは海外でも高い人気を集めることが期待されている。すでに昨年ベトナムや香港、シンガポールなどに向けて輸出されている。クォン研究員は「韓流ブームで韓国のぶどうに対する期待が高まっている状況」と語り、「ベトナム・香港・中国などでは赤は幸運の象徴と考えられており、赤いレッドクラレットの人気はさらに高まるものとみられる」と話した。
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