イ・ミンギ=4日、ソウル(聯合ニュース)
イ・ミンギ=4日、ソウル(聯合ニュース)
ことしは韓国俳優イ・ミンギにとって、さぞ特別な1年だろう。日本の女優、池脇千鶴と共演した映画『おいしいマン』が2月に封切られ、最新作『海雲台』はこの夏最高のヒット作となっている。さらに、演技の頂点を見せたと評価された『10億』が公開間近。『おいしいマン』で音楽に開眼し、アルバムのリリースも控えている。
 
しかし、何気なく返された彼の言葉は、「よく分からない」の一言だった。
出演作の封切りが集中したのは単なる偶然だという。『海雲台』は自分のしたこと以上に応援されていると感じており、『10億』がどう見てもらえるかが重要だと話す。「どれだけのことをやったか自分では分かっているけれど、それがどんな風に観客に届くか。それによって、次はどうするべきなのか、方向が定まると思います」
 
テレビのバラエティ番組などでは、ぼうっとしたキャラクターの姿を見せているイ・ミンギだが、実際に会った彼のイメージは、それとはほど遠いものだった。答えにつまることもなく、落ち着いた言葉でよどみなく語る。
 
「バラエティ番組で同じような役割を務めたことで、そうしたイメージが強くなったんだと思います。『タルジャの春』(ドラマ)『浮気日和』(映画)に出演した後は、“年下の男”と呼ばれるようになりましたし。演じるキャラクターはどれも、自分が持っている部分が少しずつあるけれど、作品の中では見せるべき部分に没頭しています」
 
『海雲台』のヒョンシクと『10億』のチョルヒ、演じた2つの役は、どちらも極端な状況に直面するが正反対の選択をする完全に異なる人物に見える。しかし、イ・ミンギは「根本的に通じるものがある」と話す。
 
「どちらも純粋で、人間的だと思いました。ヒョンシクはヒーローではないし、チョルヒも本質的に悪党ではないでしょう。でも、『海雲台』を先に見た人は、『10億』でのチョルヒに違和感を感じるかも」
 
『海雲台』のユン・ジェギュン監督が俳優に望むことを明確に示したのに対し、『10億』のチョ・ミンホ監督は、俳優に人物解釈をすべて委ねた。チョ監督に、チョルヒは悪党かと尋ねると「人間に悪党などいるだろうか…」と言われたという。チョルヒの行動1つ1つに「なぜ」という質問がわき、自ら正当性を見出さなければならず、つらい作業となった。また、完成後、作品の公開時期がこれほど重なるのであれば、チョルヒを本当の悪党として演じていたらどうだったろうかと考えたりもしたという。
 
慶尚南道の出身で、俳優デビューに当たり、言葉で苦労したというのはすでに有名な話だ。釜山なまりが重要だった『海雲台』では、先輩俳優らに比べスムーズに方言になじんだが、クランクアップから半年が過ぎた今、以前より標準語がうまく話せなくなったとか。役にはまりすぎれば、抜け出すのも容易ではない。「『海雲台』の打撃は大きいです」
 
役作りのため、『10億』では10日間食事制限をし、『海雲台』では劇中に登場もしない海上救助訓練を受けた。スランプに陥ったミュージシャンを演じた『おいしいマン』では、出演が決まると同時にギター教室に入った。1日中ギターの練習をしながら、お金があるにもかかわらず食事はインスタントラーメンで済ませ、昼間から酒を飲み、言葉少なに生活していたという。
 
「体でぶつかり、体ごと変われば、演技をしなくても人物に近付いているので楽なんです。頭でできることじゃない。頭で考えることはいろいろありすぎて、何が正解なのか分からないですから」
 
自らを俳優が天職という人間ではないといいながらも、俳優になる前の自分がどんな人間だったかのか、もうよく思い出せないのだと語った。
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