製作発表の際に、ユナクがお気に入りの曲として挙げたロジャーのソロ曲「One Song Glory」では、舞台装置を巧みに使い、舞台狭しと動いていた。互いに恋に落ちるミミ(Sowelu)との出会いのシーンでは、マッチをつけろうそくに火を灯すロマンチックな情景を描いた。マッチを擦った匂いが客席まで届き、舞台のライブ感が伝わってくる。最近バラエティー番組でもよく見るIVANも、この日エンジェル役として初めてお目見えした。同性愛者であるエンジェルを妖艶に演じ、ソロ曲をしっかり歌い上げた。このときばかりはロジャー役であるユナクも舞台上で盛り上がり、「フー!」と歓声を上げるほど。エンジェルと恋に落ちるコリンズ役の加藤潤一は、包容力のある人間味あふれるコリンズを演じ、舞台上で存在感を見せた。その後のロジャーとミミのデュエット曲「Another Day」ではキスシーンもあり、ユナクの俳優としてのすごみも感じられる場面となった。心の葛藤を表現しながらも、「運命を信じたい 怖がらず歩こう」と歌い上げるシーンではすがすがしい表情を見せ、若者の未来へ向けたエネルギーが感じられた。
第2部では、幕開けと同時に名曲である「Seasons Of Love」が出演者全員で歌い上げられた。調和のとれたハーモニーと抜きんでたソロシンガーの歌声が絶妙に絡み合い、ミュージカルならではの歌の良さを感じられる1曲。手拍子が生まれ、会場が一体となってRENTの音楽を楽しんでいた。ユナクら出演者たちも客席や出演者同士で目線を合わせながら歌い、和やかなムード。第2幕に大きな見せ場のあるモーリーン役の上木彩矢が会場を盛り上げ、関係者たちにも思わず笑みがこぼれる。その後、ミュージシャンであるロジャーがギターを売ってしまったシーンでは、ロジャーがマークに「逃げるのか」と責め立てられ「もう行くよ 耐えられない」と立ち去るロジャー。
その背中には、音楽、恋愛、生きるということへの若者の苦悩の色がにじむ。そして「What You Own」ではふっ切れたような笑顔を見せ、マーク役の村井と声高らかに歌い上げた。動き回る舞台装置の上でも動きがぶれることなく、確かな練習量が感じられ、このミュージカルにかける意気込みが伝わってきた。終盤の「Your Eyes」ではミミへの深い愛が感じられ、自然と涙がこみ上げそうなシーン。