日本で新紙幣が発行されるのは2004年以来、20年ぶり。1万円札は渋沢、5千円札は女性の地位向上に尽くした津田梅子、千円札は破傷風の治療を確立した北里柴三郎の肖像がデザインされている。また、新紙幣には最新の偽造防止策が施され、防犯性や機能性がより高まった。日銀は来年3月末までに現在流通するお札の46%に当たる計74億8千万枚を用意する予定。
東京・中央区の日銀本店と全国32支店では3日、新紙幣が金融機関に引き渡された。本店では記念の式典が開かれた。植田和男総裁は「キャッシュレス化が進展しているが、現金は、誰でもいつでもどこでも安心して使える決済手段で、今後とも大きな役割を果たしていくと考えられる。新しい日本銀行券が国民の手元に広く行き渡り、わが国の経済を支える潤滑油となることを期待している」とあいさつした。本店で引き渡しの様子を視察した岸田文雄首相は「新紙幣が国民に親しまれ、日本の経済に元気を与えてくれることを期待したい」と述べた。
発行が始まった3日、金融機関の窓口では両替を希望する人たちが行列を作るなど、熱気に包まれた。このうち、1万円札の肖像となった渋沢が顧問を務めた「黒須銀行」を源流の一つとする埼玉りそな銀行は、約100店舗で新札の関連業務を開始。両替などを求め多くの人が訪れた。渋沢の出身地・埼玉県深谷市では発行を祝うイベントも開かれた。3日の午前0時に合わせてカウントダウンのセレモニーを行い、会場の渋沢栄一記念館を訪れた市民らが万歳をして祝った。渋沢をイメージしたシルクハットとモーニング姿で登場した小島進市長は、日銀から送られた「AA000006AA」と識別番号が6番目に若い1万円札を披露。会場からは拍手が沸き起こった。
渋沢は明治から大正にかけて活躍した実業家で、第一国立銀行(現在のみずほ銀行)など、生涯に約500の企業の設立に関わり、「日本資本主義の父」と評される。また、約600の社会公共事業にも尽力した。
新紙幣発行で日本が湧く一方、日本統治時代の抗日独立運動家の子孫らからなる韓国の団体「光復会」は発行開始を前にした1日、新1万円札に渋沢の肖像が使用されることに抗議し、撤回を求めた。渋沢は歴史的に韓国とも縁が深い。韓国で最初に開通したキョンイン(京仁)鉄道やキョンフ(京釜)鉄道は渋沢が社長を務めた日本の会社が運営した。また、渋沢が設立した第一国立銀行は1878年に釜山支店を開設。韓国初の紙幣発行は同支店が担い、1902年に発行された1ウォン券、5ウォン券、10ウォン券には渋沢の肖像画が使われた。こうした経緯から、韓国の一部では渋沢が日本統治時代に日本の銀行を朝鮮に進出させ、植民地政策を主導した人物と見る向きがある。2019年4月に、日本の新1万円札の肖像に渋沢が採用されると発表された際も、韓国メディアは「植民地支配の被害国への配慮が欠けているとの批判が予想される」(聯合ニュース)などと伝えた。
光復会は声明で、「渋沢栄一はわが民族からの経済的収奪の先兵役を果たした第一銀行の所有者で、鉄道を敷設して韓国の資本を収奪し、利権侵奪のために第一銀行の紙幣発行を主導しつつ、貨幣に自身の肖像画を描き入れ、我々に恥辱を抱かせた張本人」と指摘。「帝国主義時代の植民地収奪の象徴的な人物を国際的に通用する日本の公式の貨幣に使うことは、韓日関係を改善しようとしている韓国政府の努力にも冷や水を浴びせる行為だ」とした上で、「本当に韓国との関係改善と友好増進を尊重するのなら、問題の人物の貨幣への使用を直ちに中止するよう願う」と求めた。
「反日活動家」として日本でもその名が度々上がる韓国・ソンシン(誠信)女子大学のソ・ギョンドク教授も「今回の1万円札の登場人物は2019年の安倍晋三政権で決まったもので、これを是正しないでそのまま発行する岸田文雄政権にも問題がある。日帝植民支配を受けた韓国に対する配慮がないだけでなく、歴史を修正しようとする典型的な小細工戦略だ」と批判した。
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