韓国女性が、年上の親しい男性を呼ぶときの呼称「オッパ」について、
前号で取り上げました。韓国人作家のチョ・ナムジュさんが、日本人作家の
川上未映子さんとの対談の中で、「男性の権威や力を(オッパという言葉は)
ロマンチックに包装している」と語っていました。

その際、川上さんが、「日本女性は、自分の夫のこと人に話すときに‘主人’と
言う人がいるけれど、それに似ているのかな」としながら、会話は続きました。

最後のまとめで進行役の翻訳者、斎藤真理子さんがお一人ずつ発言を促していたとき、
チョ・ナムジュさんが、とても慎重かつ真剣な面持ちで、

「あのう……、さっきの話なんですけど……、
日本人女性は夫のことを‘主人’と言うんですか?」

と、ちょっと信じられないけど、確認させてほしいというような雰囲気で話し出しました。

川上さんも「そうなのよ~!でもね、私の周りも夫のことを‘主人’って
言う人が多いの。なんだかステイタスを感じるみたい。」と大きく反応し、
会場も苦笑でざわつきます。このような一連のやり取りが終わると、
チョ・ナムジュさんは目を丸くしながら

「오빠 이야기를 할 때가 아닌 것 같은데요.」
(オッパ イヤギル ハテガ アニン ゴッ カトゥンデヨ/
オッパの話をしている場合じゃないんじゃないですか?
オッパどころの話じゃないのでは)

と。この対談は当然のことながら通訳者を介しており、
チョ・ナムジュさんの後ろにつく通訳者の方は、
チョさんに「주인(チュイン/主人)」と訳したことでしょう。

주인は、韓国語にも「一家の主(あるじ)」としての意味はありますが、
一般的にはお店のオーナーや店長などのことを言うときに使われることが多く、
女性が夫のことを「主人」と言う習慣はありません。

言葉というものは無意識に使っていても、暗黙のうちに意識が刷り込まれていく、
と、締めくくられました。

私はどう言っているかなぁ、と考えを巡らせました。
同世代には「夫」と言っている気がしますが、目上の人や
仕事関係の人に「主人」と言っているような……。私としては
「丁寧語」という感覚なのでしょう。でも、やはり、無意識のうちに
何かが刷り込まれているのかもしれません。

その他の話題もここには書ききれないくらい刺激的な内容ばかりで、
いろいろ考えさせられるきっかけになりました。
そのほかのお話も、 機会があれば、ご紹介いたしますね!



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