<W解説>パリ五輪・韓国のバド女子王者が協会批判=競技で金メダル数1個の結果には理由がある?
<W解説>パリ五輪・韓国のバド女子王者が協会批判=競技で金メダル数1個の結果には理由がある?
パリ五輪のバドミントン女子シングルスで金メダルを獲得した韓国のアン・セヨン選手が、試合後のインタビューで大韓バドミントン協会の選手管理体制を痛烈に批判し、波紋を呼んでいる。アン選手は五輪のバドミントン女子シングルスで韓国に28年ぶりに金メダルをもたらした。韓国内が歓喜に沸いたのもつかの間、「私が目標を定めて夢をかなえるまで、原動力は怒りだった。声をあげたかった。私の夢はある意味で『声』だった」と打ち明けた。一体、何があったのか。

アン・セヨン の最新ニュースまとめ

アン選手は南西部のクァンジュ(光州)市出身の22歳。10代から活躍し、2017年、当時中学3年生ながら韓国代表となり注目された。昨年の世界選手権では、女子シングルスで、韓国人初の優勝を達成した。BWF(世界バドミントン連盟)世界ランキングはシングルス1位で、パリ五輪前から注目された選手だった。

アン選手は昨秋に中国・杭州で開催されたアジア大会に出場。シングルス決勝戦では膝の痛みを訴えるも試合を続け、金メダルを獲得した。帰国後に精密検査を受けたところ、右膝近くの腱が一部切れていることが分かった。試合後には「膝から『プツッ』という音がし、何かが外れたような感じがして、つらかった」と語った。

当時、パリ五輪まで完治の見込みがないとの診断が下されたが、パリ五輪に無事出場を果たした。3日のシングルス準々決勝では世界ランキング6位の山口茜選手と対戦。2-1で勝利した。準決勝は相手の途中棄権で勝ち進み、5日の決勝戦では世界ランキング9位の中国のヘビンジャオ選手と対戦した。共に五輪初の決勝で、アン選手が2-0(21-13、21-16)で下し、金メダルを手にした。五輪この種目では、韓国にとって1996年のアトランタ大会以来、28年ぶりの金メダル獲得となり、アン選手の快挙に韓国内は喜びに包まれた。

しかし、試合後のインタビューにアン選手が語ったのは大韓バドミントン協会への訴えだった。アン選手は昨年のアジア大会でけがを負ってから、完治していない状態で五輪に出場した事実を初めて告白。膝を負傷した際には、協会から十分なサポートが受けられなかったとし、「トレーナーの先生が手伝ってくれてここまで来た。けがをしているときの(協会の対応には)とてもがっかりした。忘れることができない。代表を続けていくのは難しいのではないかと思う」と話した。さらにアン選手は「協会は自由という名の下に(選手たちを)放任している」とした上で、「韓国のバドミントンはもっと発展することができると思うが、今回金メダルが1個しか獲得できなかった理由について反省すべき時が来ているようだ」と指摘した。

金メダルを獲得し、思う存分喜びを表現するのではなく、協会の選手管理システムを痛烈に批判したことは大きな衝撃を広げることとなった。また、聯合ニュースによると、発言から6時間後に行われた聯合によるインタビューに、アン選手は韓国代表の練習方法や協会の意思決定などについても問題点を指摘したという。その後、現地・パリで開かれた記者会見にアン選手の姿はなかった。

試合が終わり、選手たちは帰国の準備を進めたが、7日午前、選手よりひと足早く、協会のキム・テッキュ会長が帰国した。キム会長はインチョン(仁川)国際空港で報道陣の取材に応じ、大会前から選手との確執があったかを問う質問に「協会と選手との確執はなかった」と否定し、「(アン選手が)なぜあのような発言をしたのか確認する」と述べた。また、協会側はアン選手の発言に対する見解をA4用紙10枚にまとめた報道資料を配布。アン選手が協会に自身のけがを放置されたという趣旨の発言には反論した。

金メダリストの発言に、政府も反応を見せており、文化体育観光部(部は省に相当)は今後、調査を進めることを発表し、「ほかのスポーツについても、選手のマネジメントに改善できる部分がないか調査する予定だ」とした。

射撃で2008年の北京五輪、12年のロンドン五輪、16年のリオデジャネイロ五輪で金メダルを獲得し、3連覇を成し遂げた韓国射撃界のレジェンドで、現在は与党「国民の力」所属の国会議員、チン・ジョンオ氏は、アン氏の発言について自身のSNSで言及。「渾身の奮闘で金メダルを勝ち取った後、つらい話を勇気を持って話してくれたアン・セヨン選手の話を重く受け止める。アン選手の勇気ある告白、絶対にうやむやにはしない」とした。

アン選手は7日に帰国。インチョン(仁川)空港で報道陣の取材に応じ、発言の意図について「私は争う意図ではなく競技だけに専念したい気持ちを訴えるため、理解してほしいという気持ちで申し上げた。詳しいことは(関係者と)相談した上で申し上げる」と述べた。

金メダリストの口から突如飛び出した協会への痛烈な批判と問題提起。「選手ファースト」の体制が取れていたのか、検証結果が待たれる。

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