Trust Connectorのユン・ソクビン教授(写真:wowKorea)
Trust Connectorのユン・ソクビン教授(写真:wowKorea)
最近、大韓民国の多くの公共機関がDeepSeek(ディープシーク)のサービスに対する接続遮断措置を下したのは、韓国の安保と情報流出防止のための予防的措置だと理解されている。DeepSeekがAI学習の過程で利用者の機器情報やIP、キーボード入力パターンなどを収集し、中国内のサーバーに保存する可能性があるという点が懸念の原因だ。これに伴い、韓国の国防部(部は日本の省に相当)、外交部、産業通商資源部など主要公共機関はDeepSeekの使用を禁止または制限する公文書を配布した。

このような措置は韓国の安保を強化するために必要な措置だと評価できるが、同時に技術革新と効率性を阻害する危険も内包している。特に学術研究と教育分野ではAIツールの活用が必須なので、一律的な遮断よりは保安性が検証されたサービスに対する制限的活用許容や自主的なAI力量の強化が代案になりうる。

公共機関はセキュリティーの憂慮を解消するための措置を強化するものの、技術発展と革新を促進できるバランスの取れた接近が必要だ。このため、セキュリティーが確認されたAIツールに限って制限的に活用を許可したり、公共機関自体のAIの力量を強化して外部サービスに対する依存度を下げる案も考慮する必要がある。

韓国と日本はすでにAI研究に対して不足ではあるが、基盤を整えている。しかし、DeepSeekのようなグローバルAI競争モデルが登場し、研究開発(R&D)の力量をより集中的に強化しなければならない。そのために政府と企業、学界が協力して次のような措置を取る必要がある。

第一に、日本と韓国の公共および民間のAI研究所を拡大しなければならない。日本と韓国の主要大学のAI研究所を拡張し、両国間の民間企業と共同研究プロジェクトを活性化しなければならない。超巨大AIモデル開発支援、各国のLLM開発のための超高性能コンピューティングインフラ(HPC)を拡充し、学習データセットを多様化してAIモデルの性能を高めるべきである。そしてオープンソースAI開発の拡大をしなければならない。海外のAI生態系と競争するためには、オープンソースAIモデルを積極的に活用し、日本と韓国企業と研究機関が共同で開発するAIモデルを開放し、革新を促進しなければならない。

第二に、AI半導体やインフラ投資の拡大だ。DeepSeekの成功には強力なハードウェアインフラが後押しされた。日本や韓国も同様に、AI半導体やクラウドインフラへの投資を拡大すべきだ。サムスン電子とSKハイニックスが主導するAI半導体開発を積極的に支援し、日本と韓国のファブレス(fabless)半導体企業を育成し、AI半導体生態系を強化するべきだ。グローバルレベルのAI研究およびモデル訓練のために、大規模なAI専用スーパーコンピューターインフラを構築し、スタートアップおよび研究機関が活用できるようにクラウド基盤のAI活用支援プログラムを用意しなければならない。

第三に、AI生態系の造成とグローバル協力を追求しなければならない。日本と韓国はAI生態系を造成し、グローバル協力を通じてAI競争力を持続的に高める必要がある。AIのスタートアップに対する積極的な投資および育成プログラムを強化し、東京とソウルを含む主要都市にグローバルAIハブを造成するべきだ。米国や欧州などAI先進国との協力を通じて技術共有および共同研究を拡大し、グローバルAI標準を先導する役割を果たさなければならない。

DeepSeekの登場でAI覇権競争はさらに激しくなっている。日本と韓国はAI研究開発、半導体およびインフラ投資、データ主権強化、グローバル協力などを通じてAI産業の競争力を高めるべきだ。また、DeepSeekのような外部AIサービスに対する対応は、セキュリティーと革新の間のバランスを考慮して慎重に行わなければならない。これを通じて国家安保を守りながらも、技術発展の流れに遅れを取らない戦略的アプローチが必要だ。AIは単純な技術競争ではなく、国家の未来競争力を決定する核心要素であるため、政府と企業、学界が協力して長期的なAI戦略を推進せねばならず、これを通じて韓国と日本がグローバルAI市場で先導的な位置に立ち、持続可能なAI革新をリードしていくことができるだろう。
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