リュ・スンボム
リュ・スンボム
リュ・スンワン監督の新作映画『不当取引』は、検察と警察、マスコミの醜悪な裏面を暴いた一種の社会告発映画だ。スリルあふれるストーリーを濃い密度で演出したリュ監督の演出力も際立っているが、出演者らの好演も映画の完成度を高めた。

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 その中心には、警察のチェ・チョルギ(ファン・ジョンミン)とともにストーリーを引っ張るチュ・ヤンがいる。チュ・ヤンは、めぐってきたチャンスは絶対に逃さない神経質で粗野な検事。日頃は警察を無視していたが、窮地に追い詰められると、ころっと態度を変え屈する。普段は事件を適当に処理するが、危機に陥ったときは相手を最後まで突き止め、結局は応酬する粘り強さもある。

 チュ・ヤンを演じた俳優のリュ・スンボムは「こんなに理解しづらいキャラクターは初めてだった。撮影が半分ほど終了したころからようやく理解でき、演技するのも難しかった」と振り返る。

 映画では、チェ・チョルギとチュ・ヤン、建設業者が各自の利益のために汚い取引をしながら破滅に向かう姿が描かれている。

 チュ・ヤンが登場する事件は断続的に起きるため、感情をつかむのも簡単ではなかった。「例えば、ストーリーが進むにつれ感情移入する段階が1~10段階だとすると、5段階ぐらいかなと思っていた場面が実際には7段階だったというような場合が多く、そういう点で難しい役でした」。

 難しい役のため、現場ではこれまで以上に熱心に撮影に臨んだ。リュ監督と相談しながら役作りをし、共演者にも助けてもらった。オフの日も現場に出向き、ほかの出演者の演技を見た。チュ・ヤンの感情を捉え続けるためだ。

 初めて演じた検事役が負担になったのは事実だが、役作りのための特別な準備はしなかった。「周囲に検事もいませんし(笑)、僕の演技は検事という職業を考証することではないと思いました。むしろ人物を把握することがはるかに重要だと判断し、そのために監督ともいろいろ話し合ったのです」。

 リュ監督とリュ・スンボムは実の兄弟だ。だが彼は、リュ監督のことを兄ではなく終始「監督」と言っていた。以前は、現場では必ず監督と呼んでいたという。監督リュ・スンワンの弟がリュ・スンボムだという事実はすでによく知られているため、最近は兄貴と呼ぶときもある。しかし、俳優として監督の話を聞きたいとき、緊張を緩めたくないとき、兄に対する呼び名は「監督」になる。

 リュ・スンボムはことし『容赦はしない』『房子伝』『不当取引』『フェスティバル』と、4本の映画に出演した。またドラマに出演する気はないのかと尋ねると、「徹夜する超ハードスケジュールなので性に合わない感じがします」ときっぱり。

 映画『ダイ・バッド~死ぬかもしくは悪(ワル)になるか』でデビュー後、10年が経った。10年間、内面には大きな変化があったが、その変化から生まれた何かを演技に反映させることができず、以前見せた演技を繰り返すこともあった。しかし、それは「俳優の成長には全く役に立たない」と、リュ・スンボムは考えている。そのせいか、これまでの10年間は他人をうまくだましてきたかもしれないが、このまま演技をグレードアップさせなければ実力がばれてしまうという思いもある。

 「本当に自分を満たさなければならないと切実に思っています。これまでは勉強とは縁が遠かったですが、これからは興味のない分野も勉強しなければならないかもしれません。関心の幅を広げなければ。熱心に努力すればうまくいくでしょう。少なくとも自分の可能性だけは信じたいですから」。

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