国内候補地は、この日ソウル市内で開かれたオリンピック委員会の総会での投票により決定した。国内候補地としてはソウル市も名乗りを上げていたが、敗れた。同市は昨年12月、オ・セフン(呉世勲)市長が、自身のSNSを通じ、同市の2036年夏季五輪の開催実現のため、その活動に本格的に乗り出すと明らかにした。ソウルは1988年に夏季五輪を開催。2度目を目指し、呉氏は当時SNSに「1988年のソウルオリンピックが、韓国の底力と可能性を見せた歴史的瞬間だったとしたら、2036年のソウルオリンピックは、ソフトパワーと未来のビジョンを提示する、もう一つの歴史的一里塚になる」とアピールした。同市は招致に向けた調査を実施。開催した場合にかかる費用と得られる利益を算出したところ、コストパフォーマンスは1.03となった。1を上回ると、経済的妥当性が確保されると判断される。呉氏は昨夏に開催されたパリ五輪も視察し、その後、自身のSNSで、パリを流れるセーヌ川と、ソウルを流れるハンガン(漢江)を比較し、「セーヌ川よりもはるかにきれいで秀麗な漢江は、五輪が開催されれば世界から注目を集めるだろう」とアピールした。
一方、全羅北道は「国家均衡発展」を主張し、「地方都市連帯」を前面に掲げた開催計画を構築。各競技の会場を隣接都市に分散して開催する計画を打ち出した。これは国際オリンピック委員会(IOC)が目指す、隣接都市の連帯を通じた費用削減の要求に合致し、首都圏に集中したインフラ・経済力の分散により、均衡発展に新しいモデルを提示できるとPRした。
先月28日にソウル市内で開かれた大韓体育会(韓国オリンピック委員会)の総会で国内候補地を選ぶ投票が行われた。全羅北道とソウル市は総会で、プレゼンテーションを通じて支持を訴えた。全羅北道はキム・グァンヨン知事、ソウル市は呉市長が自らプレゼンテーターを務めた。投票の結果、全羅北道49票、ソウル市11票で、全羅北道がソウル市を大差で破って国内候補地に選ばれた。これを受けてソウル市はコメントを発表。全羅北道に対し、「心からお祝い申し上げる」とした上で、「全羅北道が韓国の歴史上2回目の夏季オリンピックを誘致することになれば、これは韓国の国格を一層高める機会となる。オリンピックが首都圏ではなく、地方で開催されることは、国土の均衡発展にとって重要な契機となるだろう」と期待を示した。
また、韓国紙のハンギョレは、「全羅北道がソウル市を退け、2036年夏季五輪誘致の国内候補都市に選定されたことで、誘致の潜在的なライバル国にも関心が集まっている」と伝えた。2036年五輪には、韓国のほか、インドやインドネシア、トルコなどが招致に関心を示している。中でもインドは、2023年10月にモディ首相がインド・ムンバイで開かれたIOC総会で直接、IOC委員を前に36年五輪の招致を目指す考えを示した。そして同年11月、インドオリンピック委員会(IOA)は、36年五輪の開催地として立候補することを正式に表明した。開催都市は、モディ首相の出身地である西部グジャラート州最大の都市、アーメダバードが有力視されている。開催されれば、インドでは夏冬を通じて初めての五輪となる。新興・途上国「グローバルサウス」の盟主を自任するインドとしては、五輪開催により、国力とさらなる存在感の向上につなげたい思惑がある。36年五輪招致を目指す韓国にとって最大のライバルとなりそうだ。韓国紙のハンギョレは「『オイルマネー』を前面に出した中東諸国の今後の動きも関心を引く」と指摘した。中東では、カタールのドーハ、サウジアラビアなどが五輪開催候補地として名乗りを上げる可能性がある。同紙は「『大会後に残るのは大規模な赤字』という厳しい視線が向けられているため、IOC及びスポーツの国際機関は中東諸国での開催を比較的好む」と指摘した。
2036年夏季五輪の開催地は2027年までに決定する。全羅北道は世界の強力なライバル都市を抑えて招致を成功させることができるか。
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