俳優キム・ジェウォン(提供:OSEN)
俳優キム・ジェウォン(提供:OSEN)
歴史は記録と子孫の認識によって評価が変わるもの。しかし「朝鮮時代の最悪な王は?」という質問に、必ずと言っていいほど登場する人物がいる。奸臣らに振り回される“軽い王”、息子まで死に追い詰めた“薄情な王”、外国の侵略にお手上げとなって降伏した“無能な王”、それが第16代王の仁祖(インジョ)だ。

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 このような“敗北者”をドラマで魅力的に描いたのは、俳優キム・ジェウォンだ。韓国で最近放送終了したMBCドラマ「華政」で、光海君(チャ・スンウォン)の弟、綾陽君として毒気を帯びた人生を歩み、仁祖反正によって王になった仁祖を演じた。卑劣で無能だが、大きな野望を抱いた王を演じながら、イメージチェンジを図った。

 結果は大成功。「私は先生で、あなたは生徒だ」という流行語を作った女優キム・ハヌルとの共演ドラマ「ロマンス」でさわやかな高校生を演じたキム・ジェウォンが、今作で演技力が絶賛された。だから気になる。“敗北者”、“独りぼっち”、“強がる弱虫”、“ダメなチンピラ”と言われる仁祖を、キム・ジェウォンはなぜそんなに力を入れて演じたのだろうか?

 「仁祖が悪役なら悪役でしょうが、実際僕は、善と悪の区別がありません。そのような両極端な表現は、単純ではないですか。仁祖が持つ様々な性格や業績を子孫が悪だと評価したわけですが、ほかの角度から見てもらえたらと思っています。うまくやりたいのに、環境がよくないので望んでいない結果が出たということです。」

 宣祖の孫で、元宗の息子である仁祖は、“腹違いの叔父”である光海君のけん制によって、父親も兄弟も家も失い、ばらばらになった環境で育った。すべてを奪われた状態で、毒気を帯びた青年、綾陽君時代を過ごし、光海君の在位15年(1623年)に反正に成功した。

 「勉強してみると、仁祖は極めて個人的な性格だったんです。周りに合わせることができず、現代的に言ったら“サイコパス”のように成長したんだと思います。最悪の環境で育って、悪だけが残ったんですよ。『どうにかして王になるぞ、復讐するんだ』という気持ちだったんです。間違った欲望と野望のせいで、誤った選択だと知りながらも奸臣と手を結んだのだと思います。彼のそばに奸臣ではなく正しいガイドがいたら、仁祖も違っていたでしょうね。」

 キム・ジェウォンの“仁祖学”講義を聞いてみると、“敗北した王”という認識が少し変わった。短いインタビューでも人の心を動かすキム・ジェウォンの話術がすごいのだろうか?いや、違う。彼は、自分が演じなければならない仁祖という人物を絶えず分析して研究しながら撮影の間は仁祖として生きてきたからこそ、愛情ある視線で評価するようになっていたのだ。

 「撮影の後半に監督にこう言ったんです。『二度と痛みを演じたくない』ってね。仁祖の痛みを演じようとしたら、実際に苦しくなったんです。痛いと思い続けたら、本当に痛くなることってあるじゃないですか。晩年に仁祖が持つ病状は何だったのか、彼の運命を五行で見ると身体的な弱点があったんです。そこが痛いと思ったら、本当に痛くなって大変でしたね。」

 それもそのはず。キム・ジェウォンは今作で怒らないことは1話もなかった。“すぐカッとなる男”というニックネームまでついたほどだ。おとなしい印象の彼が、毎回怒ってばかりいて、悪行ばかりはたらく仁祖を演じるのにそのエネルギーだけでもすごいものだ。だから、むしろキム・ジェウォンは、仁祖に対して哀れに思うようになったようだ。

 「怒る演技は本当に大変でした。どうやったらそんなに怒りながら暮らせるのだろうと思いました。肯定的なエネルギーをもって生きていきたいのに、周りの環境によってとんでもないストレスがたまっていたんだと思います。仁祖は本当に大変な人生を歩んだ方です。何かを決断し選択するのに、自分の領域が広くなるほど権限が増えていくじゃないですか。王になってやることが多かったです。本当に疲れる立場です。僕は王様にならせてくれてもやりません!」



<インタビューその2>に続く


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