<W解説>韓国・尹大統領の弾劾の是非、3月中旬にも宣告か?与野党では既に尹氏罷免を想定した動き
<W解説>韓国・尹大統領の弾劾の是非、3月中旬にも宣告か?与野党では既に尹氏罷免を想定した動き
「非常戒厳」を宣言した韓国のユン・ソギョル(尹錫悦)大統領の罷免(ひめん)の可否を判断する弾劾審判は、25日に最終弁論が行われることになり、韓国メディアは、弾劾の是非についての宣告について、3月初めから中旬ごろに下されるとの見方を伝えている。尹政権に否定的な論調の韓国紙・ハンギョレはこのほど、「『尹錫悦前大統領』という呼称を使う日が迫っているわけ」と題した、論説委員によるコラムを掲載した。また、通信社・聯合ニュースが伝えたところによると、既に政界では、尹大統領の罷免を想定し、次期大統領選に向けた与野党の激しい駆け引きが繰り広げられているという。

尹氏は昨年12月、「非常戒厳」を宣言した。非常戒厳は韓国憲法が定める戒厳令の一種。戦時や事変などの非常事態で、軍事上、必要となる場合や公共の秩序を維持するために大統領が発令するものだ。行政や司法の機能は軍が掌握し、言論・出版・結社の自由を制限することも認められる。戒厳令の発出は1987年の民主化以降、初めてのことだった。

宣言を受け、武装した戒厳軍の兵士がガラスを割って国会議事堂に突入。軍事政権時代を連想させる事態に、国会前には多くの市民が集まり、戒厳に反対するシュプレヒコールを上げたほか、軍の車両を取り囲むなど騒然とした。

だが、戒厳令は国会議員の過半数が解除を求めた場合、大統領はこれに応じなければならず、発令直後、国会で本会議が開かれ、出席議員の全員が解除に賛成。尹氏はわずか6時間で非常戒厳を解いた。

尹氏が突如宣言した「非常戒厳」は早期に解かれたものの、韓国社会に混乱をきたし、現在も不安定な政治状況が続いている。「共に民主党」など野党は、尹氏が「憲法秩序の中断を図り、永続的な権力の奪取を企てる内乱未遂を犯した」などとして憲法違反を指摘し、尹氏の弾劾訴追案を国会に提出した。昨年12月、採決が行われ、賛成204票、反対85票で同案は可決した。これを受け、尹氏は職務停止となり、現在、チェ・サンモク経済副首相兼企画財政部長官が大統領の権限を代行している。

同案の可決を受け、憲法裁が6か月以内に尹氏を罷免するか、復職させるかを決めることになった。罷免となった場合は、60日以内に大統領選挙が行われる。

憲法裁では先月から弁論が行われている。これまでの弾劾審判で、国会訴追団側は、「非常戒厳」の宣言が、憲法77条が規定する「戦時・事変またはこれに準ずる国家非常事態」との要件を満たさず出されたことや、戒厳時に国会へ軍を動員し政治家らを逮捕しようとしたことなどが憲法違反だと主張した。一方、尹氏は審判に自ら出席し、「非常戒厳」の宣言は統治行為だったとして正当性を主張。政治家らへの逮捕を支持したことも否定している。

今月20日には10回目の弁論があり、ハン・ドクス首相ら3人の証人尋問が行われた。ハン氏は「非常戒厳は形式上、適合していないと思っている。憲法上、国務会議で(宣布するかを)決めないといけないのに、非常戒厳前にまともな国務会議はなかったと思う」と証言した。一方、非常戒厳を出す直前の閣議が成立していたかについての認定の有無は「捜査と司法の手続きを通じて判断されなければならない」と述べた。

この日の証人尋問の後、憲法裁は25日午後2時から最終弁論を行う方針を示した。その後、憲法裁の裁判官らによる評議が行われることになっている。聯合ニュースは「パク・クネ(朴槿恵)大統領ら、過去の例では大統領弾劾審判は最終弁論後、判定まで約20日がメドになっているため、3月10日過ぎには最終結果が出る可能性が高い」と伝えた。

尹氏の弾劾審判に関連し、ハンギョレは論説委員によるコラムを掲載。ソン・ウォンジェ論説委員は「次の原稿を書いているであろう3月の今頃は、尹錫悦大統領には別の呼称が使われている可能性が高い」とし、「そのころには、彼は呼称に1字が加えられて『尹前大統領』と呼ばれているだろう」と予測した。

政界では、尹氏が罷免されることを想定し、与野党は早くも大統領選をにらんだ駆け引きを繰り広げている。聯合によると、与党執行部は野党の有力な次期大統領選候補の、最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)代表に対する攻勢を強めているという。李氏が複数の刑事裁判を受けていることなどを材料に、「反李在明」ムードを高めているとされる。一方、「共に民主党」は政権交代に向けた世論戦を展開しているといい、聯合によると、中道・保守層への攻略、とりわけ、大統領選などで勝敗を分けてきた中道層の取り込みに力を入れているという。
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