<W解説>着任間もない駐日韓国大使が新潟県に=世界遺産の「佐渡島の金山」に関し、知事に求めたこと
<W解説>着任間もない駐日韓国大使が新潟県に=世界遺産の「佐渡島の金山」に関し、知事に求めたこと
韓国のパク・チョルヒ駐日大使が今月18日、新潟県を訪れ、7月に世界文化遺産登録された同県佐渡市の「佐渡島の金山」について、花角英世知事らと意見交換した。「佐渡島の金山」をめぐり、韓国は、戦時中に朝鮮人の強制労働があったと主張し、世界遺産登録に一時反発した経緯がある。韓国政府は、「佐渡島の金山」の世界遺産登録を最終的に容認したが、野党は登録に際して歴史的事実が十分に反映されていないことを問題視。金山で強制労働があったことを認めるよう日本政府に訴えている。

「佐渡島の金山」は、「相川鶴子(つるし)金銀山」と「西三川砂金山」の2つの鉱山遺跡で構成。17世紀には世界最大級の金の生産地となり、1989年まで操業が続けられてきた。日本政府や新潟県は「江戸時代にヨーロッパとは異なる伝統的手工業で大規模な金生産システムを発展させた、世界的にもまれな鉱山だ」としている。

一方、佐渡金山には戦時中、労働力不足を補うため、朝鮮半島出身労働者が動員された。そのため、韓国側は当初、「佐渡島の金山」が世界遺産登録を目指すことに反対した。韓国は登録の可否を決める、ユネスコ(国連教育科学文化機関)世界遺産委員会の委員国だ。世界遺産登録は委員国の全会一致が原則であるため、日本は「佐渡島の金山」が世界遺産登録を目指すに当たり、韓国の同意を得ることが求められていた。

韓国は、日本が登録を目指すのであれば、朝鮮半島出身労働者が強制労働に従事した歴史を反映すべきとの主張を続けてきた。ただ、強制労働か否かの見解は日韓で食い違っており、日本政府は2021年4月、先の大戦中に行われた朝鮮半島から日本本土への労働者動員について「強制労働には該当しない」との答弁書を閣議決定している。

ユネスコの諮問機関であるイコモスは、韓国の主張を念頭に、これまで日本が遺産の価値として強調していた江戸期に限らず、全期間の金山の歴史を説明する展示を求めた。日本側はこうした勧告内容に対応。韓国側と水面下で協議を重ね、佐渡市内の展示施設で朝鮮半島出身者を含む鉱山の労働者に関する新たな展示を始めた。

7月、世界遺産委員会の会議が開かれ、審議の結果、韓国を含む委員国の全会一致で「佐渡島の金山」の世界文化遺産登録が決まった。

韓国政府としては最終的に登録を容認した形だが、野党は、歴史的事実の反映が不十分だと指摘した。先月16日には、最大野党「共に民主党」の国会議員ら5人が佐渡を視察。佐渡鉱山で働いた朝鮮半島出身者の過酷な労働状況などを記した展示などを見学した一行は、展示で動員の「強制制」に触れていないと指摘、明示するよう求めた。

韓国野党から日本側の対応への批判が続いている中、パク駐日大使は18日、新潟県を訪れ、「佐渡島の金山」について、花角英世知事や同県佐渡市の渡辺竜五市長と意見交換した。

パク大使は、ユン・ドンミン前大使の後任として8月に着任したばかり。日韓関係を長く見続けてきた研究者で、日本の政界にも精通した人物だ。韓国政府は6月にパク氏の起用を内定したが、当時、内定を伝えた韓国紙の朝鮮日報は、「韓日間の懸案解決も新駐日大使に期待されている」と報じた。

パク大使は着任のため、先月9日に来日した際、空港で記者団の取材に応じ、「両国の信頼関係と協力に役立つならば、どこにでも駆け付けたい」と話した。

その言葉通り、今月18日、新潟県を訪れ、「佐渡島の金山」について花角知事らと意見交換した。共同通信が伝えたところによると、県庁を訪れたパク大使は花角知事に対し、日韓両政府が今秋行うことで合意している金山で犠牲となった全労働者の追悼式について、早期に開き、日本政府幹部が出席することなどを求めたという。また、産経新聞によると、パク大使は会談終了後、「(佐渡金山の歴史の)展示を含め、全てが履行されるよう日本も韓国も努力すべきだ」と語った。

一方、韓国外交部(外務省に相当)のチョ・テヨル長官(外相)は、11日の韓国国会外交統一委員会で、追悼式の9月中の開催は困難との認識を示し、「自民党総裁選もあり、政治的なことも考慮されているのではないかと思う」と述べた。また、展示施設での展示内容について、「共に民主党」の議員から「強制性が語られるべきだ」と指摘されたのに対し、「内容をどれほどアップグレードするかは考えつつ交渉する」とした。

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