スーパーにビールを買いに行ったとき、女房が好きでなかなか手に入らないといっていた○○製のトマトジュースが目に止まったので、喜び勇んで買い物籠に入れました。家に戻りちょっと誇らしげに、君の好きなやつ買ったよと差し出しました。「マー嬉しい!よくあったわね!覚えていてくれてありがとう!」という言葉が返ってくることを期待しましたが、「それ甘いから△△製に変えたからいらない」「あなたが飲んだら」
それ以上は言葉なし!何て素っ気ない反応。韓国で生まれ育った女房だから慣れてはいますが、日本の情緒で育ったこの身には相手の好みを考慮した行為だっただけに寂しい言葉でした。たとえ飲まなくなっても、買ってきた誠意に「せっかく買ってきたのにありがとう。他の製品に変えたの、ごめんね」とは言えなくとも、心優しい日本の女性だったら自分のことを思ってくれた相手の気持ちを慮り「ありがとう!私のために」といって丸くおさめたに違いありません。
このように私の家内だけでなく韓国人は比較的物事をハッキリ言います。家内にせっかくの誠意に報いる言葉ぐらい言えないのかと詰問すると必ず「そのときは気まずいかもしれないけど、ハッキリ言った方が、また同じものを買ってくる過ちを起こさない」とバッサリ返されました。私だったら、「そのときは感謝して、後から実は……」と配慮するのがベストだと思うのですが、「何でそんな回りくどいことをするの!」と言われるのがおちです。
こう話すと皆さんに、「あなたの女房は特別だ」と言われそうですが、韓国ドラマの好きな方は理解していただけると思います。男と対等に口喧嘩をし、一歩も引きません。ひどいのになると相手に水をぶっかけるシーンも出てきます。さすがに現実の世界では稀ですが、見ている韓国人が違和感を覚えないのですから……。
このようなことは、何も家庭やドラマに限ったことではありません。会社においても相手に気を遣うよりも自分が感じたことをストレートに表現しますし、それと比べると日本の人はあまり率直には自分の意見を言いません。
●<韓国人>の気質
日本と韓国でそれぞれの国の社員と一緒に働いたことがありますが、その働きぶりや気質の違いが鮮明でした。韓国のスタッフは不満があるとすぐ「辞めてやる」と周りにかまわず息巻きます。その男性スタッフを上司が夜、酒を一緒に飲んでなだめると、翌日「いつそんなことを言いましたか」というようにケロッとして会社に出て働きます。
しかし、日本の社員は不満があっても何も言わずじっと耐え、限界だと思ったときに突然辞表を出します。そうなったら韓国人にしたように説得しても覆りません。「私が辞表を出すまでなぜ気づかない」「日々何を管理していたんだ」と言われているようで、以後、日本の社員には、「髪を切ったね!」「その服なかなか似合うよ!」「誕生日おめでとう」「顔色悪いね!どうしたの?」など等(航空会社だったので女子社員が多いため)、日々細かく気を遣うようになりました。その点韓国の社員はうるさいほど自己表現するので、細かく気を遣うことはありませんが、何かあったときには全力でケアします。特に社員の家族が亡くなったら、会社総出で手伝います。
勤務態度も日本の社員はまじめで規則通りにこなしますが、韓国の社員はきめ細かさに欠けますし、平気で離席し個人的電話をすることもあります。しかしいざというときは驚くほど集中して仕事に取り掛かります。
また、韓国ではスタッフを家に招いたり、逆に招待されたりします。けれども日本で通算二十年以上日本のスタッフとともに働いてきましたが、一回も家に呼ばれませんでした。正直なところ呼んだり呼ばれたりする雰囲気ではなかったのが正解かもしれません。昔は日本でも社員同士家に行き来したようですが、最近の韓国も行きかう頻度がだいぶ減ったそうです。情よりも効率、合理化が優先されてきたためでしょうか。
妻の名誉のために次のことを付け加えておきます。でないと何を言われるかわかりませんので。韓国人の方が恐妻家は多いと思います。(詳しくは後述)
普段細かい神経を遣わない妻ですが、「いざというとき」、旦那が病気になると何日も寝ずに看病する情の深さを発揮します。このように日々の行いに気を配る日本人と、いざというときに全力投球する韓国人の気質の違いを感じることが多々あります。
●もっと韓国を知るためのことば
オヌン ジョン カヌン ジョン 来る情、行く情
相手が情で接してくれば、こちらも情で応えるという意味です。
韓国人は日本人より表現がストレートで情の表現がハッキリしています。嬉しかったらすぐ抱き合い親子(大人でも)でも手をつないで情を表し、悲しいことが起きたら所構わずその悲しさを目いっぱい吐き出します。悲しさを目いっぱいこらえている日本の人とは対照的です。
※文=権鎔大(ゴン・ヨンデ)韓日気質比較研究会代表の寄稿。ソウル大学史学科卒業、同新聞大学院修了。出典=『あなたは本当に「韓国」を知っている?』(著者/権鎔大 発行/駿河台出版社)
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