来韓した犬童一心監督=9日、ソウル(聯合ニュース)
来韓した犬童一心監督=9日、ソウル(聯合ニュース)
日本映画『ジョゼと虎と魚たち』『メゾン・ド・ヒミコ』『グーグーだって猫である』などで韓国でもよく知られている犬童一心監督が、『ゼロの焦点』(2009年)を引っさげ韓国を訪れた。

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 この作品は、作家・松本清張の生誕100年を記念し同名原作を映画化したもの。見合い結婚して間もない禎子(広末涼子)が、出張に出かけたまま姿を消した夫(西島秀俊)の足跡をたどるうちに謎の連続殺人事件に遭遇し、夫の取引先の社長夫人・佐知子(中谷美紀)の助けで真実に迫っていくというミステリーだ。

 9日にソウルで開かれた試写会に合わせ訪韓した犬童監督は、インタビューの席で、日本ではあらすじをよくわかっている観客が映画を見に来たが、韓国はそうではないため、どのような反応があるかとても気になると語った。この作品を通じ、「日本の戦後時代がしでかした過ちを象徴的に示そうとした」という。

 物語の舞台は、1946~1947年と1957年に分かれる。この2つの時期は全く異なり、個人的には後者に関心があるのだという。犬童監督は「1957年ごろは日本の激変期だった。戦争の傷を乗り越え、新たな時代へと羽ばたく出発点とでも言おうか。激変する世の中で生き残る人とそうでない人がいて、そうした姿に関心がある」と説明した。当時は新時代に対する輝ける夢があり、そのために失敗や悪事を働く人がいたが、映画のキャラクターとして魅力的に映ったとした。その半面、今の日本は新しい時代に対する夢が存在せず、こうした違いを描き出したかった。

 主人公の禎子は、あくまで観察者の立場だ。彼女は終戦直後の時代の影響を受けない新世代のため、観客と一番近い人物だと評した。
 また、映画は原作と大きくは変わらないが、佐知子が日本初の女性市長選出に向け支援活動に励むという設定が新たに加えられた。これについては、新時代を目指し変わろうとする姿を見せたかったと述べた。女性は男性社会が作った環境と戦争の被害者で、女性が戦争で受けた傷が戦後十数年たっても影響を及ぼしているという現実を描きたいという気持ちもあった。

 犬童監督は1960年代生まれ。子どものころ、大人を見ると、おかしなくらいにエネルギーに溢れ、罪の意識があるものの直視はせず、目をつぶりひたすら前へ進むという印象があった。佐知子はそのころの日本人に対する強い印象が反映された人物だという。

 一方、犬童監督は広末涼子や上野樹里ら女優たちとの仕事が目立つが、これは意図的ではなかったと答えた。大学時代に初めて映画を撮ろうとした時、予算はかけられなくても独特な映画を作りたいと考えた。同じ予算なら、アクション映画よりは女子大生3人を撮るほうがずっと良い選択だったという。「今の世はまだ男性中心主義のため、女性の日常的な生き方を見つめるだけでも対立構図が生まれ、予算をかけなくても楽しめる話がたくさん出てくる」と語った。

 この映画は、京畿道の撮影支援制度を利用し、禎子が行方不明になった夫を探すシーンなど一部が京畿道内で撮影された。


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