韓国が突如、政治的混乱に陥ったのは、尹氏が今月3日深夜に非常戒厳令を宣布したことがきっかけだ。これを受け、武装した戒厳軍の兵士がガラスを割って国会議事堂に突入。国会上空には軍のヘリコプターも飛んだ。軍事政権時代を連想させる事態に、発令後、国会前には多くの市民が集まり、戒厳に反対するシュプレヒコールを上げたほか、軍の車両を取り囲むなど騒然とした。
だが、戒厳令は国会議員の過半数が解除を求めた場合、大統領はこれに応じなければならず、発令直後、国会で本会議が開かれ、出席した190人の議員全員が解除に賛成。尹氏はわずか6時間で非常戒厳を解いた。
「共に民主党」など野党は、尹氏が「憲法秩序の中断を図り、永続的な権力の奪取を企てる内乱未遂を犯した」などとして憲法違反を指摘し、尹氏の弾劾訴追案を国会に提出した。14日に採決が行われ、賛成204票、反対85票で同案は可決した。これにより、尹氏の大統領としての権限は停止した。大統領職はハン・ドクス首相が代行することになった。今後、憲法裁判所が尹氏を罷免すべきかを判断し、罷免になると、60日以内に大統領選が行われる。
可決を受け、尹氏は直後に談話を発表。「しばらくは立ち止まるが、過去2年半、国民と共に歩んできた未来への旅は立ち止まってはいけない」とし、「私は決してあきらめない」と職務復帰への意欲をのぞかせた。
大統領の職務を代行することになったハン首相は「厳しい時期にもっぱら国政を安定的に運営することに、すべての力と努力を尽くす」と述べた。
外交への影響も懸念される中、チョ・テヨル外交部長官(外相)は15日、「国際社会からの信頼と支持を早期に受けられるよう努める」とし、とりわけ、日米韓3か国の協力が維持されるよう努力する考えを示した。
弾劾案が可決したことを受け、日本国内で関心が高まっているのは、尹政権との間で改善が図られた日韓関係への影響だ。尹政権がこれまで取ってきた対日外交について、韓国の野党は「屈辱外交」と批判し続けてきた。今後、尹氏が罷免されれば大統領選が行われる。野党勢力による新政権が誕生した場合、日韓関係が再び冷え込むことが予想される。読売新聞によると、同社が13~15日に実施した全国世論調査で、今後の日韓関係に不安を「感じる」との回答は66%に上り、「感じない」の31%を上回ったという。
来年は日韓国交正常化60周年を迎えるが、石破首相はこれに合わせ、尹氏を国賓として招く案を水面下で検討していたとされる。読売新聞は「韓国大統領として約20年ぶりとなる国賓訪日を通じて関係強化を内外に印象付ける考えだったが、実現は困難な情勢となった」と伝えた。
また、産経新聞は安保連携に関連し、「韓国外交は再び殻に閉じこもるだろう。中朝の脅威が急速に増す中、それがもたらす安保危機を日本政府は自覚しているだろうか」と懸念を示した。
一方、石破氏は14日、記者団に「韓国は国際社会の様々な課題にパートナーとして協力すべき重要な隣国であり、日韓関係の重要性は何ら変わるものではないと考えている」と語った。また、林芳正官房長官も16日の記者会見で「日韓関係の重要性は変わらない。韓国側と引き続き緊密に意思疎通していく」と述べた。
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