1ヶ月、延世大学の韓国語講師養成課程に短期留学をしました。当時日本で
ベストセラーになった『負け犬の遠吠え』についてクラスメイトの韓国人の皆に話し
たとき、「負け犬」をズバリ訳せなかったのです。
 今思うと幼稚な訳ですが、まず「負けた犬」と言おうと思い、「이기다(イギダ/
勝つ)、지다(チダ/負ける)」の「지다(負ける)」を使って、「진 개(チン ケ/
負けた犬)」と言いました。
 しかし、クラスメイトの皆は私が何を言っているのか分からない様子。よくよく
考えると、日本語の「負け犬」 という言葉自体が、単なる「負けた犬」という意味で
なく、勝負に勝つことができなかった人を指す言葉なので、ピンとこないのは
当たり前でしょう。彼女達にとっては、「負けた猫」「負けた牛」のような響きだった
のではないでしょうか。
 そこで私があれこれ説明していたら、あるクラスメイトが、「아~、 패배자 !
(ア~、ペベジャ/あ~、敗北者!)」と言うのです。えええー!そうなっちゃうの?
かといって、私が留学時代、よく韓国の人から言われ、からかわれた「노처녀
(ノチョニョ/オールドミス)」も言い当てていない。
 もうこれは、「説明」するしかないんですね。こんな感じになりますでしょうか。
「負け犬」は、直訳すると「負けた犬」という意味です。
「마케이누」는 「진 개」라는 뜻입니다.
日本語では勝負に勝てなかった人を比喩する言葉です。
일본어로는 승부에 이기지 못한 사람을 비유하는 말입니다.
ある女性作家が、30代で結婚していない女性を「負け犬」と定義し、
어떤 여성작가가 30대인데 결혼 안 한 여성을 「마케이누」라고 정의하여,
書いた本がベストセラーになりました。
쓴 책이 베스트 셀러가 되었습니다.
「負け犬」は、結婚していない女性を指すとはいえ、暗いイメージではなく、
「마케이누」는 결혼 안 한 여성을 말하지만 어두운 이미지가 아니고,
仕事もお金も趣味も友人も持った自由な女性、という明るいイメージも
あるのです。
일도 돈도 취미도 친구도 있는 자유로운 여성이라는 밝은 이미지도
있습니다.


  「ふ~っ」。ただの一言がこんなに意味を持つだなんて。ほんとうに、文化の
翻訳は一筋縄ではいきませんね。時代の流れを見ると韓国にもそろそろ「負け犬」
に似た言葉が出てくるのでは、と思っています。



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